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上海ハイウェイス法律相談事例

【法律相談】遅刻を繰り返す従業員をクビにできる?

上海ハイウェイス法律事務所の法律相談事例!連載 ~第67回~

法律物語

遅刻を繰り返す従業員をクビにできる?

2024 年 5 月 12 日、全国労働組合総連合会が発表した記事「98 回遅刻をした従業員が労働関係を解消された。裁判所が下し た判決は使用者による不当解雇?!」が大きな話題となっている。従業員が10カ月の間に 98 回遅刻したため、企業は深刻なな 規律違反にあたるとして従業員を解雇した。しかし、北京市房山区人民法院と北京市第二中級人民法院はいずれも「企業による 不当解雇である」と認定した。

この判決に企業は騒然としている。勤怠管理は重要なので、多くの企業が規則制度において遅刻・早退に関する罰則を定めて いる。冒頭の判決によると、罰則は意味がないのか。そういうわけではない。以下の 3 点を満たしていれば、通常、解雇は認めら れる。

1.遅刻・早退に関する罰則は法に従い民主的手続を経なければならない。遅刻・早退に関する罰則規定は『労働契約法』に規 定されているように企業が一方的に労働契約を解除することができる法定事由ではないため、適用の前提を企業が規則制度に おいて明確に定めておかなければならない。しかしこのような規則制度が法定の民主的手続を経ていなければ、企業の主張を支 持する根拠にならない。

2.遅刻・早退に関する罰則自体に合理性がなければならない。多くの企業が、1 時間以上の遅刻を、半日の無断欠勤とみなす と定めている。しかし、この種の欠勤は実際に出勤しない無断欠勤とは異なり、機械的に加算するべきものではない。例えば、 (2021)滬 01 民終 10769 号事件において、裁判所は「無断欠勤とは、労働者が労働時間中にいかなる休暇手続もせずに欠勤する 行為を指し、本質的に労働者が労働義務を履行していない客観的な事実状態に属する。鈞正会社の規則制度における 1 時間の 遅刻及び早退は半日の無断欠勤、3 時間の遅刻及び早退は 1 日の無断欠勤とみなすという規定は、明らかに客観的な事実と矛 盾し、労働者が当日、正常な労働義務履行時に享有すべき権利を排除するものである。」と指摘した。当該指摘に基づいて、裁 判所は、「企業が機械的に 1 時間以上の遅刻を半日の無断欠勤とみなし、累計 6 日間の無断欠勤として従業員を解雇することは 違法である。」と判断した。

3.個別案件における遅刻・早退に関する罰則の適用の合理性と公平性について

(1)罰則が合理的である場合、個別案件毎の処罰の合理性についても慎重に考慮する必要がある。冒頭の判例のように、従 業員の遅刻回数が多いにもかかわらず、企業が指導も行わずに突然解雇した場合は、不当解雇と認定されるリスクが比較的高 い。指導、警告など必要な措置を講じたが改善が見られない従業員を企業が解雇する場合は、違った結論となる確率が高い。

(2)罰則適用の公平性も重要である。一部の企業は、「規則制度が包括的かつ合理的である限り、実施は状況による。規則制 度は武器のようなもので、いつ使うかは需要次第である。」と考えている。しかし、このように僥倖を期待する考え方は望ましくな い。まじめな勤務態度の従業員に対して不公平であり、また、規則違反した従業員を黙認し、紛争が発生した場合、企業側がか えってハイリスクな立場に置かれることになる。例えば、(2020)北京 02 民終 2263 号事件において、裁判所は「企業は今まで勤怠管理を厳格に行っておらず、勤怠規則に基づく処分も厳格に実行していない。」と指摘し、「企業が勤怠規則に基づき従業員を解 雇するのは不当解雇である。」と認定した。

以上のことから、企業が法に従い勤怠管理及び罰則を制定しているという前提の下、勤怠管理の最終目的を達成するため、 個別案件を処理する際は合理性と公平性に注意するべきである。

実務検討

司法競売の入札に参加する者がいない場合、執行を申し立てた債権者はどうする?

債権者が強制執行を申し立てた後、債務者が不動産、動産またはその他の財産権(例えば、持分)を持っていることが分かった 場合、裁判所は司法競売を行い、競売所得で債権者の債権を弁済することが多い。しかし、司法競売で流札となった場合、執行を 申し立てた債権者(以下「債権者」という)はどうすれば良いのか。物件で借金を返済できるのだろうか?

『人民法院民事執行における財産の競売・換価に関する最高人民法院の規定(2020 改正)』(以下『競売規定』という)の関連規 定によると、司法競売開始後の流れは以下の通りである:

第 1 回目の競売公告が公表された後、債権者は競売に参加することができる。つまり、債権者は競売に参加することによって、 債務者の財産を直接取得することができる。但し、実務において、債権者が競売に参加することはほぼ無い。

第 1 回目の競売において流札となった場合、債権者は競売対象で債務の弁済を求めることができ、物件による債務の弁済額は 競売の留保価格となる。債権者が競売対象による債務の弁済を選択しない場合、流札後 60 日以内に値下げして第 2 回目の競売 を行う。第 2 回目の競売において流札となった場合も、債権者は物件による債務の弁済を行うか否かの選択ができ、物件による債 務の弁済額は値下げ後の留保価格となる。債権者が物件による債務の弁済を選択せず、競売対象が動産である場合、裁判所は 競売対象に対して差し押さえを解除し、債務者に返却する。競売対象が不動産またはその他の財産権である場合、裁判所は 60 日以内に第 3 回目の競売を行う。第 3 回目の競売において流札となり、かつ債権者が当該不動産またはその他の財産権による債 務の弁済を拒否する場合、裁判所は第 3 回目の競売終了日から 7 日以内に換価公告を出す。公告日から 60 日以内に第 3 回目 の競売の留保価格で買い受ける者がおらず、かつ債権者が依然として当該財産により債務の弁済行うという意思表示をしない場 合、原則として裁判所は差し押さえや凍結を解除し、当該財産を債務者に返却する。

上述の「留保価格」を確定する根拠は、『競売規定』第 5 条であり、即ち、「競売財産が評価を受けた場合、評価価格は第 1 回目 の競売の留保価格となり、評価を受けていない場合、留保価格は人民法院が市価を参照して確定する。流札後に再度競売を行う 際は、事情を考慮して保留価格を下げることができるが、毎回の値下げ額は前回の留保価格の 20%を超えてはならない。」

以上のことから、司法競売において流札となった場合、債権者は物件による債務の弁済を選択することができる。第 2 回目の競 売、第 3 回目の競売(不動産とその他の財産)において物件による債務の弁済額は通常、債権者にとってはより有利になる。

しかし、実務において、オンライン司法競売で第 1 回目の競売後、債権者が物件による債務の弁済を申請できるか否かについ ては、意見が一致しない

『人民法院オンライン司法競売の若干問題に関する最高人民法院の規定』(以下『オンライン競売規定』という)第 26 条は、「オン ライン司法競売の入札期間中に入札に参加する者が一人もいない場合、流札となる。流札後 30 日以内に同じオンライン司法競売 プラットフォームにより再度競売を行う。......」と規定している。そのため、「特別法が一般法に優先するという規則に基づき、

オンライン競売の場合に、第 1 回目の流札となった後 30 日以内に再度競売を行うものとし、物件で債務の弁済を行うなどの方式 を取ってはならない。」という意見がある。

判例から見て、司法実務における意見は比較的一致している。基本的には、『オンライン競売規定』では、オンライン競売で流 札となった後に物件による債務の弁済を行うことを定めていないため、『オンライン競売規定』における流札後に物件により債務 の弁済を行うための関連規定を適用することができる」というものである。最高人民法院の直近の関連判例ではいずれもこの意 見を持っている。例えば、(2023)最高法執監 32 号裁定書には、「オンライン司法競売の第 1 回目の競売で流札となり、第 2 回目 の競売で流札となり、換価もできない場合に、執行申立人は、競売により確定した留保価格で競売財産を受け入れて債務の弁済 を申請することができる。」と指摘している。又、(2023)京執復 288 号執行判決書には「第 1 回目の競売で流札となった後、物件に より債務を弁済することは違法ではない。」と明確に指摘している。

立法動向

『インターネット上の不正競争防止に関する暫定規定』が 2024 年 9 月 1 日より施行

中国の現行の『不正競争防止法』第 12 条では、3 つの「インターネット上の不正競争行為」、即ち「トラフィックのハイジャック、悪 意のある妨害、悪意のある非互換性などの行為」について定め、「その他」の条項も設けている。『<中華人民共和国不正競争防止 法>の適用における若干問題に関する最高人民法院の解釈』では第 21 条、22 条において、「トラフィックのハイジャック」及び「悪意 のある妨害」の認定について詳述している。しかし、オンラインビジネスが発展・変化していく中で、上述の規定が、次々と現れる新 しい問題をカバーすることは難しい。

このような背景下で、市場監督管理総局は 2024 年 5 月 11 日に『インターネット上の不正競争防止に関する暫定規定』(以下『規 定』という)を公布し、2024 年 9 月 1 日より施行される。『規定』は計 5 章 43 条で構成され、総則、インターネット上の不正競争行為、 監督検査、法的責任、附則に分かれている。

企業においては、『規定』におけるインターネット上の不正競争行為及びその認定基準が注目に値するポイントだろう。

1、『規定』では、インターネットにおける従来の不正競争行為の新形態を規制している。

種類
規定

混同行為

『規定』第 7 条

• 以下の表示を保護対象範囲とし、近似表示の使用を禁止する。

1一定の影響力を有するドメイン名の主体部分、ウェブサイト名称、ウェブページ等。
『規定』第 7 条
2一定の影響力を有するアプリケーションソフト、オンラインショップ、クライアント、アプレット、公式アカウント、ゲ ームインターフェースなどのページデザイン、名称、アイコン、形状等。
3一定の影響力を有するインターネット別名、インターネット記号、インターネット略語等。 • 下記の混同行為の新規追加:
1他人の商品であるか又は他人と特定のつながりがあるという誤認させることが十分可能な商品を生産販売す る行為。
2他人の一定の影響力を有する商業表示を検索キーワードとして無断で設定し、他人の商品である又は他人と 特定のつながりがあると誤認させることが十分可能な行為。
• 協力混同行為の新規追加:即ち、インターネット上の事業所などの便宜を通じて、他の事業者と共同で混同行為 を実施する行為。

虚偽宣伝

『規定』第 8、9 条

マーケティングに関するインターネット上の虚偽宣伝行為。主要な方法: 1ウェブサイト、クライアント、アプレット及び公式アカウントなどを通じて展示、実演、説明、解説、宣伝又はテキス
ト表示を行う。 2ライブ放送、プラットフォームによる推奨、インターネット上のコピーライティングなどにより商業マーケティング活
動を実施する。 3人気検索ワード、ホットコメント、人気投稿のシェア、ランキングリストなどにより商業マーケティング活動を実施
する。 データ偽造に関するインターネット上の虚偽宣伝行為:
1虚偽の取引又は虚偽のランキング。
2取引額、成約量、予約量など経営に関するデータ情報の捏造。 3架空在庫、架空の予約、虚偽の買い占めなどを使ったマーケティング。 4ユーザーの評価を捏造したり、誤解を招くような展示などで低評価を隠したり、良い評価を前面に出して低評価
を後方に配置したり、異なる商品の評価を明確に区別しない行為。 5キャッシュバック、ラッキーマネー、クーポンなどで、ユーザーが特定の良い評価、「いいね!」、ターゲットを絞っ
た投票などのインタラクティブ行動を行うよう誘導する行為。 6お気に入り追加数、クリック数、フォロー数、「いいね!」の数、閲覧数、購読数、リツイート数などのトラフィックデ
ータの捏造。
7投票数、聴取数、観覧数、再生数、興行収入、視聴率などのインタラクティブデータの捏造。 8進学率、試験合格率、就職率などの教育・訓練効果の捏造。 9口コミの捏造、話題のでっち上げ、虚偽の世論ホットスポットのでっち上げ、インターネット就業者収入の捏造な
どを使ったマーケティイング。


商業上の 中傷

『規定』第 11 条

商業上の中傷行為に当たる範囲を「競争相手の商業的評判又は商品の評判を侵害する恐れがある行為」にまで
拡大している。
3 つの典型的な商業上の中傷行為を列挙している。
①競合相手の商品に対して悪意を持って批評するように、他者に指示する行為。
②インターネットを通じて虚偽又は誤解を招く情報を広めるように、他者を利用し、又は他人に指示する行為。
③インターネットを使用して、虚偽又は誤解を招く情報を含む「リスクアラート」、「顧客通知」、「警告書」、又は「告
発状」を広める行為。
商業上の中傷の共同実施を禁止する規定の新規追加:クライアント、アプレット及び公式アカウントの運営者、並び
に投稿・コメントサービスを提供する組織又は個人は、故意に事業者と共同で前項の行為を行ってはならない。
商業上の 中傷
『規定』第 11 条

2、『規定』では、5 つのインターネット上の新型不正競争行為を規制している。


種類

規定

反向刷単

「反向刷単」とは、ネットショップが悪意を持って電子商取引プラットフォームの刷単禁止罰則を利用して、他の事業者 の取引機会を減らすことを指す。『規定』第 16 条では、下記の反向刷単行為を明確に禁止している。
①他の事業者が 「ライトダウン(検索エンジンが対象のウェブサイトに対して評価を下げること)」、「信用格付けの引き下げ」、「商品の撤去」、「リンクの切断」、「サービスの停止」などの処分を受けるよう、故意に他の事業者と短期間に大規模かつ 高頻度の取引を行ったり、好意的な評価を与えたりする。
②悪意を持って短期間に商品を大量に落札した後、代金の支払いを行わない。
③悪意を持って商品を大量に購入した後、返品又は受け取り拒否をする等。

悪意遮断

悪意遮断とは、ネットショップが技術的手段を用いて、他の事業者のネット販売に影響を与えることを指す。
『規定』第 17 条には、「事業者は、特定の事業者が合法的に提供する情報コンテンツやページを阻止・遮断して はならず、他の事業者が合法的に提供するインターネット商品又はサービスの正常な運用を妨害・破壊したり、 市場における公正な競争の秩序を乱したりしてはならない。」と明確にしている。
※上述の「特定の事業者」を如何に認定するかについては規定では明確にされていない。

二者択一

大手電子商取引プラットフォームがネットショップに「二者択一」を強行させるというやり方は大きな反響を呼ん だ。『規定』第 18 条によると、禁止の対象となる「二者択一」行為は 2 つある。
①技術的手段を用いて、「ユーザー選択への影響」、「トラフィック制限」、「遮断」、「ライトダウン」、「商品撤去」な どの方法で、他の事業者間の正常な取引を妨害する。
②技術的手段を用いて、「取引対象、販売地域・時間帯」、「販売促進活動への参加などを制限することで、他の 事業者の事業選択に影響を与える。
※事業者の市場支配的地位の有無に関わらず、上述の規定は全ての事業者に適用される。


データの不正取得行為

『規定』第 19 条において、「事業者は技術的手段を用いて、他の事業者が合法的に保有するデータを不正に取得・利用したり、他の事業者が合法的に提供するインターネット商品又はサービスの正常な運用を妨害・破壊し
たり、市場における公正な競争の秩序を乱してはならない。」と明確にしている。

差別行為

『規定』第 20 条によると、「技術的手段を用いて、同一条件の取引相手に対して異なる取引条件を不当に提供す る」行為は差別行為に該当し、明確に禁止されている。但し、下記の 3 つの状況は除外する。(1)取引慣習と業 界慣例。(2)新規ユーザーを対象とする合理的な期限内の優遇活動。(3)公平、合理、無差別の規則に基づい て実施するランダム取引。
※事業者の市場支配的地位の有無にかかわらず、当該条項は全ての事業者に適用される。

上記以外に、『規定』では、『不正競争防止法』第 12 条に列挙された行為を「トラフィックハイジャック」、「悪意のある妨害」、 「悪意のある非互換性などの行為」という 3 つの項目に分類し、第 13-15 条、第 21 条において規定を細分化している。
最後に、『規定』第 27 条によると、通報が集中したり、重大な結果やその他の悪影響を起こしたりした場合、実際の事業地、 違法な結果の発生地において区を設けた市レベル以上の地方市場監督管理部門の管轄とすることができる。インターネット取 引プラットフォームに対する苦情はプラットフォームの住所地で行うという従来の要求と比べ、『規定』におけるこの新たな変化に より、事業者は異郷での通報や調査に直面する可能性が出てくる。恐らく迅速かつ効果的な苦情対応及び処理の仕組みを構 築することが今後の重要な課題になるだろう。

弁護士紹介

金燕娟 弁護士/パートナー

8年以上の日系企業での勤務経験を持ち、日系企業の文化、経営管理上の普遍的問題点などについて深い理解を持つ。業務執行においては、それぞれの会社の実情に合わせ、問題となる根本的な原因を見つけ、相応の解決策を導き出すことが得意で、顧客中心リーガルサービスの提供が出来る様、日々取り組んでいる。

その他にも、長年にわたるビジネス実務経験と弁護士業務経験を生かし複雑なビジネス交渉などにおいても特有の技能と優位性を示している。

学歴:華東政法大学出身、民商法学修士号取得。

使用言語:中国語、日本語

主な取扱分野:会社運営の日常業務。複数の業種の企業の法律顧問を長年に渡り、務め、人事、リスク管理などを含む総合的リーガルサービスを提供している。知的財産権分野。企業の法律顧問を長年務めるとともに、営業秘密、特許、商標などに関連する訴訟、非訴訟業務に従事し、特に営業秘密の管理体系及び個別案件の処理については幅広い知識と豊かな実務経験を持っている。
不正競争防止分野。主に「ブランドのタダ乗り」、虚偽宣伝を含む知的財産権に関連する不正競争案件、知的財産権侵害と不正競争との複合紛争案件を処理し、個別案件の実情に基づいた有効な解決策の提示を得意としている

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