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特集 上海ハイウェイス法律相談事例

実習生受け入れに伴うリスクを把握しているか?

上海ハイウェイス法律事務所の法律相談事例!連載 ~第51回~

法律物語

実習生受け入れに伴うリスクを把握しているか?

企業は主に以下の 2 つのメリットから実習生を使用する。コストが低く、賃金を日割りで支払うことができ、社会保険料を支払う 必要がない。さらに、労働契約を締結する必要がなく、柔軟に使用、終了ができる。

しかし、企業は実習生の使用に伴う潜在的なリスクを理解しておかなければ、雇用関係に縛られるだけでなく、労働関係より も大きな経済的代価を支払うことになる可能性がある。これに対して、「そんなはずはない」と驚く HR も必ずいるはずだ。残念な がら、これは大げさな話ではない。

◼ リスク 1: 不適切な取扱いにより、実習は労働関係と認定される可能性がある

元労働部が 1995 年に公布した『〈中華人民共和国労働法〉貫徹執行の若干問題に関する意見』(以下『1995 年意見』という) 第 12 条には、「在校生が余暇を利用して行うアルバイトは、就職とは見なされず、労働関係を確立しないため、労働契約を締結 する必要はない。」と規定している。従って、多くの HR は、「卒業していない場合はいずれも実習に属し、労働関係が存在するは ずがない」の理解に留まっている。

時代の変遷に伴い、司法実務も変わっている。まずは、以下の 2 つの典型的な判例を見てみよう。

2010 年第 6 期『最高人民法院公報』に掲載された「郭氏が Y 社を訴えた労働紛争案件」では、裁判所は、以下のことを理由 に、「郭氏の実習期間内は双方間の労働関係が存在する。」と認定した。①郭氏は満 19 歳で、『労働法』で規定された就業年齢 に達しており、雇用企業と労働関係を構築する行為能力と責任能力を備えていた。②『1995 年意見』第 12 条から、在校生が労 働関係の主体資格を有しないと推定することができない。③郭氏は実習時に全ての課程を修了しており、Y 社に対して就職の希 望を伝え求職登録を行っており、郭氏卒業後に双方は労働契約を締結した。

(2022)京 03 民終 13681 号案件では、裁判所は、「実習期間内の社会保険料の未納を除いて、勤怠管理や賃金支給などは在 職従業員と同じである。就業実習時、双方は労働契約の締結及び労働関係の構築を目的としており、社会保険における一定の 特殊性は存在するが、他の面において正社員とは実質的な区別がない。実習生は学生の身分を有しているが、基本的に全て の課程を修了しており、管理において雇用企業の管理を認めている傾向があり、人格的にも経済的にも明らかに従属性があ り、労働関係の実質に符合しているため、双方間で労働契約関係が構築されていたと認定すべきである」とし、「趙氏卒業前の 実習は労働関係に該当する。」とした。

多くの判例からみて、裁判所は、労働関係に該当するか否かを判断する際、主に下記の要素を考慮している。

第一に、実習の目的。学校で統一的に手配された実習活動の場合は、通常、労働関係と認定されない。『一般大学実習管理 業務の強化?規範化に関する教育部の意見』、『職業学校学生実習管理規定』ではいずれも、「このような実習は教育の一部に 属する」と明確にしている。又、実務において、学校と実習生が協議書を締結する必要があるので、労働関係の構築は認定され

ない。『1995 年意見』でアルバイトは労働関係と認定されないと定められているが、実務においては、協議書において双方はア ルバイトの目的を明確にしておいたほうがよい。企業が個別の実習を受け入れる過程で、実習生が就職の意思を表明し、企 業が受入る意思表示をした、特にその後、労働契約を締結した場合は(上述の 2 つの判例のように)、その他の要素を総合的 に考慮した上で、実習期間中の労働関係が存在すると認定されるリスクが比較的高い。

第二に、実習時に全ての課程を修了しているか否か。これについて、裁判所は通常、実習生に証明を求める((2017)鄂 01 民終 7429 号)。

第三に、賃金報酬の基準及び支払い。主に報酬を支払ったか否か、支払った場合は在職者と同等であるか否かによって判 断する。

第四に、職位及び仕事内容。職責が明確・独立しているもので、勤怠管理などが明らかに労働関係の特徴を示している場 合は、その他の要素と総合的に考慮し、労働関係と認定される可能性が比較的に高い。

従って、HR は以上の面からリスクを考慮し、実習生との関係などを適切に取り扱うべきである。

◼ リスク 2: 安全配慮と権利侵害責任

判例からみて、実習期間内における人身傷害などによる権利侵害紛争は珍しくない。

『企業従業員労災保険試行弁法』では、労災保険に加入している企業で実習中の労災事故が発生した場合は、当地の労災 保険取扱機構が一括で給付することを定めていたが、当該文書は廃止された。現行の労災保険関連規定によると、実習生の 身分というでは、労災保険取扱機構又は雇用企業に労災保険補償の給付を要求することができない。

司法実務において、裁判所の判断で、双方が実習という名目のもと、実際には労働関係に該当すると認定された場合は、 雇用企業が労災保険補償責任を負う。

下記のいずれかの状況に該当する場合は、通常労働関係と認定されない。

(1)学校が実習を手配する場合。『安全生産法』第 28 条第 3 項には、「生産経営企業が中等職業学校、高等学校の学生の 実習を受け入れる場合、実習生に対して相応の安全生産教育と訓練を行い、必要な労働防護用品を提供する。学校は生産 経営企業が行う実習生の安全生産教育と訓練に協力する。」と規定している。従って、状況に応じて、生産経営企業と学校の 責任の負担要否及び割合が判断されるため、それぞれの義務の履行を確認する必要がある。 (2021)粤 13 民終 9757 号案件 では、惠州中級裁判所は、「事故発生時の C の仕事と、W 社から指示された測量・製図の仕事とは関連性があり、事実上 C が 雇用活動に従事する中で人身傷害を受けたと認定すべきである。W 社は C のかつての実習先、事実上の雇用者、直接管理 義務者であるにもかかわらず、安全の注意義務・配慮義務を尽くさなかった。その結果、C は仕事中に人身傷害を負った。W 社は 30%の雇用者の主要な賠償責任を負うべきである。」と判断した。その他の施工企業、学校及び本人も一定の割合で責任 を負う。

(2)企業が個別の実習を受け入れる場合。個別案件では、裁判所は労務関係処理し、実態に応じて企業に対し相応の割合 の責任を求める。

以上のことから、賠償リスクを低減するために、まず、企業はできる限り実習生をリスクの高い職位に配置しないこと、実習 生に対して作業前の安全訓練をしっかりと行うこと。そして、雇用者責任保険などの商業保険において、実習生向けの保障条 項を織り込むことが望ましい。

実務検討

社員食堂を外部業者に委託する際のポイント

実務において、社員食堂を比較的成熟したサプライチェーンシステムと飲食サービス経験のある第三者に委託する会社が多 い。しかし、食堂は食品の安全と従業員の健康に関与し、法令でも特別な制限や要求を設けられているため、関連規定と実務規 則に注意を払わなければ、食品安全事故、行政処分など現実的リスクを引き起こす恐れがある。

社員食堂を外部業者に委託する際の注意点について話そう。

まずは、「資格・経験のある第三者に委託すればいい」という認識を改めること。『食品安全法』(2021 年改正)の第 35 条には、 「国は食品の生産経営に対して許可制度を実施する。食品の生産、食品の販売、飲食サービスに従事するには、法に基づいた 許可を取得しなければならない。」と規定している。『食品経営許可管理弁法』第 9 条第 3 項では、「機関、事業体、社会団体、民 営非企業組織、企業などが内部食堂の設立を申請する場合、機関または事業体の法人登記証、社会団体登記証または営業許 可証などに記載された主体を申請者とする」と規定している。そのため、社内に社員食堂を設置し、集中的に食事を提供する場 合、会社は法に基づき食品経営許可証を取得する必要がある。

会社が食品経営許可証を取得すれば、第三者(請負業者)は食品経営許可証を持っていなくてもいいのではないかという疑問 を抱く人もいるかもしれない。

『食品安全法実施条例』第 28 条には、「学校、保育機構、養老機構、建築工事現場など集中的に食事をとる組織の食堂は、原 料のコントロール、食器・飲料器具の洗浄・消毒、食品サンプルの保存などの制度を設け、食品安全法第 47 条の規定に従い、定 期的に食堂の食品安全の自主検査を行わなければならない。集中給食組織の食堂の経営を請け負う場合は、法に従い食品経 営許可を取得し、食堂の食品安全に責任を負わなければならない。」と規定している。上述の第 28 条に明記された集中給食組織 はいずれも特殊な組織であり、一般の社員食堂を請け負う場合に、食品経営許可の取得が必要であるか否かについては意見が 一致しない。そのため、監督管理部門の実務規則と処分措置を理解しておく必要がある。

実務において、一部の市場監督管理部門は「社員食堂のアウトソーシングを行う場合は、食品経営許可証を申請するために 提供する資料には、請負業者の食品経営許可証も含まれる」ことを明確に定めた。企業が所在する地区の監督管理部門から類 似の要求が出た場合は、関連要求に従って実行する。

企業が所在する地区の監督管理部門から類似の要求が出ていない場合は、企業が食品経営許可証を取得した後、食品経営 許可証を取得していない第三者に委託してもいいのだろうか?

判例によると、結論は以下のとおりとなる。

1、監督管理部門は通常、請負業者の行為が「食品生産経営許可証を取得せずに飲食サービスを提供する」という無免許経 営行為に該当すると認定し、『食品安全法』第 35 条の規定に違反したとして処分を行う。

2、請負業者に処分を行ったからといって、委託者である企業が処分を受けずに済むわけではない。『食品安全法』第 122 条第 2 項の規定によると、前項でいう違法行為(注:食品生産経営許可を取得せずに食品生産経営活動に従事することを含む)に該 当することを知りながらも、生産経営場所またはその他の条件を提供した場合は、県レベル以上の人民政府食品安全監督管理 部門は違法行為の停止を命じ、違法所得の没収、5 万元以上 10 万元以下の過料を併科する。消費者の合法的権益に損害をも たらした場合、食品、食品添加物の生産経営者と連帯して責任を負わなければならない。滬市監青処字(2019)第 292019001364 号処分決定書には、「当事者は社員の食事問題を解決するために経営場所を〇〇に委託し飲食サービスを請け負わせた。経営 管理には関与せず、損益も〇〇が負担する。但し、〇〇は『食品経営許可証』を取得していない。本件において、行政機関は〇

〇のみならず、当事者にも処分を行った。行政機関の判断で、当事者は〇〇が『食品経営許可証』を取得していないことを知り ながらも、〇〇と請負協議書を締結し、〇〇に対して飲食サービスを行うための経営場所を提供したと認定されたからである。」 と指摘した。

以上のことから、社員食堂の外部委託について、以下のポイントに注意すべきである。

第一に、会社は食堂開設のために食品経営許可証を取得するとともに、食堂のアウトソーシングにあたって、請負業者が食 品経営許可証取得済みであることを確認する。請負協議書において、請負業者は上述の資格の持続的な有効性を確保しなけ ればならないことや、違反した場合の責任負担(会社の一方的な解約権、損害賠償などを含む)を明確に約定しておく。

第二に、リスクと責任を低減することを考慮し、事故発生時に、請負業者が食品生産経営活動に従事する主体であると監督 管理部門が認定できるように、請負協議書において、請負業者の食品安全保障責任を詳しく約定しておき、食堂に対する管理・ コントロール能力、義務及び違約/権利侵害責任などを指摘する。

第三に、日常経営において、請負業者に食品安全管理制度の実施を促すと同時に、GB31654-2021『食品安全国家標準 飲 食サービス通用衛生規範』などの規定を参考とし、請負業者の経営活動に対して不定期で抜き取り検査を行い、関連証拠を保 管しておく。

立法動向

⚫ 『企業中長期外債審査登記管理弁法』が 2023 年 2 月 10 日より施行

2023 年 1 月 5 日、国家発展改革委員会は『企業中長期外債審査登記管理弁法』(以下『56 号令』という)を公布し、2023 年 2 月 10 日より施行されることになった。これに伴い、『企業外債発行届出登記制管理改革の推進に関する通知』(発改外資〔2015〕 2044 号、以下『2044 号文』という)は廃止される。以下は『56 号令』と『2044 号文』を対比しながらポイントを簡単に説明する。

1. 外債の定義の細分化

『2044 号文』には、「外債とは、中国国内企業及びそのコントロールを受ける海外企業或いは支部機構が海外から借り入れ た、自国通貨或いは外貨で価格を計算し、約定通りに元金を返済して利息を支払う 1 年期以上の債務ツールを指し、海外債券、 中長期国際商業貸付などを含む。」と規定している。『56 号令』では、「企業」、「コントロール」、「債務ツール」の定義が細分化さ れた。

➢ 「コントロールとは、企業の議決権の半数以上を直接的または間接的に持ち、または議決権の半数以上を持たないが、 企業の経営、財務、人事、技術などの重要事項を支配できることを指す」。

➢ 「債務ツールは、高級債、永久債、資本債、中期手形、転換社債、交換社債、融資賃貸及び商業ローンなどを含むが、こ れらに限定されない」。

2. 届出登記から審査登記への変更

『2044 号文』には、「企業が外債を発行するためには、事前に国家発展改革委員会に届出登記手続の実施を申請する。」と規 定している。『56 号令』では、「企業は外債を借用する場合、本弁法の規定に従外債審査登記などの手続の実施を申請し、関連

情報を報告・公開し、外債使用の最適化、リスク管理をしっかり行い、監督検査に協力する。」と規定している。当該変更からみ ても、外債登記は厳格化している傾向がある。

3. 外債借用の基本条件の追加

『2044 号文』には、「企業が外債を発行するには、以下の基本条件を満たす必要がある。信用が良好で、発行済みの債券また はその他の債務が違約状態にない。良好な会社管理と外債リスク防止メカニズムを有している。信用状況が良好で、高い債務 返済能力がある。」と規定している。『56 号令』では、上述の条件以外に、「企業およびその大株主、実際の支配者には直近 3 年 間に汚職、賄賂、財産横領、財産流用や社会主義市場経済秩序を破壊する刑事犯罪歴が存在せず、または犯罪や重大な法律 規定違反行為の疑いで法により立件調査された状況にない」という条件が一つ追加された。全面的な信用管理時代において、 企業の信用は外債借用を含む各種の経営行為に対して重大な影響を与える。

又、『56 号令』では審査登記(変更登記を含む)の方式、流れ、資料、時限、外債借用中・借用後の監督管理においてもより詳 細に規定が加えられた。

弁護士紹介

金燕娟 弁護士/パートナー

8年以上の日系企業での勤務経験を持ち、日系企業の文化、経営管理上の普遍的問題点などについて深い理解を持つ。業務執行においては、それぞれの会社の実情に合わせ、問題となる根本的な原因を見つけ、相応の解決策を導き出すことが得意で、顧客中心リーガルサービスの提供が出来る様、日々取り組んでいる。

その他にも、長年にわたるビジネス実務経験と弁護士業務経験を生かし複雑なビジネス交渉などにおいても特有の技能と優位性を示している。

学歴:華東政法大学出身、民商法学修士号取得。

使用言語:中国語、日本語

主な取扱分野:会社運営の日常業務。複数の業種の企業の法律顧問を長年に渡り、務め、人事、リスク管理などを含む総合的リーガルサービスを提供している。知的財産権分野。企業の法律顧問を長年務めるとともに、営業秘密、特許、商標などに関連する訴訟、非訴訟業務に従事し、特に営業秘密の管理体系及び個別案件の処理については幅広い知識と豊かな実務経験を持っている。
不正競争防止分野。主に「ブランドのタダ乗り」、虚偽宣伝を含む知的財産権に関連する不正競争案件、知的財産権侵害と不正競争との複合紛争案件を処理し、個別案件の実情に基づいた有効な解決策の提示を得意としている

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