貧血に加えて、こんな症状もありませんか?
上記のような症状がある人は「血虚」タイプです。
※中医学では「血虚」とは血が足りないということを意味します。
まず、血には下記の二つの大切な働きがあります。
①身体全体に栄養を運び、潤し滋養する働き
②精神活動を調節し、安定させる働き
しかし「血虚」の状態になると、下記のような症状が現れます。
①の働きが弱まり…
・目や皮膚の乾燥、髪の毛が抜ける。爪が破れる。手足の動きが鈍く攣ったり痛んだりし ます。
②の働きが弱まり…
・夢をみる。動悸がし不安になる。驚きやすいなど精神不安定症状が現れます。
漢方の「血虚」タイプ治療
「血虚」タイプの漢方治療では、タイプ別に貧血体質を改善する「根本治療」を目指します。あなたはどのタイプですか?
①胃腸虚弱タイプ
<こんな症状ありませんか?>
・胃の膨満感。便秘と下痢を繰り返す。食欲がなくため息が多いことも。
・胃酸を抑える薬を長期的に服用している。
原因
胃腸の働きが悪いことが原因で、血を生成する成分を消化吸収できないタイプ。
漢方治療
胃腸を養う「健脾」の生薬で胃腸の粘膜の回復を図ります。胃腸を調え、血を生成できる 体質に時間をかけて改善していきます。食事指導も必要になります。
②思考過多タイプ
<こんな症状ありませんか?>
・小さな問題を考えると不安になり眠れなくなる。問題を解決するまで寝れない。
・神経質になりやすく、気持ちにゆとりが持てない。
原因
中医学では「過度の思考」は血を消耗してしまうと考えます。思い悩むことが原因で、血 を消耗してしまうタイプ。
漢方治療
睡眠の質をよくする生薬の配合で、心を調え過度の不安や焦りを緩和させます。減ってし まった血を補う生薬を処方し身体を滋養します。
③慢性の出血タイプ
<こんな症状ありませんか?>
・顔色が蒼白く、または薄黄色。髪が細く抜けやすい。
・日ごろから飲酒習慣がある。
原因
女性では、月経の量が多いことが原因。男性では痔核や慢性の胃炎などの疾患の人も。
漢方治療
まず初めに出血をコントロールする漢方を処方。また慢性的に出血のある人は「気虚」タイプになりやすいので、「人参」生薬を使い、出血しにくい体質に改善していきます。
④偏食栄養不足タイプ
<こんな症状ありませんか?>
・便秘または下痢になりやすい。
・気持ちは焦るが体力が伴わない。緒不安定で、甘いものを過食してしまう。
・めまい立ちくらみがする
原因
出産後の忙しいお母さんに多く見られるタイプです。日々、忙しく不規則な生活が原因。
パン食が多く、ミネラルやタンパク質の摂取が少ないことも原因の1つです。
漢方治療
血を養い、心を整える漢方で調整していきます。気持ちに余裕があれば、食事指導(タンパク質、腸内細菌、ミネラル)を実施し、ゆっくりと食習慣の改善を図ります。
ー貧血の実際の治療例ー
【対象者】
Aさん 37歳 女性
【症状】
Aさんは出産後から疲労感が取れず、授乳中に眩暈立ちくらみがあり、育児に疲れていた。 子供が2歳になり断乳も成功したが、気持ちが更に落ち込むようになり、日中の活動量が 激減。その時期から胃の痛みがあり「逆流性食道炎」と診断され、胃酸を抑える薬を服用 していた。半年が経ち胃の症状に改善は見られるが、「動悸不安感、眩暈耳鳴り、疲労倦 怠感、過食、体重増加」など症状が現れるようになり当院を受診。
【初診時の状態】
顔色は蒼白。浮腫んでいる容貌で、体型は小太り、落ち着いて見えるが不安や猜疑心が混 同している様子。入眠が悪く、夜中に 3 回以上起きてしまう。早朝の疲労感もあり。活動 時や気温の変化で動悸や不安や倦怠感が助長される。体重増加のため減量したいが、甘い ものをコントロールできない状態が続いていた。
【中医学的診察】
問診
問診をしてみると、過食、喉が渇き、尿量も多く頻尿がある。血糖値は正常であるが、鉄 欠乏性貧血であることもわかった。怒りと悲しみが交互に見られ、情緒が不安定、首や肩 の痛み頭痛もある。そして耳鳴りもあり、睡眠の質も悪い状態。月経量が多く不正出血もあるとのこと。
舌診
舌淡紅。やや暗い先が赤い、苔が汚れている
脈診
脈は細く速め
【医師の診察】
出産から2年目で「血虚」の状態であり、食事内容からも栄養バランスが乱れていると判断。舌の状態から五臓の肝心(胃)の「火邪」が強くみられ、それが原因で、自身でコン トロールできない感情や症状が現れると判断する。
【漢方治療】
初めに「養血疏肝」の代表的な漢方を処方し、様子をみることにしました。また、心を穏 やかにするため糖質の摂取を減らしていくプログラムを説明しました。
【治療経過】
1週間後
漢方を服用してから胃痛があり、胃酸が逆流する症状が現れる。夜間も痛みがあり、睡眠の質が悪化していた。問診をすると、以前にピロリ菌の感染既往歴があったため、胃の炎症を治める黄連、蒲公英などの生薬を加味して様子を診ることに。
2週間後
胃酸の逆流は緩和しているが、胃の痛みは未だ改善せず不眠も続いていた。ストレスや「寒邪」も考慮し「吴茱萸」を加味しさらに2週間服用してもらう。
4週間後
胃の痛みは治まり睡眠も安定してきた。疲労感も軽減している。過食になるようになった ので、胃の熱を取る漢方を入れさらに2週間服用してもらう。
6週間後
食事指導を実施後、低タンパク、高糖質の食生活が自分の症状の原因であることが、理解 できるようになったとのこと。胃腸の状態も落ち着いているため「補血」の「阿胶」を加 味し、処方する。
8週間後
不安な感情が減り、動悸耳鳴りも改善。しかしいまだ眩暈があるため、頚椎性の眩暈も考 慮し、理学療法を開始する。
2ヶ月後
自身での食事管理も良好で「過食、喉の渇き、尿量」も安定してきた。気分の変調も軽減され、精神状態も安定がみられる。「補血」を中心にした生薬を1ヶ月分処方し、治療終了となりました。
また、頚部のリハビリと三半規管の調節運動を組み合わせて治療し、眩暈の発作も軽減されています。
【医師からの一言】
このケースの場合、A さんが健康番組を視聴した時、貧血の原因が自分のタンパク質不足 である認識が持てたことは幸いでした。実際、貧血の治療をしていると、偏った食生活を されている方が多いことに気付きます。今、食べているものは、1年後5年後の自分の身 体を形成していくものです。砂糖を減らし、お肉やお魚や大豆などタンパク質を意識した 食生活に切り替えることができれば、貧血の改善も早く、生活のパフォーマンスも向上し ていきます。いままでの食習慣を変えることは容易ではないと思います。しかし、今の食 生活を健康で正しい食事に変えていけば、きっと1年後の自分は、輝くように健康になっ ているはずです。体質改善のために一緒に頑張りましょう。
今回、ご紹介した「貧血改善」は、当院の古川先生が実施しています。
古川裕三先生の診察治療は、黄浦クリニックと虹梅路クリニックで、夜20:00まで受けられます。また、土曜日でも診察治療が可能なので、仕事の後や昼間の忙しさの後でもご 連絡いただけます!貧血の症状や、疲れやすい、気分がすぐれないなどでお悩みの方は是非一度相談にいらしてください。