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上海ハイウェイス法律相談事例

委任契約の任意解除及び損害賠償

2021年4月6日

-上海ハイウェイス法律相談事例  -,

上海ハイウェイス法律事務所の法律相談事例!連載 ~第29回~

法律物語

労働分野における信義誠実原則の適用

『労働契約法』第 3 条では、労働契約を締結する際、信義誠実の原則を遵守すべきことが規定されている。又、同法第 26 条によると、詐欺の方法で労働契約を締結した場合は、相応の部分は無効となる。上述の規定は信義誠実の原則を労働契約分野に適用する主な法的根拠である。

但し、従業員が入社時に虚偽情報を提供した行為に対して、使用者が、上述の規定に基づき労働契約の無効を主張する、或いは会社の関連規則制度に基づき、信義誠実原則の違反を理由に、解雇を実施した場合、司法機関が必ずにもそれを認めるとは限らない。例えば、2019 年広州中級裁判所が公表した女性従業員権益保護典型裁判例のうち、以下の事例があった。女性従業員が既婚の事実を隠して入社したため、使用者は当該従業員との労働契約を一方的に解除した。結果、裁判所より不当解雇と認定された。又、多くの使用者が関連規則制度で、虚偽の学歴証明、履歴書を提供する行為を解雇の対象と規定していても、個別事案での判決結果にはばらつきがあり、解雇の正当性を認められたケースもあれば、不当解雇と認定されたケースもある。

では、使用者は、如何にして把握すべきか?

『労働契約法』第 8 条によると、従業員が事実通りに使用者に説明しておくべきことは、労働契約に直接関係する基本的状況に限られる。婚姻状況、生育状況などの個人情報は労働契約に直接関係するわけではなく、事実通りに説明しておくべき「基本的状況」に該当しない。従業員の健康状態、知識程度、教育程度、職業技能、職務履歴、職業資格などは「基本的状況」と認定される可能性が高い。但し、個別事案において、司法機関は往々に職務、要求、労働契約履行へ影響を及ぼす要素を総合的に考慮した上で判断する。例えば、使用者は、会計士として採用した従業員が虚偽の公認会計士登録証書を提供したことを理由に、係る従業員を解雇した場合、司法機関に認められる可能性は高い。その場合に、資格証書は採用の可否を判断するにあたって決定的又は重要な要素である。

実務において、学歴詐称をした従業員を解雇できるか否かについては、はっきり判断できるケースもあれば、判断しにくいケースもある。例えば、運搬作業員の場合は、仮に学歴詐称をしたとしても、学歴が採用の可否を判断するにあたって決定的要素ではないため、解雇の正当性が認められる可能性は低い。逆に学歴を必要採用条件の一つとした職務の場合は、例えば、使用者が、数年にわたって素晴らしい業績を収める従業員の学歴詐称が発覚した後、単に学歴詐称が信義誠実原則に違反したことを理由に当該従業員を解雇する場合、解雇の正当性が認められるか否かは不確実性が高い。 (2014)通中民終字第 0758 号事件では、勤続年数が 10 年以上の従業員が学歴詐称により解雇されたが、裁判所は、「使用者は従業員の資格に対して注 意をもって慎重に審査する義務がある。学歴詐称が労働契約の効力に対する影響は合理的な期間に限定される必要があり、 労働関係が長く継続した後もなお学歴詐称を労働契約の無効又は解除の事由とするべきではない。」と指摘した。一方、(2016) 滬 01 民終 12926 号事件では、学歴詐称を理由に 12 年も働いていた従業員を解雇した使用者の行為に対して、裁判所は、「従業員は信義誠実の原則に違反したので、使用者による労働契約解除は不合理ではない」と判断した。実務において、従業員に他の規律違反行為が同時に存在する場合(特に信義誠実や道徳に係る場合)は、合わせて処分事由とすることで、相応のリスクを低減できると思われる。

従業員が在職中に虚偽の病気休暇や虚偽の実費精算など、信義誠実の原則に違反した行為について、社則制度では「信義誠実の原則に違反した従業員に対して解雇処分を行うことができる」ことが定められている場合は、会社による解雇が裁判所に認められる可能性は比較的高い。しかし、前述の 2019 年広州中級裁判所が公表した女性従業員権益保護典型裁判例において、裁判所が指摘したように、「労働契約の解除は従業員の基本的生存権のみならず、名誉ないし将来の就職にも係わるため、使用者は従業員を多少は容認するべきである」。要するに、詐称の程度を慎重に考慮する必要があり、、比較的軽微である場合は、まず軽い処分及び教育を行い、問題が再度起こった際に、解雇したほうが妥当だと思われる。

なお、従業員が使用者と社会保険料を納付しない、或いは低基準で納付することを約定したにも関わらず数年後に使用者が損害賠償金を主張した場合は、通常、裁判所は、従業員が信義誠実の原則に違反したと判断し、従業員の請求を認めない。

今年より新たに施行し始めた『民法典』第 7 条では、信義誠実の原則を基本原则としている。主流派の観点により、信義誠実の原則に違反した行為に対する懲罰が認められやすい傾向にある。

実務検討

委任契約の任意解除及び損害賠償

元『契約法』及び 2021 年 1 月 1 日より施行された『民法典』のいずれも、「委任者又は受任者は委任契約を随時解除することができる」ことを明確にしている、つまり委任契約の任意解除権を認めている。「委任契約の双方当事者による任意解除権を規定するのは、委任契約の双方当事者に信頼関係が存在するからである。一旦当該信頼関係が破綻した場合は、契約存続の必要がなくなる。従って、当事者による任意解除権の行使を認めるべきである(最高人民法院(2013)民申字第 2491 号民事裁定書参照)。

しかし、委任者が何らの代価も払わずに任意解除権を行使できることが認められるならば、人力、物力を投入した受任者が損失を被ることは避けられない。又、受任者は委任契約の履行により本来獲得できる利益の全部又は一部を獲得できなくなる可能性もある。従って、委任者の任意解除権に対して適当な「代価」を設ける必要がある。

これについては、元『契約法』と『民法典』の規定が異なる。元『契約法』第 410 条には、「契約解除によって相手に損害を与えた場合は、当該当事者の責めに帰すことができない事由を除き、損害賠償を行わなければならない。」と規定している。当該規定における「損害」とは、直接的損失のみを指すか、それとも履行利益も含むかは明確ではない。よって、司法実務において議論があり、個別事案での判断結果にもばらつきがある。

一方『民法典』では、有償委任であるか否かによって賠償責任の範囲を区分されている。『民法典』第 933 条には、「契約の解除により相手に損害をもたらした場合は、当該当事者の責めに帰すことができない事由を除き、無償委任契約を解除する当事者が不適切な時期の解除によるもたらされた直接的損失を賠償しなければならない。有償委任契約を解除する当事者は相手の直接的損失及び履行利益を賠償しなければならない。」と規定している。

以上のことから、任意解除権を行使した場合に、無償委任契約を解除する当事者は直接的損失のみを賠償すれば良いが、有償委任契約を解除する当事者は履行利益も賠償する必要がある。

履行利益とは、契約の約定通りに当事者が本来得られるべき利益を指す。但し、個別事案において、裁判所は、履行利益を、委任契約の正常履行後に当事者が獲得できる利益と完全に同一視するではなく、受任者による業務遂行の状況によって確定する。又、履行利益を算出し認定するにあたって、一般的には、予見規則、減損規則、損益相殺規則、過失相殺規則などを総合的に活用して確定する。

例えば、(2020)蘇民再 21 号事件において、江蘇省高級裁判所は、以下のように分析した。「第一審判決と第二審判決のいずれも、云〇会社が仲氏に対し 480 万人民元の損害賠償を行うよう認定したが、契約の中途解約と正常履行完了を分けて当事者の利益をそれぞれ算出・認定していなかったため、判決の認定は誤りである。仲氏が云〇会社の契約解除による具体的な損失を立証できないため、......協議書で約定された販売所得の配分方式、云〇会社の浄化工事請負における仲氏の貢献度、実際の販売所得額、云〇会社の違約状況、双方当事者の係争焦点などの要素を総合的に考慮し、〇会社が仲氏に対し 70 万人民元の損害賠償を行うよう判断する。」

他にも、少し興味深い問題がある。当事者が委任契約において解約不可を約定することにより法定の任意解除権を排除できるか。これについて、最高裁判所民一法廷が編集した『民事審判指導と参考』第 69 集では、以下の観点を示した。「実務において主に 2 つの観点がある。一つの観点は、任意解除権は法律の定めるところによる強行的規範であり、当事者の約定により解除することができないため、当事者の約定は無効となること。もう一つの観点は、任意解除権は強行規定に該当せず、当事者は約定によりそれを放棄することができる。......商事委任契約の締結において、双方の法定代表者又は代理人に信頼関係があるか否かは、委任者が受任者を選ぶときの主要な考慮要素ではなく、委任者が重視するのは往々にして受任者の営業能力、経営能力である。又、受任者は受託業務を遂行するために、通常、相当の人力、財力を投入して市場開拓、取引先とのやり取りなどを行う。相手の任意解除権の行使による不確定なリスクを防止するために、解約条件に対して特別な約定を行うことで任意解除権の適用を排除することは、契約履行リスクに対する双方当事者の特殊なアレンジであり、意思自治の原則を表し、かつ国家利益、社会の公共利益及び第三者の合法的な利益を損うものではない。......したがって、商事委任契約の特殊性に鑑み、双方当事者が契約解除権の行使に対して特別な約定を行った場合は、『契約法』第 410 条の任意解除権関連約定の適用を排除したと認定する。」

最後に、当事者と法律事務所が委任契約で任意解除権の排除に関する約定をしている場合の効力については、司法実務において肯定論があれば、否定論もある(肯定派も否定派も存在する)。否定論の主な理由は、「訴訟代理契約における、委任者による委任の取消を禁止し、又はその他の方法により委任者の任意解除権を排除する約定は、『中華人民共和国弁護士法』における「委任者は訴訟代理契約成立後に弁護士を代理人とすることを拒否できる」という規定に背くため、委任者に効力が生じず、無効とすべきである」((2020)京 03 民終 6467 号参照)。

立法動向

『知的財産権侵害民事案件の審理における懲罰的賠償の適用に関する最高人民法院の解釈』が2021 年 3 月 3 日より施行

近年、改正『商標法』、『著作権法』、『特許法』ではいずれも、懲罰的賠償関連条項を盛り込んで、法定賠償額の上限を引き上げたが、懲罰的賠償の適用条件及び考慮要素を明確にしていない。2021 年 3 月 2 日、最高人民法院は『知的財産権侵害民事案件の審理における懲罰的賠償の適用に関する最高人民法院の解釈』(法釈[2021]4 号文、以下『懲罰的賠償解釈』という)を公布し、翌日より施行している。『懲罰的賠償解釈』の目玉は以下の通りである。

1、懲罰的賠償の請求時期

原告は提訴時に懲罰的賠償を請求することができ、第一審の法廷弁論終了前に懲罰的賠償の請求を追加することができる。第二審において懲罰的賠償の請求を追加した後、裁判による調停が成立しない場合は、懲罰的賠償請求の追加について別途訴訟を提起するものとする。

2、懲罰的賠償の適用条件:故意による権利侵害+深刻な情状

「故意」を認定するときに、知的財産権の種類、権利の状態、関連製品の知名度、被告と原告又は利害関係人との関係などの要素を総合的に考慮しなければならない。『懲罰的賠償解釈』によると、以下のいずれかの状況に該当する場合は、「故意」になる。(1)被告が原告又は利害関係人の通知、警告を受けた後もなお権利侵害行為を行う場合。(2)被告又はその法定代表者、管理者が原告又は利害関係人の法定代表者、管理者、実質支配者である場合。(3)被告と原告又は利害関係人の間に労働、役務、業務提携、許諾、取次販売、代理、代表等の関係があり、かつ侵害された知的財産権に接触したことがある場合。(4)被告と原告又は利害関係人の間に業務やり取り或いは契約のために協議したことがあり、かつ侵害された知的財産権に接触したことがある場合。(5)被告が海賊版を作成し、登録商標を偽る場合。

「深刻な情状」を認定するときに、主に権利侵害の手段、回数、権利侵害行為の継続期間、地域範囲、規模、結果、権利侵害者の訴訟における行為などの要素を総合的に考慮しなければならない。『懲罰的賠償解釈』によると、以下のいずれかの状況に該当する場合は、「深刻な情状」に当たる。(1)行政処罰又は裁判で責任を負った後に、同一もしくは類似の侵害行為を再度実施する場合。(2)知的財産権侵害を業とする場合。(3)権利侵害証拠を偽造、毀損又は隠匿する場合。(4)保全裁定の履行を拒否する場合。(5)権利侵害による利益獲得、又は権利者が被った損害が巨額の場合。(6)権利侵害行為が国家の安全、公共の利益或いは人身の健康に危害を及ぼす可能性がある場合。

3、懲罰的賠償の算定基数及び倍数

懲罰的賠償の算定基数を確定する方法は基本的に『商標法』などの専門法律と一致する。つまり、原告の損失額、被告が権利侵害により得た利益、許諾使用料の倍数の何れかになる。又、原告が算定基数をある程度立証したが、被告が正当な理由なしに帳簿・書類の提供を拒否し、又は虚偽の帳簿・書類を提供した場合、裁判所は原告の主張を参考して算定基数を確定することができる。

但し、倍数について、『懲罰的賠償解釈』では、「同一の権利侵害行為により行政過料又は刑事罰金に処され、かつ執行後、被告が懲罰的賠償责任の減免を請求する場合は、裁判所はそれを認めないが、倍数を確定するときに総合的に考慮することができる。」と新たな規則を明確にした。


弁護士紹介

金燕娟 弁護士/パートナー

8年以上の日系企業での勤務経験を持ち、日系企業の文化、経営管理上の普遍的問題点などについて深い理解を持つ。業務執行においては、それぞれの会社の実情に合わせ、問題となる根本的な原因を見つけ、相応の解決策を導き出すことが得意で、顧客中心リーガルサービスの提供が出来る様、日々取り組んでいる。

その他にも、長年にわたるビジネス実務経験と弁護士業務経験を生かし複雑なビジネス交渉などにおいても特有の技能と優位性を示している。

学歴:華東政法大学出身、民商法学修士号取得。

使用言語:中国語、日本語

主な取扱分野:会社運営の日常業務。複数の業種の企業の法律顧問を長年に渡り、務め、人事、リスク管理などを含む総合的リーガルサービスを提供している。知的財産権分野。企業の法律顧問を長年務めるとともに、営業秘密、特許、商標などに関連する訴訟、非訴訟業務に従事し、特に営業秘密の管理体系及び個別案件の処理については幅広い知識と豊かな実務経験を持っている。
不正競争防止分野。主に「ブランドのタダ乗り」、虚偽宣伝を含む知的財産権に関連する不正競争案件、知的財産権侵害と不正競争との複合紛争案件を処理し、個別案件の実情に基づいた有効な解決策の提示を得意としている

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