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上海ハイウェイス法律相談事例

債権回収のリスク防止及び対応メカニズム

上海ハイウェイス法律事務所の法律相談事例!連載 ~第47回~

法律物語

債権者代位権の行使について

A は B から借金をしたが、返済することができない。C が A に借金をしていることを知った B は、C に対して直接自分に返済す るよう要求した。これは債権者が債権者代位権を行使する典型的なケースである。『民法典』第 535 条には、債権者代位権の行 使について以下の規定がある。「債務者がその債権又は当該債権と関連する従たる権利の行使を怠り、これによって債権者の 期限到来債権の実現に影響を与えた場合は、債権者は人民法院に対して、債権者自身の名義で、相手方に対する債権者とし ての権利を代位行使する旨を請求することができる。但し、当該権利が債務者自身に専属する場合は除外する。代位権の行使 範囲は、債権者の期限到来債権を限度とする。債権者による代位権行使に必要な費用は、債務者が負担する。相手方は債務 者に対する抗弁がある場合は、債権者にそれを主張することができる。」

従って、代位権は法定権利に該当し、代位権の行使は、債務者又は従たる債務者に同意を得る必要がない。但し、代位権を 行使するときは、上述の『民法典』第 535 条での要件を満たし、即ち「債権が期限到来済み」、「債務者が従たる債務者に対する 債権の行使を怠る」ことを証明する必要がある。

債権者は、債務者が従たる債務者に対して期限到来の債権を有していることを如何に証明するのか?

1、商業秘密保護及び契約相対性に鑑み、債権者が債務者の債権状況を把握するのは難しい。実務において、解決策は主 に 2 つある。その一つは、債務者に協力してもらうこと。具体的には、債務者から従たる債務者へ債権譲渡通知を送達した(実 質的に債権譲渡行為に相当するため)証拠、または従たる債務者に対して債権を有している証拠を提供してもらうことが含まれ る。例えば、(2022)京 02 民終 7638 号事案において、債務者は従たる債務者に対して債権譲渡通知を出し、かつ従たる債務者 は従たる債権額を確認した。そしてもう一つは、一連の契約関係があること。典型的なものは、建設工事施工契約における所有 者、請負業者、下請け業者の関係が挙げられる。例えば、(2022)滬 02 民終 6293 号事案において、孫請け業者は下請け業者を 飛び越え請負業者を訴え、代位権の行使を請求した。最終的に裁判所は孫請け業者の請求を認めた。総じていうと、1 つ目の 解決策は 2 つ目の解決策よりはるかに成功の可能性が高い。但し、1 つ目の解決策を取る場合は、債権者は2つのポイントを把 握しておくべきである。(1)債権譲渡通知のみを唯一の証拠とする場合は、被従たる債務者の抗弁が認められやすい。当該状 況を避けるためには、債務者に従たる債務者向け債権譲渡通知を発行してもらうときに、債権関連証拠(契約書、債権額を確認 するためのその他の文書など)を提供してもらうこと。(2)正式に訴訟を提起するときに、債務者を民事訴訟における第三者とす ること。

2、「債務者が従たる債務者に対する債権の行使を怠る」に該当するか否かついては、理由の如何を問わず、司法実務にお いて「訴訟又は仲裁により、従たる債務者に対して期限到来の債務を主張しない」を判断基準とする。

実務において、代位権の行使にあたって、何度訴訟を行う必要があるのか、即ち、従たる債務者を直接訴えればよいか、そ れとも債務者を訴えた後、従たる債務者を訴える必要があるか?という疑問を債権者が抱えることが多い。

答えは一概には言えない。期限到来の債権が明確で、かつ当事者に異議がない場合は、債権者は従たる債務者のみを訴 え、つまり、訴訟を 1 回提起すればよい。司法実務からみて、期限到来の債権額が決まっているものであれば(例えば、借金)、債 務者が一定の方式で債権額を確認した上で、直接訴訟を起こすと、代位権の行使は通常認められる。多くの判例において、債 権者が主張した期限到来の債権に対して債務者が異議を申し立てたり、又は違約金の有無について意見が一致しなかったりす ることにより、裁判所が「期限到来の債権額が不確定」と判断した場合、審理の上、債権者の請求を棄却する。例えば、(2021)滬 0116 民初 12697 号事案において、債務者が「違約金が存在するので、期限到来の債権額は不確定である」ことを主張した。この ような場合、債権者はまず債務者を訴え、その判決書、調停書又は仲裁裁決書などを「債権が期限到来済み、かつ明確である」 ことを証明し、その後代位権を行使するため従たる債務者を訴える。典型的な判例は (2020)最高法民再 231 号、(2022)滬 02 民 終 6293 号、 (2022)京 02 民終 6005 号等が挙げられる。

実務検討

債権回収のリスク防止及び対応メカニズム

現在の厳しい経済情勢の下、債権回収問題が顕著になっている。企業にとって、債権回収のリスク防止・対応をいかに行う か、いかに効果的に書面に基づく債権を実際に現金化し、迅速かつ最大限の債権回収を実現するかが重要な課題となってい る。

今回は、筆者の実務経験に基づき、企業の債権回収メカニズム構築ためのキーポイントを参考として紹介する。

基本的な考え方としては、債権回収は個別に対応するのではなく、取引前のリスク予断・防止から、取引過程のリスク識別と 把握、リスク発生時の適時かつ正確な対応まで一貫した完全なメカニズムが必要である。その理由は、取引前に、主体の取引 相手及びその契約履行能力に対する認識違いが生じ、又は業績のために盲目的に契約を締結してしまった場合は、債権回収 に失敗するリスクが非常に高い。取引過程で契約の約定を無視し、又は引渡しの証明や署名確認の記録などを保留しておかな いと、債権回収の支障が生じる。債権回収が困難である場合に、直ちに有効な措置を講じなければ、最終的に貸し倒れや不良 貸付になる可能性が高い。

段階に応じて、どのように債権回収のリスク防止・対応を行うか?

取引前に、取引相手の経営状況(経営範囲、業績など)及び信用状況を重点的に把握し、取引相手に係る訴訟の係属状況、 取引相手が強制執行を受けていないか否か、高額消費を制限されていないか否か、信用喪失人員名簿に記入されていないか 否かなどを確かめ、取引相手の経済的な実力、契約履行能力及び商業信用を的確に把握しておくべきである。

その上で、自らの最低取引条件(支払条件、違約責任など)を確定する。交渉において、自らの地位の優劣を踏まえて、有利 な条件を柔軟に勝ち取るよう努力し、かつ契約に織り込む。契約条項の審査については、ここでは分析しない。契約履行段階に おいては、特に証拠の収集及び保存に重視すべきである。例えば、契約書、債務者署名・捺印済みの出荷・引渡し証明、入荷 確認書、約定に重大な変化が生じる場合の補充協議書及び覚書、各種の決済伝票などの証拠。形式は、書面記録、メールやり 取り、チャット履歴、書簡などが含まれる。実務において、企業内の法務部は契約の種類によって、証拠保留が必要なリストを作 成しておくことで、業務部の案内とすることができる。

契約履行過程で、債権回収の実現前に、取引相手の経営状況の変化に注意を払い、回収不能の兆しを感じた時は、相手に 別途担保を提供させるなど、すぐに相応の措置を講じる。有効な措置は、業界特徴及び取引パターンなどを考慮し、債権回収リスクの状況及び大きさによって、相応の対処及び審査許可権限を定める。つまり、どういう状況が発生したときに、どの部門がど のような措置を講じるかを明確にする。企業によって経済状況、業界、取引パターンなどが異なり、具体的な規則には大きな差 異があるため、ここでは分析を展開しない。

最後、注意すべきこととして、債権回収の方式は、通常、催促状、弁護士書簡、保全措置、仲裁申し立て、訴訟、執行申し立 て、破産手続きなどが含まれる。実務において、個別案件毎に、柔軟に一つ又は複数の方式を確定すべきである。例えば、債務 者には保全又は執行の対象となる財産がなければ、当該債務者が第三者に対して期限到来の債権を持っているか否かを把握 するとよい。当該債務者が第三者に対して期限到来の債権を持っている場合、債権者は当該債権に対して保全を申し立てるこ とが考えられる。又、債務者の負債が多いにもかかわらず、市場価値がある場合は、債権者は債務再編、破産再生などにより 最大限の債権回収を実現することが考えられる。

立法動向

『インターネットポップアップメッセージプッシュサービス管理規定』は 2022 年 9 月 30 日より施行

インターネット情報弁公室は市場監督管理総局、工業・情報化部と共同で『インターネットポップアップメッセージプッシュサービ ス管理規定』(以下『ポップアップ規定』という)を公布し、各種のポップアップメッセージ、特に科学アルゴリズムに基づいたポップ アップ広告について特別規定を行った。『ポップアップ規定』は 2022 年 9 月 30 日より施行している。以下の通り主要な内容を分 析する。

1、企業制度の構築に係る要求

『ポップアップ規定』第 2 条及び第 4 条によると、企業はオペレーティングシステム、アプリケーション、ウェブサイトなどを通じ て、ポップアップの形式でインターネットユーザーに対してメッセージプッシュサービスを提供する場合、以下の制度を確立するも のとする。具体的には、メッセージ内容審査、生態管理、データセキュリティ・個人情報保護、未成年者保護などの管理制度を含 む。

2. ポップアップメッセージに係る要求の具体化

『ポップアップ規定』第 5 条では、ポップアップメッセージの合法性・コンプライアンス管理について、下記の 9 つの要求を明確に した。

(1)『ネットワーク情報コンテンツの生態整備規定」に定められた違法情報や不良情報を打ち出してはならない。特に、娯楽・ゴ シップ、スキャンダル・プライバシーに関する者、贅沢三昧・金持ち自慢、醜態を演じるなど、公序良俗に反するコンテンツを悪意 で宣伝してはならず、悪意宣伝のために特定の話題に関連して旧聞を集中的に打ち出してはならない。

(2)インターネットニュース情報サービス許可を取得していない場合、ポップアップでニュース情報を打ち出してはならない。ポ ップアップでプッシュするメッセージがその他のインターネット情報サービスに係わり、法により関係主管部門の審査認可又は相 応の許可を取得する必要がある場合、関係主管部門の審査認可又は相応の許可を取得しなければならない。

(3)ニュース情報を打ち出す場合、国家インターネット情報弁公室が公布した『インターネットニュース情報出所の組織リスト』 に照らして厳格に実施しなければならない。範囲を超えた転載、タイトルの本来の意味と異なるニュース情報コンテンツ、改ざん は禁止されており、ニュース情報出所のトレーサビリティを保証しなければならない。

(4)ポップアッププッシュ情報の多様性を向上させ、ニュース情報と垂直的分野(注:特定の大衆向け特定サービスの提供)の コンテンツの割合を合理的に設定し、積極的かつ健康的な主流価値観を体現しなければならない。社会的パニックを引き起こす 話題・センシティブ事件、悪質事件、災害事故などを集中的に打ち出し、宣伝してはならない。

(5)ポップアップメッセージプッシュコンテンツ管理規範を健全化し、メッセージの選別、編集、プッシュなどのワークフローを完 備し、サービス規模に相応する審査力を整備し、ポップアップメッセージコンテンツの審査を強化する。

(6)ユーザーの権益を保障し、サービス契約など基づきユーザーに対して、ポップアップメッセージプッシュサービスの具体的 な形式、コンテンツの頻度、キャンセルルートなどを明確に告知し、ユーザー体験を十分に考慮し、プッシュ頻度を合理的に計画 する。一般ユーザーと会員ユーザーに対して異なるプッシュアップ広告を打ち出してはならず、形式を問わず、ユーザーがポップ アップを非表示にすることを干渉したり、影響を与えたりしてはならない。ポップアップメッセージは、ポップアップメッセージプッシ ュサービス提供者の身分をはっきりと示す。

(7)ユーザーを夢中にさせたり、過剰消費させたりするなど、法令又は倫理道徳に違反するアルゴリズムモデルを設置しては ならない。アルゴリズムを利用して悪意で情報のブロック、過剰推薦などを実施してはならない。アルゴリズムを利用して未成年 者のユーザーを画像化してはならず、心身の健康に影響を与え得る情報をプッシュしてはならない。

(8)ポップアップで広告情報を打ち出す場合は、識別性を有し、「広告」とオフマークを顕著に表示し、ポップアップ広告がワン クリックでオフになることを確保する。

(9)ポップアップメッセージプッシュにより、悪意のあるドレナージジャンプの第三者リンク、QR コードなどの情報を提示しては ならず、ポップアップメッセージプッシュサービスを通じてユーザーにクリックの誘導をしてはならず、トラフィックの偽造、トラフィッ クのハイジャックを実施してはならない。

弁護士紹介

金燕娟 弁護士/パートナー

8年以上の日系企業での勤務経験を持ち、日系企業の文化、経営管理上の普遍的問題点などについて深い理解を持つ。業務執行においては、それぞれの会社の実情に合わせ、問題となる根本的な原因を見つけ、相応の解決策を導き出すことが得意で、顧客中心リーガルサービスの提供が出来る様、日々取り組んでいる。

その他にも、長年にわたるビジネス実務経験と弁護士業務経験を生かし複雑なビジネス交渉などにおいても特有の技能と優位性を示している。

学歴:華東政法大学出身、民商法学修士号取得。

使用言語:中国語、日本語

主な取扱分野:会社運営の日常業務。複数の業種の企業の法律顧問を長年に渡り、務め、人事、リスク管理などを含む総合的リーガルサービスを提供している。知的財産権分野。企業の法律顧問を長年務めるとともに、営業秘密、特許、商標などに関連する訴訟、非訴訟業務に従事し、特に営業秘密の管理体系及び個別案件の処理については幅広い知識と豊かな実務経験を持っている。
不正競争防止分野。主に「ブランドのタダ乗り」、虚偽宣伝を含む知的財産権に関連する不正競争案件、知的財産権侵害と不正競争との複合紛争案件を処理し、個別案件の実情に基づいた有効な解決策の提示を得意としている

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