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上海ハイウェイス法律相談事例

前職調査のリスク及び対応策

2021年10月8日

上海ハイウェイス法律事務所の法律相談事例!連載 ~第35回~

法律物語

前職調査のリスク及び対応策

HRとして、従業員の前職調査を行う際に直面する状況は一般的に以下の2つだろう。一つは、採用選考段階で会社の代表として候補者の前職について調査を行う場合、もう一つは、他社で行われる前職調査に協力する場合である。しかし、前職調査は往々に従業員の個人情報に関わるため、非常にセンシティブなものである。特に『個人情報保護法』公布後、HR達はさらに気に病むようになっている。

よって、本号では、前職調査に関わるリスクや対応策について検討しよう。

まずは、自社の採用候補者に対して前職調査を実施するにあたって、HRは以下の問題に留意すべきである。

(1)どこから情報を得たか。情報の出所が不適切な場合は、高い法的リスクに直面する恐れがある。例えば、2019 年広州の警察機関は「獵頭搜(http://www.lietousou.com)」ウェブサイトによる自然人の個人情報の不法獲得、提供、売買に対して立件し調査した結果、最終的に130人余りの容疑者(うち、ヘッドハンティング及び知名企業の HR を含む)を逮捕し、2億件以上の個人情報が関わっていたことが明らかになった。当該ウェブサイトの登録者数は6万人に達しており、ユーザーは企業内部の連絡先や個人履歴書をアップロードするでよりポイントを獲得し、獲得したポイントを利用して他のユーザーがアップロードした企業内部の連絡先や個人履歴書をダウンロードすることができる。このようなやり方は、「互恵互助」のように見られるが、実は犯罪行為に該当する。実務において、比較的適切な方法としては、前職調査の実施について事前に採用候補者に告知し、かつ前職調査のルート、方法などについても採用候補者の同意を得ておくことである。


(2)個人情報の収集が必要かつ合理的な範囲内であるか否か。『個人情報保護法』では、「個人情報の収集は、取扱目的を実現する最小範囲に限定しなければならず、過度に個人情報を収集してはならない。」と明記されている。採用候補者に対して前職調査を行う目的は、前職の在職期間や職位、また業務内容や権限やパフォーマンス等を把握すること、そして職歴詐称の有無を確認することにある。従って、前職調査に係る個人情報は上述の範囲を超えてはならない。


(3)収集した個人情報を如何に取り扱うか。具体的に言うと、収集した個人情報は人事担当者、採用候補者の上司以外には口外しないこと。関連個人情報を、利用後に人事部の指定メンバーが統一的に保管し、また有償か無償かを問わず、いかなる第三者に無断で提供してはならない。

次に、他社からの前職調査に協力できるかどうかを判断するには、以下の問題を確認しておく必要がある。

(1)従業員の同意を得た証拠の有無。例えば、従業員が入社または退社の際に、使用者が書面で「他社から前職調査を要求されるときに、会社が当人の個人情報を提供する」ことについて、従業員に告知し承認を得ていたという証拠がある場合、他社による前職調査に協力できる。そのような証拠がない場合、つまり他社による前職調査に協力することについて当該従業員の書面による同意を得ていない場合は、前職調査に協力することにリスクが伴う。

(2)提供できる従業員の個人情報の範囲。従業員との間で具体的な提供事項を明確に約定している場合を除き、会社は前述した範囲内で従業員の個人情報を提供することができる。

(3)採用という名目で、個人情報を詐取を防止するため、従業員の個人情報を提供する前に、相手(他社)の代表電話、公式電子メール、又は従業員本人への確認を行い、前職調査を行う他社担当者の身分を確かめることが望ましい。

実務検討

ステマって、違法なの?

「レッド」(注:小紅書)のアプリユーザーで、コミュニティメモに書いてある商品体験談に心を揺さぶられた、さらに関連商品の購入にまで至った経験がある者は尐なくないだろう。公式アカウント(公衆号)に書かれている文章に心を動かされ、共鳴し、少しの説明を見てから、成り行きで関連商品又はサービスを導入する。そして説明された効果を実感することで、当該ブランドに好感を持ち、信頼感が生じ、購入意欲がさらに引き起こされるケースも多いと思われる。

上述のコミュニティメモ、公式アカウントで書かれている文章がアドバトリアルに該当する。アドバトリアルはハードセルに反し、性質上ソルトセル広告文である。通常、配信者が本文と広告を巧みに融合させることにより、「自然」にプロダクトプレースメントという宣伝効果を実現させる。その例は、プラットフォームに投稿された「購買意欲を植え付けるレス」、「攻略」などが挙げられる。アドバトリアルは「ステルスマーケティング」の一つに属する。

「ステルスマーケティング」(以下「ステマ」という)は当初、重要なスポーツ試合に関わる活動で現れたものである。一部の非スポンサーが試合活動のプロパガンダをする時に、こっそりと広告を挿入することで、スポンサーであると誤認させ、それによってブランドの影響力拡大を図る。近年、ステルスマーケティングの種類は増加しており、上述の「アドバトリアル」以外にも、YOUKU、TIKTOKなどのプラットフォームにおいて広告を本物のレビューに見せかけ、クリックファーム、報酬付きレビュー、製品紹介又は購入リンク付きサクラレビューなども登場している。。

「アドバトリアルは不特定な消費者の話題の方向性を導き、感情を揺さぶる。また隠蔽性が高いので、消費者の識別力が喪失してしまい、アドバトリアル投稿者のフォロワーは感情的な依存により関連製品を宣伝、購入する。」(出所:徐州中級裁判所(2020)蘇 03 民終 5502 号判決)。言い換えれば、店舗は消費者をミスリードすることで競争優位性を獲得する。従って、近年、米国、日本などの国ではステマに対する規制が重要視されている。

中国の『広告法』第 2 条によると、「一定の媒体及び形式を通じて直接又は間接的に自身の宣伝する商品又はサービスを紹介する活動」は広告行為に該当する。また、『インターネット広告管理暫定弁法』第 3 条では、広告のルートについて「ウェブサイト、ウェブページ、インターネット・アプリケーション・プログラム等のインターネット・メディアを通じる」こと、また形式について「文字、図・写真、オーディオ、ビデオ及びその他形式」が含まれるとしている。一方、『電子商取引法』第 17 条では、事業者は取引の虚構、ユーザー評価の捏造等の方式によって虚偽又は誤解を招く商業宣伝を行い、消費者を欺瞞、誤解させてはならないと定めている。

よって、店舗がどのような媒体及び形式を通じて宣伝・販売促進するか、「直接又は間接的に」にかかわらず、自身の宣伝する商品又はサービスを紹介することを目的とする限り、『広告法』による規制を受ける。目的を判断する際には、配信に対して対価を支払うか否か、又はその他の利益が発生するか否かが重要な判断要素となる。

『広告法』第 14 条及び『インターネット広告管理暫定弁法』第 7 条の規定によると、消費者の誤解を招かないために、広告に識別可能性を持たせ、「広告」であることを明確に表示し、消費者がそれが広告であると明らかに見分けることができるようにしな ければならない。

「広告」を完全に表示せず、又は著しく表示しないことにより、消費者が特定の文書がアドバトリアルであると判別できない場合は、行政処分を受けたり、消費者に訴訟を提起されるリスクがある。

企業はPRを行うときに、リスク管理をしっかり行うために、主に以下のポイントに注意を払うよう提案する。

(1)PRの方法(会社のウェブサイト、wechat公式アカウンなど新しい媒体を通じてアドバトリアルを配信するなど)にかかわらず、企業自身の宣伝する商品又はサービスを直接又は間接的に宣伝する限り、「広告」又は「販促」等、顕著に表示すること。

(2)無料又は有料でブロカーなどに商品のレビューを投稿してもらう際は、真実に基づく体験談を記載し、客観的かつ公正に同類の製品と照合するものとし、虚偽又はマイナスの評価を行わない。

立法動向

『個人情報保護法』信用喪失企業が如何に信用の修復を申請するか?
市場監督管理総局の新規定が 2021 年 9 月 1 日より 施行

違法行為により信用を喪失した企業がより多くの機会を獲得して自主的に過ちを正し、信用を再構築でき、これによって信義誠実、法律遵守の意識を高めるために、市場監督管理総局は『重大違法・信用喪失企業名簿管理弁法』、『市場監督管理における行政処分情報公示規定』、『市場監督管理における信用修復管理弁法』を公布し、2021 年 9 月 1 日より施行する。

以下では、企業が関心を持つ信用の修復に関連する『市場監督管理における信用修復管理弁法』(以下『修復管理弁法』という)のポイントを紹介する。

1、信用の修復とは

『修復管理弁法』第 2 条によると、信用修復管理とは、市場監督管理部門は規定に従い、条件に合致する当事者を経営異常企業リストから削除し、個人経営者の正常な記載状態を回復させること、重大違法・信用喪失企業名簿から事前に削除し、国家企業信用情報公示システムによる行政処分情報などの公示を事前に停止し、法に従い関連管理措置を解除すること、信用修復の情報を関連部門と共有することを指す。

簡単に言えば、申請条件を満たしている場合に、当事者は公示済みのマイナス情報の修復を申請することができる。

2、信用修復の申請条件

公示内容によって申請条件が異なる。

(1)『修復管理弁法』第 5 条によると、経営異常リストに掲載され、または経営状態が異常と認定された企業は、関連情報を修正した後、信用修復を申請することができる。

(2)行政処分の公示。公示期間が3年である行政処分情報については、条件を満たし、公示期間が6か月を経過した場合に、信用修復を申請することができる。上述の「条件」は4つある。①行政処分決定に定める義務を自発的に履行した。②危害及びマイナスの影響を自発的に解消した。⑶同種の違法行為で市場監督管理機関から行政処分を再度受けたことがない。

但し、食品、薬品、特殊設備分野に関する行政処分情報の公示期間は 1 年とする。

3、信用修復申請の受理

『修復管理弁法』によると、主管部門は申請を受け取った日より 2 稼働日以内に受理要否の決定を下す。主管部門が受理の決定を下した場合は、2 つの状況に分類される。

(1)経営異常リストからの削除申請。適時に申請しなかった場合は、信用修復の期限は申請受取日より 5 稼働日以内とする。情報を修正した場合は、信用修復の期限は調査確認を経た日より 5 稼働日以内とする。

(2)その他。受理日より 15 个稼働日以内に決定を下す。信用修復を承認すると決定した場合は、決定日より 3 稼働日以内に関連情報の公示を停止し、法に従い関連管理措置を解消し、かつ経営異常リストから削除し、又は公示を停止した後 3 稼働日以内に、関連情報を他の部門と共有する。


弁護士紹介

金燕娟 弁護士/パートナー

8年以上の日系企業での勤務経験を持ち、日系企業の文化、経営管理上の普遍的問題点などについて深い理解を持つ。業務執行においては、それぞれの会社の実情に合わせ、問題となる根本的な原因を見つけ、相応の解決策を導き出すことが得意で、顧客中心リーガルサービスの提供が出来る様、日々取り組んでいる。

その他にも、長年にわたるビジネス実務経験と弁護士業務経験を生かし複雑なビジネス交渉などにおいても特有の技能と優位性を示している。

学歴:華東政法大学出身、民商法学修士号取得。

使用言語:中国語、日本語

主な取扱分野:会社運営の日常業務。複数の業種の企業の法律顧問を長年に渡り、務め、人事、リスク管理などを含む総合的リーガルサービスを提供している。知的財産権分野。企業の法律顧問を長年務めるとともに、営業秘密、特許、商標などに関連する訴訟、非訴訟業務に従事し、特に営業秘密の管理体系及び個別案件の処理については幅広い知識と豊かな実務経験を持っている。
不正競争防止分野。主に「ブランドのタダ乗り」、虚偽宣伝を含む知的財産権に関連する不正競争案件、知的財産権侵害と不正競争との複合紛争案件を処理し、個別案件の実情に基づいた有効な解決策の提示を得意としている

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