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特集 上海ハイウェイス法律相談事例

【法律相談】投げやりな従業員、どう対処する?

上海ハイウェイス法律事務所の法律相談事例!連載 ~第72回~

法律物語

投げやりな従業員、どう対処する?

張さんは A 社で製品サポートエンジニアとして務めていた。2019 年 1 月 28 日、A 社は張さんに「職務不適格のため労働契約を 解除する予定である。」ことを通告した。1 月 30 日、張さんは人事部署に異議を訴えた。3 月 4 日、A 社は関連部署を組織し、張さ んの訴えを評議したが、具体的な業務上の問題が多数挙げられ、改めて職務不適格であると判断した。3 月 4 日と 3 月 7 日に、A 社は張さんに対して「業績改善の指導を実施する」ことを通知したが、張さんはこれを拒否した。4 月 10 日、A 社は張さんに対して 「依然として基準を満たさず、職務不適格である。また指導を拒否したため、会社は一方的に契約を解除することに決定した」と通 知した。本件は労働仲裁、一審(解除を違法と認定)、二審(解除を合法と認定)を経て、終了した。(詳細については(2020)遼 01 民終 2691 号を参照)

実務において同様のケースは珍しくない。「勤務態度が悪い」、「業績が悪い」、「能力が低い」などと評価される“破れかぶれ な”従業員に対して、人事部は薄氷を踏む思いで注意深く対応している。

問題の根本を考えれば、従業員の勤務態度が悪い(怠惰など)、業務能力不足、意地になって同僚の邪魔をする、家庭内トラ ブルの発生など、やる気をなくす原因となった事情は様々である。そのため、一律の方法で対処するのではなく、状況毎に分類 し、対応する必要がある。

例えば、業務能力には問題がないが、家庭の事情など客観的な問題によってやる気を失った従業員に対して、人事部は業務 部と協力し、心理カウンセリングを行うとともに、業務内容を適切に調整し、心理的影響がいち早く取り除けるよう手助けするべき である。

従業員の仕事に対する態度が消極的で怠惰であることを証明するのは難しい。重要なのは、定量化した業務指標や任務を設 定し、時間的にもそれ管理・監督する。具体的には、(1)業務の流れや要求を明確にする。その上で、関係者の具体的な職責を 設定する。(2)職責は汎用的なものではなく、できるだけ定量化した指標/任務及び相応の評価規則を設定する。(3)日報や週報 を取り入れ、従業員が定期的に報告する習慣を身につけるよう監督する。これにより従業員に問題があるという事実を確かめる こともできる。(4)定量化した指標/任務を経常的に統計、審査する。人数が多い場合、無作為抽出で審査しても良い。従業員の 問題を適宜発見して対処する。根本的には、従業員を危機のない「ぬるま湯」につかったままの状態にしないこと。さもなくば時間 の経過とともに、是正はより困難になる。

勤続年数が長い、意図的もしくは無意識に投げやりな態度をとり、その結果、会社から経済補償金を得て退職しようとする従業 員に対する対処は特に慎重に行う必要がある。これまでの業績評価がそれほど悪くなければ、通常、職務不適格と認定されにく い。上述の措置以外に、遅刻、早退、勤務時間中に長時間離席、買い物やゲームを行う等、あるいはその他の規律違反行為が あるか否かなど、多方面から従業員の行為を把握、監督し、適時、教育や懲罰を行うべきである。最終的には、是正して通常通り 仕事に専念するか、目的を達成できず、気分を害し、自ら退職するか、重大な規律違反で会社に一方的に解雇されるかのいずれ かになる。

企業にとって、投げやりな従業員は生産性が低いだけでなく、職場環境にも悪影響を及ぼす存在である。そのため、人事管理 の角度から、やる気をなくした従業員を分類し、個々の状況に応じた対策を制定し、適時対処するべきである。

実務検討

主たる契約に変更があれば、保証責任はどうなるのか?

実務において買主が期日通りに支払いをしないことを懸念し、売主が買主に対し担保として抵当物の提供や、第三者による保 証の提供を求めることも多い。買主が第三者による保証を提供したという状況下で、主たる契約に変更があった場合、保証人の責 任は影響を受けるのだろうか?

これについては、状況毎に検討する必要がある。

一、保証人は変更後の主たる契約に基づいた債務について保証責任を負う。『民法典』第 695 条第 1 項には、「債権者と債務者 が保証人の書面による同意を得ずに、主たる債権債務契約の内容を協議して変更し、債務を軽減した場合、保証人は変更後の 債務に対して、引き続き保証責任を負う。......」と規定している。従って、変更が保証人の書面による同意を経ている、又は保証人 の書面による同意を経ていないが、変更後に債務が軽減された場合に、保証人は変更後の主たる契約に基づいた債務に対して 保証責任を負う。

二、保証人の保証責任は変わらない。『民法典』第 695 条第 1 項には、「債権者と債務者は、保証人の書面による同意を得ず に、主たる債権債務契約の内容を協議して変更し、......債務が加重された場合、保証人は加重した部分に対する保証責任を負わ ない」と規定している。従って、債務が加重された場合、保証人の保証責任は変わらず、元の保証範囲に限られる。但し、特定の 事件では、主たる契約に基づいた債務の変化が債務の加重につながるか否かについての意見が一致しないこともある。例えば、 (2021)最高法民再 330 号事件では、裁判所は「H 銀行と A 社が合意して借金の用途を変更した結果、債務者である A 社の債務 が加重されておらず、保証人である L 社に損失をもたらさなかったため、保証人は残りの未返済分の元利に対して保証責任を負 わなければならない」と指摘した。この事件では裁判所は「債務は加重されていない」と認定したが、もともと生産経営のために使 われていた借金の用途が財テクや過去の未返済分の返済に変更され、かつ損失が発生した場合、裁判所は異なる判断を下す可 能性がある。また、民法第 695 条第 2 項の「債権者と債務者が主たる債権債務契約の履行期間を変更し、保証人の書面による同 意を得ていない場合、保証期間は影響を受けない」という特殊な状況もある。これにより保証人の責任が軽減されると考える人も 尐なくないだろうが、実際にはそうではない。履行期間の短縮は、債務者の資金調達期限が短くなることを意味する。必ずしも保証 人が有利になるとは限らない。そのため、『民法典』では、誤解を招きやすい特別な状況について明確に記されている。

三、保証人は保証責任を負わない。主たる契約の変更により契約の基礎を失い、例えば社会事情の変更が生じた場合、保証 人の書面による同意を得ずに、保証人が保証責任を負わなければならない可能性がある。例えば、『人民法院判例データベース』 に掲載されている(2022)滬 02 民申 159 号事件の裁判要旨には、「民法典施行後、民法典第 695 条に基づき、返済口座の変更に より債務の加重又は軽減をもたらすかを区分すべきである。変更後に不可分債務が加重された場合は、民法典第533 条の契約基 礎喪失の規則を適用すべきである。変更後に可分債務が加重された場合は、加重された部分の保証責任を免除する理由は他人 による処分禁止である。変更後に不可分債務が加重された場合、全部の保証責任を免除する理由は取引基礎の喪失である。変 更により保証の負担が影響を受けない場合は、保証責任範囲も影響を受けない」と指摘した。

また、「新たに借り入れた金銭で過去の未返済分を返済する」事件は上述の状況よりもさらに複雑だ。『<中華人民共和国民法 典>の担保制度の適用に関する最高人民法院の解釈』には特別規定がある。第 16 条において、「主たる契約当事者が新たに借り入れた金銭で過去の未返済分を返済することに合意し、債権者が過去の未返済分の保証人に保証責任を負うよう請求する場 合、人民法院はこれを認めない。債権者は新たに借り入れた金銭の保証人に保証責任を負うことを請求する場合、以下の状況 で処理する。(一)新たに借り入れた金銭と過去の未返済分の保証人が同じの場合、人民法院は債権者の請求を認める。(二)新 たに借り入れた金銭と過去の未返済分の保証人が異なる場合、または過去の未返済分に担保を設定しておらず、新たに借り入 れた金銭に担保を設定した場合、人民法院は債権者の請求を認めない。ただし、新たに借り入れた金銭の保証人が担保を提供 する時点で、新たに借り入れた金銭で過去の未返済分を返済するという事実を知っていた、或いは知っているべきであることを証 明する証拠を債権者が有する場合を除く。主たる契約当事者が新たに借り入れた金銭で過去の未返済分を返済することに合意 し、過去の未返済分の担保人が、登記が抹消されていない状況下で、新たに借り入れた金銭に対して担保の提供を継続すること に同意し、新しい金銭消費貸借契約を締結する前に、その担保財産をもって他の債権者に担保物権を設定し、他の債権者がそ の担保物権の優先順位が新たに借り入れた金銭の債権者より高いことを主張する場合、人民法院はそれを認めない。」と規定している。

立法動向

『商標権侵害事件における違法経営額の計算弁法』が 2024 年 10 月 14 日より施行

知的財産権の権利者にとって、権利侵害事件における難点は賠償金額及びその証明である。知的財産権は無形性を有するの で、多くの場合、その価値を定量化するのが困難だ。商標分野の『商標法』では、賠償額の計算方式を「権利者の損失、権利侵害 者の利益、法定賠償額」の 3 つに定めている。『知的財産権侵害の刑事事件の処理における具体的な法律適用の若干問題に関 する最高人民法院、最高人民検察院の解釈』(以下『司法解釈』という)と『サービス商標の保護の若干問題に関する国家工商行 政管理局商標局の意見』では、権利侵害所得の計算要素を明確にしている。

実務において、権利侵害所得については、違法コストからどの部分を控除できるかなど、あいまいな部分もある。2024 年 10 月 14 日、国家知的財産権局と国家市場監督管理総局が共同で発表した『商標権侵害事件の違法経営額の計算弁法』(以下『計算 弁法』という)は、これらのあいまいな事項を処理する際の根拠、または参考になることが期待される。以下は、『計算弁法』のポイ ントについて紹介する。

一、商品の段階によって異なる計算方法を設定する

『計算弁法』第 5 条、第 6 条:

段階計算方法
販売済み
権利侵害商品の価値は実際の販売価格に基づき計算する。
未販売
 権利侵害商品の価値は、特定された権利侵害商品の実際の平均販売価格に基づき計算する。
 実際の平均販売価格が確認できない場合は、権利侵害商品の表示価格に基づき計算する。
 実際の販売価格が確認できない場合、または権利侵害商品に表示価格がない場合は、権利侵害発生期間
中に権利侵害対象商品の市場中間価格に基づき計算する。
※ 市場中間価格の計算規則: ·権利侵害対象者が公表した同種類の製品の参考小売価格に基づき確定する。 ·参考小売価格が公表されていない場合は、次の方法で確定する。
1市場に同種類の権利侵害対象商品の販売者が複数存在する場合、その内いくつかの販売者の小売価 格の平均をとって市場中間価格とする。販売者が 1 つしかない場合、当該販売者の小売価格を市場中
間価格とする。 2市場に同種類の権利侵害対象商品が販売されていない場合、これまで市場で販売されていた同種
類の権利侵害対象商品の中間価格に基づき確定する、もしくは機能、用途、主要材料、デザイン、 構成などにおいて権利侵害対象商品と同一や類似する、市場で販売されている同種類の権利侵害 対象商品の市場中間価格に基づき確定する。
·前項の規定により市場中間価格が確定できない場合は、価格認定機関の認定を得て確定することが できる。
·他の関連証拠を審査し、真実であることを確認した後、当事者が声明を出し、商標権利者が提供する 権利侵害対象商品の市場中間価格を参考として使用することができる。

製造されている
が、商標が表示
されていない


当該商品が他人の登録商標専用権を侵害することを証明する確実かつ十分な証拠がある場合、その価値 が、商標が表示 は違法経営額に計上される。
されていない

二、特殊な状況における違法経営額の計算

状況計算方法
OEM
限定条件:材料付き加工受託
具体的な方法:
·権利侵害対象商品の実売価格に基づいて違法経営額を計算する。 ·権利侵害対象商品が単独で価格設定されていない場合、材料付き加工受託事業活動における価値の割合に
基づいて違法経営額を計算する。価値の割合が区別できない場合、権利侵害対象商品の市場中間価格に基
づいて違法経営額を計算する。
無 償 で 贈 与 された商品
実際の贈与品の購入価格や製造原価に基づいて違法経営額を計算する。 ·贈与品の実際の購入価格や製造原価が確定できない場合、或いは贈与品が規格外の商品である場合は、表
示価格または権利侵害対象商品の市場中間価格に基づいて違法経営額を計算する。

リ ニ ュ ー ア ル商品

·通常、権利侵害商品の全体価値に基づいて違法経営額を計算する。 ·リニューアル商品自体が他人の登録商標専用権を侵害しておらず、その部品または付属品のみが他人の登
録商標専用権を侵害している場合、権利侵害に係る部品または付属品の価値に基づいて違法経営額を計算 する。

最後に、注目に値する点は、行政と刑事が合同で検察機関から行政機関へ移送した事件において、違法経営額に関する行 政機関と公安機関の認定が一致しない場合、『計算弁法』に従って認定することができるということだ。

弁護士紹介

金燕娟 弁護士/パートナー

10年以上の日系企業での勤務経験を持ち、日系企業の文化、経営管理上の普遍的問題点などについて深い理解を持つ。業務執行においては、それぞれの会社の実情に合わせ、問題となる根本的な原因を見つけ、相応の解決策を導き出すことが得意で、顧客中心リーガルサービスの提供が出来る様、日々取り組んでいる。

その他にも、長年にわたるビジネス実務経験と弁護士業務経験を生かし複雑なビジネス交渉などにおいても特有の技能と優位性を示している。

学歴:華東政法大学出身、民商法学修士号取得。

使用言語:中国語、日本語

主な取扱分野:会社運営の日常業務。複数の業種の企業の法律顧問を長年に渡り、務め、人事、リスク管理などを含む総合的リーガルサービスを提供している。知的財産権分野。企業の法律顧問を長年務めるとともに、営業秘密、特許、商標などに関連する訴訟、非訴訟業務に従事し、特に営業秘密の管理体系及び個別案件の処理については幅広い知識と豊かな実務経験を持っている。
不正競争防止分野。主に「ブランドのタダ乗り」、虚偽宣伝を含む知的財産権に関連する不正競争案件、知的財産権侵害と不正競争との複合紛争案件を処理し、個別案件の実情に基づいた有効な解決策の提示を得意としている

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