
常磐地方の魂を受け継ぐ鍋料理
上海市内にある日本料理店「魚魂 葵 布良瀬」では、この冬11月21日より、茨城県常磐地方の郷土料理「あんこう鍋どぶ汁風」を提供開始。実はこの鍋、同店が2008年に上海に初上陸させて以来の看板メニューであり、今や上海で味わえるこだわりの日本鍋料理として、根強い人気を誇っている。

「どぶ汁」とは何か
「どぶ汁」とは、常磐地方の漁師たちによって受け継がれてきた独自の鍋料理。水揚げされたばかりのあんこうを港でさばき、大鍋で肝と味噌を香ばしく炒め、そこにたっぷりの野菜とあんこうの「七つ道具」(身、肝、えら、胃、皮、卵巣、ひれ)をすべて投入。野菜の水分だけで煮込むという、濃厚ながらも素朴な味わいが特徴の漁師料理だ。
オーナーの想いと開発秘話
同店オーナーは、日本でのサラリーマン時代、釣り帰りに日立や那珂湊の市場でアンコウの肝を購入し、祖母に料理してもらった思い出があるという。2008年に上海で一号店「葵」をオープン後、中国でアンコウの肝が手頃な価格で入手できることを知り、「日本では高級すぎて今や幻となったあんこうどぶ汁を上海で再現したい」という想いから、この鍋の開発を決意。試行錯誤の末、味噌とあんこうの肝をじっくり炒めて作る濃厚な肝ベースを完成させた。
変わらぬ人気、確かな味わい
当時から変わらないお二人様330元という価格設定は決して安くないが、9卓しかない店内の6~8卓をこの鍋が占めるほどの人気ぶり。その味は、日本ではなかなか味わえなくなった本格的な漁師料理の魅力を、余すところなく伝えている。
この冬、上海で味わえる本格日本鍋として、「魚魂 葵 布良瀬」の「あんこう鍋どぶ汁風」は確かな味わいを約束してくれる。日本の食文化に精通したオーナーが情熱を込めて作り上げたこの一品は、日中間の食の架け橋とも言える存在だ。