上海ハイウェイス法律相談事例

喫煙を理由に解雇できるか?

2021年3月1日

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上海ハイウェイス法律事務所の法律相談事例!連載 ~第28回~

法律物語

喫煙を理由に解雇できるか?

タイトルを見ておそらく2つの意見が出てくるだろう。ヘビースモーカーは、喫煙を理由に解雇するとは酷すぎる、些細なことを大げさしていると否定的な意見を持つ。一方、受動喫煙の被害者は、喫煙を理由に解雇することは、喫煙が解雇理由になら いという認識を改めることができると肯定的な意見を持つ。

答えはどうだろうか。以下では、状況に分けて検討しよう。

一つ目は、企業の規則制度には、「喫煙エリア以外で喫煙する従業員に対して、企業は解雇処分を行うことができる。」旨の規定がある状況の場合だ。過去には、一部の判決では、喫煙行為が深刻な損害又は負の影響をもたらしていないので、関連規定の合理性が否定された(例えば、(2015)滬一中民三(民)終字第 441 号)。『公共場所衛生管理条例実施細則』など公共場所禁煙に関する行政規則及び地方法規(例えば、『上海市公共場所喫煙を控える条例』)の公布により、司法機関の態度は明らかに変わり、大部分の裁判所が解雇の正当性を認めるようになってきた。

しかし、実務において、以下の2点に注意を払う必要がある。

(1)規則制度における具体的な喫煙罰則規定について。(2018)京 02 民終 2801 号事件において、使用者の就業規則には、「下記のいずれかの状況に該当する場合は、企業は労働契約を直接解除できる。......勤務エリア及び禁煙エリアにて喫煙又は火付けをし、これによって企業に損害をもたらした場合。」と定めていた。しかし、企業は損害を証明できなかったため、違法解雇と認定された。

(2)特別な消防要求がない企業(例えば、商社)又はエリア(製造又は倉庫以外の一般勤務エリア)の場合は、喫煙を理由に解雇すると、裁判所に認められない可能性が高い。書面警告ぐらいの処分を行うことが、妥当ではないかと思われる。

もう一つは、企業の規則制度に喫煙に係る規定がない状況の場合だ。このような場合、仮に喫煙エリア外の場所で喫煙し、使用者に一定の不利益な結果をもたらした、或いは使用者が『消防法』などの要求に応じて、製造エリア、倉庫エリアで禁煙エリア(火花禁止エリア)を指定しているものの、従業員が当該禁煙エリアで喫煙した等の場合は、企業は就業規則における罰則の包括的条項に従い解雇処分を行えば、裁判所がこれを認める可能性は高い。

最後に少し興味深い問題がある。電子タバコの喫煙が処分の対象になるか否かということだ。実務において、一部の裁判所は肯定的な態度を示している。例えば、(2019)京 0108 民初 45869 号事件において、裁判所は、「電子タバコであっても普通のタバコであっても、いずれも喫煙を控える条例の立法主旨・目的に背く。」と指摘した。電子タバコは火花が発生しないが、喫煙に伴い高温となり、周りに含まれる酸素の割合が高い場合は、火災を起こすリスクがある。従って、意見の食い違いがあるにも係わらず、喫煙を控える立法主旨・目的、火災予防上の危険性からみて、電子タバコの喫煙も処分の対象になると思われる。

実務検討

民法典施行後、保証期間を如何に約定するべきか?

2021 年 1 月 1 日より施行された『民法典』における保証期間の関連規定は、元『担保法』及び相応の司法解釈と比べれば、変化が大きい。

『民法典』の関連規定によると、債権者と保証人の間に約定がなく、又は約定が不明確である場合は、保証期間は主たる債務の履行期限の満了日から 6 か月とする。同時に、『〈中華人民共和国民法典〉における担保制度の適用に関する最高人民法院の解釈』第 32 条では、保証契約には、「保証人が主たる債務の元利完済まで保証責任を負う」というような約定がある場合は、約定が不明確であると看做され、保証期間は主たる債務の履行期限の満了日から 6 か月とする、と定めている。一方、前『担保法司法解釈』第 32 条第 2 項によると、保証契約には、「保証人が主たる債務の元利完済まで保証責任を負う」というような約定がある場合は、約定が不明確であると看做される。保証期間は主たる債務の履行期限の満了日から 2 年とする。

要するに、約定が不明確な場合での保証期間は「2 年」から「6 か月」になっている。立法主旨からみて、法定保証期間変更の目的は、保証契約の片務性・無償性に鑑み、保証人が過重な責任を負うことを回避し、保護することにあると思われる。

債権者の立場に立って考えれば、保証期間を長くしたい場合、「主たる債務の元利完済まで保証責任を負う」というような約定を避け、具体的な保証期間を明確に約定すべきである。

では、保証期間に上限はあるのだろうか?3 年、5 年さらには 10 年の保証期間約定も有効だろうか?

まずは中国最高裁の既存判決を見てみよう。

(2019)最高法民申 6911 号事件において、Y社は 2014 年に馮氏にお金を貸し、張氏と彭氏が馮氏の連帯保証人として『民間金銭貸借契約』に署名した。『民間金銭貸借契約』では、保証人は契約における全ての債務に対して連帯保証責任を負い、保証期間は返済期限の満了日から 5 年とすることを約定した。貴州の裁判所は第二審において、「馮氏が契約に従い保証責任を履行すべき」と認定した。それに対して、張氏と彭氏は、保証期間を2年超えた場合、超過分の約定は無効だと主張し、「5年の保証期間の約定が有効と認定した原判決には法律の適用に誤りがある。」と再審を申立した。

最高裁は再審判決において、以下のことを指摘した。「本件における『民間金銭貸借契約』では 5 年の保証期間を約定した。 第 32 条でいう「約定が不明確である」状況に該当しないため、第 32 条を適用して約定が無効であると認定することができない。又、法律、行政法規の強行規定に違反する状況も存在しない。5 年の保証期間の約定の効力を認める原判決は妥当である」つまり、『民法典』施行後、法律、行政法規では保証期間の上限を設定していないため、どれぐらいの保証期間を約定するかは債権者と保証人の意思により決定する。

なお、主たる債務の訴訟時効より保証期間が長い場合に問題になるかについては、実は、保証債務と主たる債務はそれぞれの履行期限、訴訟時効があり、互いに矛盾しない。主たる債務の訴訟時効が切れているが、保証期間が満了していない場合は、保証人は保証務の従属性から、主債務者の債権者に対する時効経過を抗弁することができる。逆に、債権者の立場に立って考えれば、主たる債務の訴訟時効より約定された保証期間が長い場合は、有利な約定が有効に働くよう、債務者に債務履行を催促していた証拠を保存しておくよう心掛ける必要がある。

立法動向

『上海市知的財産権保護条例』が 2021 年 3 月 1 日より施行

『上海市知的財産権保護条例』(以下『条例』という)は 2020 年 12 月 30 日に可決され、2021 年 3 月 1 日より施行される。『条例』のポイントは以下の通りである。

1.知的財産権連席会議制度の構築

『条例』第 4 条では、市、区の人民政府は知的財産権連席会議制度を構築し、具体的な業務は同級の知的財産権部門が担当することを明確に規定している。又、連席会議の主要な職責は、以下の通りである。①本行政区域における知的財産権の保護を組織、指導、監督する。②知的財産権保護に係る重要な政策・戦略計画を研究・制定する。3知的財産権保護における重要な事項を総合的に推進する。

2.長江デルタ区域における知的財産権保護の特別メカニズム

『条例』第 7 条によると、長江デルタ区域の知的財産権保護の特別メカニズムは以下の 3 つを含む。①知的財産権保護に係る管理調整・情報共有を推進する。②立件の協力、調査・取り調べ、証拠の相互承認、応急連動などに関するメカニズムを完備する。③知的財産権に係る違法行為に対して連合信用懲戒を実施し、知的財産権に係る法律執行の協同を図る。

3.技術輸出審査の原則的な要求

『条例』第 16 条では、知的財産権の海外への譲渡審査制度の完備について、以下のことを定めている。「市の知的財産権部門は市の経済情報化、商務、科技などの部門と共同で対外譲渡審査の手続・規則を制定・完備しており、知的財産権対外譲渡の秩序を規範化し、国の安全と重要な公共利益を保護する。外国投資者が国内企業を合併買収する場合の知的財産権対外譲渡に対して、本市の関連部門は国の関連部門と協力して審査する。」

4.知的財産権分野における信用体系の構築

『条例』第 18 条では、知的財産権分野における信用体系を構築し、主に 3 つのメカニズムからなることを規定している。①知的財産権分野の情報収集整理メカニズム。主にその知的財産権侵害行為により、自然人、法人、非法人組織が司法判決又は行政処分を受けた際の関連情報を公共信用情報に保管し、情報の共有を図ることを指す②信用評価メカニズム。つまり、信用に基づいて等級、種類分けをし監督管理を行う。③信用を喪失した主体に対して法に従い懲戒を行う信用喪失懲戒メカニズム。

5.司法保護の傾向『条例』第四章では、司法保護について、「当事者が公証、デジタルデータなど第三者による証拠保全の方式を活用して証拠集め、固めることを奨励する。知的財産権侵害に対する賠償を強化し、故意に知的財産権を侵害し、かつ状況が深刻な場合は、法に従い懲罰的賠償責任を負わせる判決を下すべき。」などの姿勢を示した。

知的財産権権利者は、『条例』における知的財産権保護の関連措置を積極的に研究・活用するべきである。


弁護士紹介

金燕娟 弁護士/パートナー

8年以上の日系企業での勤務経験を持ち、日系企業の文化、経営管理上の普遍的問題点などについて深い理解を持つ。業務執行においては、それぞれの会社の実情に合わせ、問題となる根本的な原因を見つけ、相応の解決策を導き出すことが得意で、顧客中心リーガルサービスの提供が出来る様、日々取り組んでいる。

その他にも、長年にわたるビジネス実務経験と弁護士業務経験を生かし複雑なビジネス交渉などにおいても特有の技能と優位性を示している。

学歴:華東政法大学出身、民商法学修士号取得。

使用言語:中国語、日本語

主な取扱分野:会社運営の日常業務。複数の業種の企業の法律顧問を長年に渡り、務め、人事、リスク管理などを含む総合的リーガルサービスを提供している。知的財産権分野。企業の法律顧問を長年務めるとともに、営業秘密、特許、商標などに関連する訴訟、非訴訟業務に従事し、特に営業秘密の管理体系及び個別案件の処理については幅広い知識と豊かな実務経験を持っている。
不正競争防止分野。主に「ブランドのタダ乗り」、虚偽宣伝を含む知的財産権に関連する不正競争案件、知的財産権侵害と不正競争との複合紛争案件を処理し、個別案件の実情に基づいた有効な解決策の提示を得意としている

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