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特集 上海ハイウェイス法律相談事例

【法律相談】分公司が閉鎖された場合、従業員はどうなるのか?

上海ハイウェイス法律事務所の法律相談事例!連載 ~第70回~

法律物語

分公司が閉鎖された場合、従業員はどうなるのか?

会社登記の抹消の場合は、法に基づき労働契約は終了し、会社が経済補償金を支払うことに疑いの余地はない。一方、分公 司登記の抹消の場合は、『会社法』上、分公司は独立した法人格を持たないため、本社が民事責任は負うことになる。そのため、 実務において、分公司登記抹消の場合、会社登記抹消と同様に、労働契約は終了し、補償金が支払われるかについて意見の ばらつきが見られる。

その根本的な原因は『労働契約法』第 44 条第(5)号の規定に対する解釈の違いだ。

『労働契約法実施条例』第 4 条によると、法により営業許可証又は登記証明書を取得した分枝機構は、使用者として労働者と 労働契約を締結することができる。従って、分公司は間違いなく使用者に該当する。『労働契約法』第 44 条第(5)号では、使用者 が営業許可証を取り上げられた場合、閉鎖もしくは取消を命じられた場合、または使用者が早期解散を決定した場合は、労働契 約が終了するものと規定しているが、分公司の登記抹消が「使用者の取消、又は使用者が早期解散を決定した場合」に該当す るのかについて見解が異なる。

司法実務においては、分公司の登記抹消は『労働契約法』第 44 条第(5)号に規定される事由に該当するというのが一般的な 見解である。その主な理由は、労働関係の主体からみて、使用者が本社ではなく分公司である以上、分公司が登記抹消により 存在しなくなった場合、当然『労働契約法』第 44 条第(5)号に規定された「使用者が主観的または客観的な原因により存続しなく なる」という状況に該当するからだ。例えば、(2021)京 03 民終 13848 号事件において、裁判所は「三期(妊娠期、出産期、授乳 期)の女性従業員と労働関係を構築した対象は本社ではなく分公司であり、分公司の登記抹消は労働関係終了の法定事由に該 当する」と明確に指摘した。実は、この見解の背後には別の現実的な考えがある。つまり、分公司と本社は同じ場所にないケー スが多いため、本社が、分公司の使用者としての義務を引き継ぎ、かつ分公司の従業員との労働契約を継続することが可能か、 従業員の仕事をいかに手配するか、従業員が転勤に同意するかなど現実的な障害が存在する。この点は『労働契約法』第 40 条 の「客観的状況に大きな変化が生じた」という状況に類似する。

しかし、個別の判決においては、分公司の登記抹消による労働契約の解除は違法解除にあたるとする反対の見解を示すもの もある。例えば、(2020)川 15 民終 1841 号事件では、裁判所は、「三期の女性従業員は『女性従業員労働保護特別規定』に基づ き特別な保護を受けるべきである」として、「本社が分公司の使用者としての義務を引き継ぎ、労働契約を履行し続けるべきだ」と 指摘した。使用者応訴の立場からは、上述の本社が労働契約の履行を継続することが従業員にとって現実的な障害となること 及び『労働契約法』第 40 条との類比により、裁判官が合理的な判断を下せるよう導くことが推奨される。

また、労働契約終了の具体的な時点をどのように確定するかという問題についても考えなければならない。

この点については明確な法律規定がない。司法実務においては個別事件によって判決が異なる。〔2016〕年最高法民申 800 号 事件において、最高院は「『中華人民共和国労働契約法』では、使用者が早期解散を決定した場合の労働契約終了の具体的な時点を明確にしていないため、労働関係終了時点の確定については、使用者が解散を決定した際に、清算の実務を踏まえて、 使用者と労働者が労働契約終了手続きを行った日を終了時点とするのが適切である。」と指摘した。「〔2011〕閩 01 民終 9317 号 事件においては、裁判所は「分公司は従業員に労働契約の終了通知書を出してから 7 カ月後に登記抹消を行ったので、労働契 約の終了ではなく、違法解除に該当する」と指摘した。又、ごく一部であるが、本社が分公司廃止決定を下した日を労働契約終 了日とすることが認められた案件もある。

以上を踏まえ、使用者の立場から考えると、以下の 2 つの側面からリスクを防止することできる。(1)分公司は廃止の少なくと も 1 か月前には従業員に通知し、かつ従業員に配布する労働契約終了通知書において「分公司が廃止される」という事由を明 記すること。(2)個別の案件において、時間がかかり過ぎたことを理由に、労働契約終了と分公司の登記抹消との因果関係が疑 われた。又、『市場主体登記管理条例実施細則』第 44 条によると、決定を下した日から 30 日以内に登記抹消を申請しなければ ならない。以上のことから、分公司の登記抹消は極力短期間で完了させなければならない。

実務検討

企業が倒産した場合、債権者はどう対応すべきか(二)

前回の「企業が倒産し場合、債権者はどう対応すべきか?(一)」では、債権の財産の種類及び債権が訴訟手続きに入ったか 否かが債権回収に与える影響について分析した。今回は特殊な状況における権利保護措置を紹介する。

状況 1:債権者と債務者が互いに債務を負う

『企業破産法』第 40 条によると、債権者は破産申請の受理前に直ちに相殺権を行使することができる。注意すべきことは、相 殺権の悪用を避けるために、『企業破産法』第 40 条と『『中華人民共和国企業破産法』適用の若干問題に関する規定(二)』第 41、44、45、46 条では制限条件が定められている点だ。例えば、債権者が破産申請受理後に他人の債権を取得した場合など。

状況 2:破産手続における落ち度の把握

『企業破産法』は債権者に質問権、議決権を与えている。ほとんどの債権者は、裁判所が介入し、かつ専門の破産管財人がい ることを考慮し、何の行動を取らない。しかし実務において破産手続に落ち度がないという保証はない。自己の利益を最大限に守 るために、債権者は関係状況(例えば、出資者が実際に出資したか否かなど)を積極的に把握し、必要に応じて速やかに関連権 利を行使するべきである。債権者は問題を発見した場合、『企業破産法』第 64 条と『破産法司法解釈三』第 8 条に基づき、裁判所 に関連決議の取り消しを請求することができる。

状況 3:債務に担保がある

この場合、債権者は直ちに保証人に保証責任を追及することができる。『民法典』第 687 条によると、人民法院がすでに債務者 破産事件を受理している場合、一般保証人は先に抗弁する権利を有しない。『民法典担保制度解釈』第 23 条によると、裁判所が 破産事件を受理した後、債権者は破産手続きにおいて債権を申告後、訴訟を提起し、保証人に保証責任を追及することができ る。『全国裁判所破産裁判業務会議紀要』第 31 条によると、破産手続終結後、債権者は破産手続における未弁済部分について 保証人に保証責任を負わせる場合、破産手続終結後 6 カ月以内に請求しなければならない。

状況 4:実情に応じて、組織再編の可能性を考慮する

まだ救いの余地がある状態であれば、組織再編という特別な手段も考えられる。債務者は『企業破産法』第 95 条及び第 105 条 に基づき、自主的に組織再編を申請することができる。債権者は『企業破産法』第 70 条に基づき組織再編を直接申請するか、又 は『〈企業破産法〉施行時未結審の企業破産事件の法律適用における若干問題に関する規定』第 1 条に基づき、債務者が破産 清算を申請後、裁判所が破産宣告を行うまでは、組織再編成手続きへの転換を申請することができる。

状況 5:破産配分手続終結後、要求を満たす財産が発見された

この場合、配分費用差引後に残余価値がある場合は、債権者は配分の追加を主張することができる。『企業破産法』第 123 条 によると、破産手続が法により終結した日から 2 年以内に、法定で回収すべき財産が存在することを発見した場合、または明らか に不合理な価格で取引を行う、個別の債権者に対して返済を行う、債務を虚構するなどの悪意のある行為を債務者が行った場 合、または破産者に配分すべきその他の財産があることが発見された場合、債権者は配分の追加を主張することができる。

立法動向

『国務院による法定定年退職年齢の段階的な引き上げに関する実施弁法』が 2025 年 1 月 1 日から実施

2024 年 9 月 13 日、『国務院による法定定年退職年齢の段階的な引き上げに関する実施弁法』(以下『弁法』という)が公布され、

2025 年 1 月 1 日から施行されることになった。その主要な内容は以下の通りである。

1.法定定年退職年齢引き上げの規則

『弁法』第 1 条によると、2025 年 1 月 1 日から、男性従業員及び従来の法定定年退職年齢が満 55 歳の女性従業員は、法定定年 退職年齢を 4 カ月ごとに 1 カ月ずつ延長し、最終的にそれぞれ満 63 歳と満 58 歳まで延長される。従来の法定定年退職年齢が満 50 歳の女性従業員は、法定定年退職年齢を 2 カ月ごとに 1 カ月ずつ延長され、最終的に満 55 歳まで延長される。

同弁法第 8 条によると、特殊職種で、かつ条件を満たす者は早期定年退職を申請することができる。但し、具体的な年齢制限は明 確にされていない。現行の関連規定に従い実行するのか、それとも今後、特殊職種人員の早期定年退職年齢に対して統一的な 規定が加えられるのかは現時点では不明である。

2. 毎月基本養老年金を受領する最低納付期間の延長

『弁法』第 2 条によると、毎月の基本養老年金を受領要件となる従業員の最低納付期間を 2030 年 1 月 1 日から、毎年 6 カ月ずつ 延長し、15 年間から最終的に 20 年間までに引き上げる。従業員が法定定年退職年齢に達しており、最低納付期間に満たない場 合は、規定に従い納付期間を延長する、もしくは一括納付により、最低納付期間を満たし、毎月の基本養老年金を受領することが できる。

3. 柔軟な定年退職の関連規則

『弁法』第 3 条では、柔軟な早期定年退職と柔軟な定年引上げを定めた。具体的には以下の通りである。

(1)最低納付期間に達した従業員は、自主的に柔軟な早期定年退職を選択することができる。早期定年退職期間は最長 3 年と し、かつ定年退職年齢は、女性従業員が満 50 歳、満 55 歳および男性従業員が満 60 歳という従来の法定定年退職年齢を下回っ てはならない。

(2)従業員が法定退職年齢に達しており、雇用者と従業員が協議して合意した場合、柔軟な定年引上げを実施することができ る。引上げ期間は最長 3 年とする。

注目に値するのは、人力資源・社会保障部が 9 月 24 日の国務院新聞弁公室の記者会見で記者の質問に対し、「柔軟な定年退 職について具体的な実施弁法を制定し、柔軟な定年退職の取扱をさらに明確にする」と述べたことだ。

なお、『弁法』では定年退職年齢の引き上げが失業保険金を受領する者に与える影響、及び基礎養老年金の計算基数などにつ いて原則的な規定が加えられた。

弁護士紹介

金燕娟 弁護士/パートナー

8年以上の日系企業での勤務経験を持ち、日系企業の文化、経営管理上の普遍的問題点などについて深い理解を持つ。業務執行においては、それぞれの会社の実情に合わせ、問題となる根本的な原因を見つけ、相応の解決策を導き出すことが得意で、顧客中心リーガルサービスの提供が出来る様、日々取り組んでいる。

その他にも、長年にわたるビジネス実務経験と弁護士業務経験を生かし複雑なビジネス交渉などにおいても特有の技能と優位性を示している。

学歴:華東政法大学出身、民商法学修士号取得。

使用言語:中国語、日本語

主な取扱分野:会社運営の日常業務。複数の業種の企業の法律顧問を長年に渡り、務め、人事、リスク管理などを含む総合的リーガルサービスを提供している。知的財産権分野。企業の法律顧問を長年務めるとともに、営業秘密、特許、商標などに関連する訴訟、非訴訟業務に従事し、特に営業秘密の管理体系及び個別案件の処理については幅広い知識と豊かな実務経験を持っている。
不正競争防止分野。主に「ブランドのタダ乗り」、虚偽宣伝を含む知的財産権に関連する不正競争案件、知的財産権侵害と不正競争との複合紛争案件を処理し、個別案件の実情に基づいた有効な解決策の提示を得意としている

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