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上海ハイウェイス法律相談事例

社内不正調査と個人情報保護

2021年11月3日

上海ハイウェイス法律事務所の法律相談事例!連載 ~第36回~

法律物語

工会主席が規則制度に著しく違反した場合、解雇できるか?

上海 K 社調達部の部門長兼工会主席である詹氏は虚偽の病気休暇を取得したため、K 社から「重大な規則制度違反」を理由に解雇された。詹氏は労働仲裁を提起し、工会主席の解雇は上級の工会の同意を得ていないため、違法解雇に該当すると主張した。

『工会法』、『企業工会主席合法権益保護暫定弁法』等では、労働組合での職務の履行により企業からの不公平な扱いを避けるため、工会委員、特に工会主席と工会副主席の合法的な権益の保護について特別な規定を定めている。その一方で、『工会法』第 18 条では、在任期間内に個人に重大な過失がある場合は、特別な保護を受けないことが明らかにされている。「個人の重大な過失」について、『民事審判業務における<中華人民共和国工会法>の適用の若干問題に関する最高人民法院の解釈』第 2 条によると、「『労働法』第 25 条第(2)号、第(3)号又は第(4)号でいう重大な紀律違反の状況を指す。

従って、工会主席が重大な紀律違反を行った場合、企業は労働契約を解除することができる。

しかし、注意すべきことは、労働組合との間の手続きについて、工会へ通知をすればよいのか、それとも上級工会の同意を得る必要があるのか、事前に企業所在地の規定を確認する必要がある。その理由は、一部の省・市の地方性法規では、工会主席と労働契約を解除する場合は、上級工会の同意を得なければならないと定められているからである。例えば、『江蘇省による<中華人民共和国工会法>の実施弁法』第 25 条、『江西省企業工会工作条例』第 21 条、『北京市による<中華人民共和国工会法>の実施弁法』第 18 条等には、上記旨規定している。一方、上海市、広東省等では関連規定がない。文頭の事案については、企業所在地が上海であるため、上海市第一中級法院は、判決書において「K 社は提訴前に工会への通知手続を補正して通知義務を履行した。詹氏は当時 K 社の工会主席を務めていたが、企業が工会主席である労働者に対して紀律違反を理由に労働契約を解除してはならないことは、法令では定められていない。」と指摘した。

実務において、工会主席の解雇について上級工会の同意が必要と規定されている地域では、上級工会が同意又は不同意の意思表示をしなかったり、棄権の意思表示をすることがある。その場合、企業はどう対応すればよいのか?

全体的に言えば、企業は合理的なタイミングをつかんで上級工会に明確な意見を求めると同時に、関連証拠を固めるよう提案する。具体的には、以下の措置が考えられる

(1)意見を求めるための書面を提出するときに、速達郵便物の受取書を保留する。面と向かって手渡すときに、相手の受取記 録を取得する。

(2)上級の工会が責任のなすりつけ合いをし、又は棄権の意思表示をした場合、企業は、同意又は不同意に関する明確な返事がほしいことや返事の期限、また同意しない場合は、その明確な理由の提供が望ましいことを書面にて上級の工会にお願いする。それでも、なお上級の工会から「同意」を得られななかったとしても、違法解雇と認定されるリスクは低くなると思われる。又、具体的な状況に応じて、上級工会の上級に事情を説明したうえで協力してもらうことにより問題解決を図ることも考えられる。この過程において、企業は解雇問題を慎重に対処し、法律を遵守する姿勢を示すこともできる。

実務検討

社内不正調査と個人情報保護

従業員の不正行為は会社の利益とイメージを損なうのみならず、風紀を乱し、長期に亘り、いずれは「千里の堤も蟻の穴から」というようになる。そのため、コンプライアンス管理を重要視し、不正調査メカニズムと規則を構築する企業は多数あり、さらに通報奨励金を設けている企業もある。この背景下で、有名企業の従業員が不正行為を行ったことにより法的責任を追及されたという事件が時々報道される。

企業は不正調査において従業員の個人情報に触れることは避けられず、どのような情報の取得が必要か、取得することは可能か、如何に取得するか、取得後に如何に使用するかなどを考慮する必要がある。『個人情報保護法』公布後は、上述の問題は非常にセンシティブな話題となっている。つまり、如何に不正調査を有効に展開するかとともに、個人情報保護の警戒ラインに触れていないかは間違いなくコンプライアンス担当者が関心を持つ問題である。

不正調査における個人情報の取扱いは、主に以下の 3 点に関わる。(1)どのような個人情報を収集できるか。(2)どのような方法で収集するか。(3)使用・管理においてどのような制限を受けるか。

まずは、不正調査における個人情報の収集は主に 2 つの状況を含む。

一つは『個人情報保護法』第 13 条によると、使用者は「法により制定された労働規則制度、法により締結された集団契約に基づき人力資源管理を実施するのに必要な」個人情報(例えば、氏名、身分証番号、通信情報、住所等)を取得・使用する場合は、個人の同意を得る必要がない。しかし、実務において、以下の 2 点に注意を払うよう勧める。1「人力資源管理を実施するのに必要な」個人情報の範囲について明確に定められていないので、労働規則制度又は関連文書において収集可能な従業員の個人情報の具体的な範囲、目的、用途、保管などを明記する一方、どんな場合に企業が企業のパソコン、業務用スマホに対して即時検査を実施できるかを明確に定め、従業員に説明を行った上で署名・確認を得たほうがよい。さもなければ、不正調査において人事部門より提供された関連情報の合法性が疑われる可能性がある。

もう一つは、調査において企業が関連従業員と面談する時に、当該従業員から明確な同意を取得した上で、上述の範囲外 の、調査に必要なその他の個人情報を取得することができる。但し、この場合に、恐喝、威嚇と認定される言動は避けるべきで ある。

次に、外部調査時は、合法的なルートから個人情報の取得を確保すべきである。『公民個人情報侵害刑事事件の処理における法律適用の若干問題に関する最高人民法院、最高人民検察院の解釈』第 5 条によると、追跡情報、通信内容、信用調査情報、財産情報を違法に獲得、販売又は提供し、50 条以上になる場合は、刑罰にあたる。『個人情報保護法』第 10 条には、「いかなる組織も個人も、他人の個人情報を不法に収集、使用、加工、伝送してはならず、他人の個人情報を不法に売買、提供又は公開してはならない。」と規定している。私立探偵による盗聴など不正式なルートにより関連情報を獲得する場合は、法的リスクが発生しやすく、さらに刑事責任を負う。従って、外部調査を行う場合は 3 つの前提条件を満たす必要がある。(1)相応の資格を備えた第三者に委託する。(2)合法的な方法を採る。(3)法律で許可された範囲内で情報を取得する。

又、不正調査に基づいた関連情報の使用、管理において、以下のポイントに注意を払うべきである。(1)個人情報へアクセス可能な人員の限定。相応の職責を負う担当者、又は企業の委託を受けた第三者の担当者しか関連情報を扱えない、かつ上述の人員が規定又は約定通りに関連情報を使用するように留意する。(2)期間の限定。『個人情報保護法』第 19 条によると、個人情報の保存期間は、取扱い目的の実現に必要な最短の期間としなければならない。従って、一般的に、一旦調査が終わり、案件処理が完了すれば、最短の期間内に関連個人情報を徹底的に削除し、又は匿名化処理しなければならない。

なお、腐敗撲滅事案を利用して社内教育又は外部宣伝を行う時に、リスクを回避するために、個人情報(特に機微情報)に隠蔽処理を行わなければならない。

立法動向

国家知的財産権局が 2021 年 10 月 9 日に
『特許法における特許の虚偽表示及び広告法における
特許違法関連条項の適用に関する返答』を公布

ハイテクノロジーは多くの商品のセールスポイントと看做され、商品包装又は広告において特許を宣伝の重点とする企業は少なくない。不当表示にあたる場合は、特許権侵害及び/又は虚偽宣伝と疑われる。この場合に、『特許法』による規制を受けるか、それとも『広告法』による規制を受けるかが問題となる。『特許法』と『広告法』で競合する場合に、市場監督管理部門と知的財産権管理部門のどちらが行政管理の主体であるか、行政処分措置を如何に適用するかが問題となる。国家知的財産権局は市場監督管理総局と検討した上で、2021 年 10 月 9 日に『特許法における特許の虚偽表示及び広告法における特許違法関連条項の適用に関する国家知的財産権局の返答』(以下『返答』という)を公布した。『返答』の主要な内容は以下の通りである。

1、特許無効又は期間終了後に商品又はその包装において特許標識を表示する行為

当該行為は『特許法実施細則』第 84 条における「特許の虚偽表示」に該当する一方、商業広告の特徴に合致する場合は、『広告法』第 12 条と第 59 条で定められた「広告法違反行為」と認定される。この場合に、『広告法』と『特許法』のいずれか一つを適用して処分を行うことができ、過料の金額は『行政処分法』第 29 条に従い執行される。

但し、「二重処罰禁止」(同一の非違行為に対し二度の処分を行わない)という行政処分の原則に基づいて、上述の行為に対 して『広告法』と『特許法』のいずれか一つしか適用しない。

2、他人の特許番号を表示して販売する行為

『返答』によると、上述の行為に対して『特許法実施細則』第 84 条に基づき認定を行い、『特許法』を適用して処分を行う。

広告において他人の特許番号を表示することも明らかに虚偽宣伝行為に該当する。『返答』では権利侵害の角度から規制を行った。

3、商品説明書などの書類において特許権が授けられていない特許を使用する行為

『返答』によると、商品説明書などの書類は商品包装における紹介説明文書とするだけでである場合は、『特許法実施細則』 第 84 条の規定を適用して認定する。商品説明書などの書類は広告とし、又は特許権が授けられていない特許出願を使用して広告とする場合は、『広告法』第 12 条の規定を適用して認定する。

4、特許標識表示に係る規範

『返答』によると、広告が特許商品又は特許方法に係る場合は、特許番号及び特許種類を明示しなければならない。販売行為における特許標識表示が規範に合致しない場合は、『特許標識表示弁法』を適用して認定する。


弁護士紹介

金燕娟 弁護士/パートナー

8年以上の日系企業での勤務経験を持ち、日系企業の文化、経営管理上の普遍的問題点などについて深い理解を持つ。業務執行においては、それぞれの会社の実情に合わせ、問題となる根本的な原因を見つけ、相応の解決策を導き出すことが得意で、顧客中心リーガルサービスの提供が出来る様、日々取り組んでいる。

その他にも、長年にわたるビジネス実務経験と弁護士業務経験を生かし複雑なビジネス交渉などにおいても特有の技能と優位性を示している。

学歴:華東政法大学出身、民商法学修士号取得。

使用言語:中国語、日本語

主な取扱分野:会社運営の日常業務。複数の業種の企業の法律顧問を長年に渡り、務め、人事、リスク管理などを含む総合的リーガルサービスを提供している。知的財産権分野。企業の法律顧問を長年務めるとともに、営業秘密、特許、商標などに関連する訴訟、非訴訟業務に従事し、特に営業秘密の管理体系及び個別案件の処理については幅広い知識と豊かな実務経験を持っている。
不正競争防止分野。主に「ブランドのタダ乗り」、虚偽宣伝を含む知的財産権に関連する不正競争案件、知的財産権侵害と不正競争との複合紛争案件を処理し、個別案件の実情に基づいた有効な解決策の提示を得意としている

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