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特集 上海ハイウェイス法律相談事例

【法律相談】集団減給、どのように実施すればよい?

上海ハイウェイス法律事務所の法律相談事例!連載 ~第69回~

法律物語

集団減給、どのように実施すればよい?

不況という背景の下、「リストラ」や「給与削減」のニュースをよく耳にする。「『労働法』第 47 条では、使用者はその生産経営の 特殊性と経済効率に基づき、法に従い自主的に賃金水準を確定すると定められている。そのため使用者に賃金水準を調整する 経営自主権があることは明らかなようだ。一方、従業員は往々に、「『労働契約法』第 35 条、即ち、労働契約の内容を変更するに は、双方の合意が必要であるということを根拠に、減給する場合は従業員の同意を得なければならないと主張する。どちらの言 い分もそれぞれ一理あるが、どちらの主張を支持するべきだろうか?

減給は個別減給と集団減給に分けられる。従業員個人を対象とする減給方法は 2 つあり、1 つは、前述のように協議し合意に 達した上で減給する方法、もう 1 つは、使用者が法により配置転換を行い、その後、職務に応じて賃金を変更し、合理的な範囲で 適切に減給する方法である。個別減給については今回の検討対象ではないので、詳しい説明は省略する。

従業員全員を対象とする集団減給は、状況に応じて、特定の条件を満たす必要がある。

第一に、集団労働契約において「企業の経済効率の悪化により減給することができる」と約定している場合、約定通りに減給を 実行することができる。

第二に、集団労働契約がない場合、または集団労働契約に関連約定が存在しない場合は、以下の二つの条件を確認し、その 条件を満たす必要がある。

(1)企業が経済効率の悪化、経営難の状況にあるか否か、またその状況がどのくらい続いているか。この点は集団減給の前 提条件である。

しかし、経済効率がどこまで悪化すれば集団減給が可能になるのだろうか。

法令にはこれに関連する規定がないため、整理解雇を参考に考えることができる。

『労働契約法』第 41 条に規定されている整理解雇の条件の一つは、「使用者の生産経営に著しい困難が生じた」である。『<労 働法>若干条文に関する説明』(労弁発【1994】289 号)第 27 条には、「「生産経営に著しい困難が生じた」状況については地方政 府が定めた困難企業基準に従い定義することができる。」と規定している。従って、使用者は上述の規定を参考に、自身の経営 状況と照らし合わせて、「生産経営に著しい困難が生じた」状態にある、もしくは「生産経営に著しい困難が生じた」に近い状態に あるかどうかを判断するとよい。

また、一部の地方においては、整理解雇についての規定がある。例えば、上海市では『当市企業による整理解雇の実施に関 する弁法』を公布し、整理解雇について下記の 2 つの条件を定めている。1企業がすでに労働者の募集を停止している、派遣労 働者を戻す(出向者を帰任させる)、残業の停止、減給などの措置を講じた。2上述措置の実施から半年経過後も赤字で、明ら かに好転が見られない。しかし、上記の規定は 2002 年に廃止され、その後、新しい規定は公布されていない。無錫における『〈企業の整理解雇の実施弁法〉の配布に関する無錫市労働局の通知』は、上海市の上記規定と内容はほぼ同じで、現在も有効で ある。

勿論、経営難の程度について、集団減給の場合は、整理解雇のレベルに達する必要はない。そのため整理解雇における経 営難の関連要求は参考にすることができるが、必ずしも満たす必要はない。また、既存の裁判例を見てみると、殆どの裁判所 が、3 年連続で赤字の財務報告を行った場合に、企業の経済効率が確実に悪化していると認定している。注意が必要なのは、 多くの裁判例から見ても、コスト低減・経営改善のためだけに集団減給を行う場合は、通常認められない(例えば、(2021)滬 01 民終 9999 号)。

(2)民主的な協議及び周知に関する法定手続きを実行すること。『労働契約法』第 4 条によると、企業が労働報酬などの重要 事項を制定、改正または決定する際に、民主的な協議及び周知手続きを行わなければならない。実務において、上述の集団減 給の前提を満たし、かつ民主的な協議及び周知手続きを行った場合は、殆どのケースにおいて、減給の正当性が裁判所により 認められている。しかし、個々のケースによっては、依然として「従業員個人の同意を得ておくべきである」と裁判所が判断してい る(例えば、(2021)京 03 民終 4988 号)。

なお、集団減給をよりよく推進するために、集団減給案を策定する際、使用者は具体的な規則の受容性と合理性を考慮しな ければならない。これには等級・職位によって異なる減給比率を設ける場合の基準及び合理性、減給期間なども含む。

実務検討

債務者が倒産になった場合、債権者はどう対応すべきか? (一)

企業が債務超過で破産手続きに入った場合は、破産管財人が残余財産を分配する。債権者としては、債権を申告して分配を 待つことしかできず、分配された結果も、無いよりはましというごくわずかな程度で、意に適わないケースが多い。

但し、債権の種類、関連債権の訴訟状況などに応じて、より多くの債権を回収するために、自主的により多くの措置を講じるこ ともできる。(注:不動産業界は特別な法的制限を受けるため、この記事では不動産開発企業の破産については検討の対象とし ない。)

まず、関連債権に係る財産が『企業破産事件の審理における若干問題に関する最高人民法院の規定』第 71 条に規定された 「破産財産に属さない」状況に該当するか否かに注意する。第 71 条には、「破産財産に属さない」状況として下記の9つを規定し ている。(1)債務者が倉庫保存、保管、委託加工、委託取引、代理販売、借用、預託、リース等の法律関係に基づいて占有し使 用している他人の財産。(2)抵当物、留置物、質物。但し権利者が優先弁済権を放棄したもの又は被担保債権を優先弁済した後 の剰余部分は除く。(3)担保物の滅失により生じた保険金、補償金、賠償金等の代位物。(4)法律に基づき優先権が存在する財 産。但し権利者が優先弁済権を放棄し、又は特定債権を優先弁済した後の剰余部分は除く。(5)特定物の売買において、占有が 未だ移転されておらず、買主が既にその対価を完納した特定物。(6)財産権証明書又は財産権の名義変更の手続を未だ完了し ていないが、買主に既に交付した財産。(7)債務者が所有権留保売買において所有権を未だ取得していない財産。(8)所有権が 国家に属し、かつ譲渡が禁止されている財産。(9)破産企業の労働組合が所有する財産。

トラブルを未然に防ぐという観点では、債務者の信用性に疑問を抱いたり、経営状況の悪化を発見したりした場合、債権者は 債権回収を保障するため相手方に不動産担保や動産抵当の提供を要求するのが望ましい。

次に、関連債権が訴訟に入っているか否かも債権回収に影響を与える。具体的には下記の状況がある。
1. 債権者が提訴しておらず、債務者が破産手続きに入った。『〈中華人民共和国企業破産法の適用における若干問題に関する最高人民法院の規定(二)』(以下『破産法司法解釈二』という)第 23 条及び『九民紀要』第 110 条の規定によると、裁判所は受 理せず、債権者は破産管財人に債権届出をするものとする。そのため、債務者の経営状況が悪化し、協議の望みがないことが 判明した場合は、速やかに訴訟を提起し、時機を逸することのないよう注意しなければならない。

2. 債権者が訴訟を起こしており、事件が終結する前に債務者が破産手続きに入った。『企業破産法』第 20 条、『破産法司法解 釈二』第 21 条などの関連規定によると、裁判所は民事訴訟案件の審理を中止し、破産管財人が債務者の財産と訴訟事務を受継 した後に訴訟は継続進行する。又、案件の中止及び破産管財人の関与により案件に時間を要することから、『九民紀要』第 110 条では、債権者は、まず破産管財人に連絡して債権届出をすることができ、また、債権者会議において議決権を行使するため に、裁判所に債権額の仮確定を請求することが可能である。当該債権が破産手続において確認された場合は、取り下げを行うこ とができる。確認されない場合、債権者は訴訟手続きを続行することができると規定している。

3. 債権者が提訴して勝訴し、執行段階で債務者が破産手続に入った。『企業破産法』第 19 条、『破産法司法解釈二』第 22 条 の規定によると、裁判所は執行手続きを中止するものとし、債権者は破産管財人に債権届出をしなければならない。但し、この場 合、実務において微妙な 2 つの状況がある。その一つが、裁判所が債務者の銀行口座を凍結しており、代金が裁判所の口座に 振り込まれていない状況。もう一つは、代金が裁判所の口座に振り込まれている状況。関連司法解釈では、当該 2 つの状況下に おいて、相応の代金が破産財産に属するか否かについては定められていない。所有権移転の観点から考えると、代金がまだ債 務者の銀行口座にあり、所有権がまだ移転されていない場合は、破産財産に属する。代金がすでに裁判所の口座に振り込まれ ている場合は、所有権がすでに移転されているため、破産財産には属さず、債権者は返済を得ることができるはずである。

第一に、当事者一方が契約過失による賠償責任の支払いを命じられた場合、双方間の契約は不成立、無効、または取り消しに なり、業務が実際に発生していないため、領収書の発行は行うべきではない。『発票管理方法実施細則』(2024 年版)第 29 条に は、「商品を購入・販売していない、サービスを提供していない、またはサービスを受けていない、その他の経営活動に従事してい ないにもかかわらず、領収書を発行する行為は実際の経営業務状況に一致しない虚偽の領収書発行行為にあたる」と規定してい る。実は、『発票管理方法実施細則』(2019 年版)第 26 条には、「経営業務が発生していない場合は、一律に領収書を発行しては ならない」と明確にしている。但し、支払者側の財務会計の観点から言えば、受領者側に受領書を発行させることはできる。

次に、被告が買い手である場合(通常、その一方的な契約解除により紛争が起こる)、2 つの状況が存在する。1、売り手が全部 又は一部を履行した場合、買い手が別途支払った違約金に対して、売り手が領収書を発行するものとする。『発票管理方法』第 18 条には、「商品を販売、サービスの提供およびその他の経営活動に従事する企業または個人は、対外的に発生した経営業務から 代金を受け取ったときは、受領者が支払者に領収書を発行しなければならない。特別な状況の場合は、支払者から受領者へ領収 書を発行する。」と規定している。『増値税暫定条例』第 5 条には、「納税者が課税販売行為を行った場合、売上高と本条例第 2 条 に規定する税率に基づき、徴収する増値税額を計算し、売上税額とする。......」と規定している。第 6 条には、「売上高は、納税者 による課税対象となる販売行為により購入者から受領した全ての対価と対価以外の費用とする。ただし受領した売上税額を含ま ない。」と規定している。『増値税暫定条例実施細則』第 12 条には、「条例第 6 条第 1 項にいう対価以外の費用とは、代価以外に購 入者から受領する......違約金、延滞金、延払金利、賠償金......を含む」と規定している。このため、違約金は税務処理において代 価以外の費用と定義され、受領者側は支払者側に領収書を発行しなければならない。2、売り手が不履行の場合、実際の経営業 務が発生しないため、契約過失の状況によっては領収書を発行してはいけないが、受領書は発行することができる。

また、被告が売り手であれば、状況に応じた対処が必要である。『企業所得税収入の認識の若干問題に関する国家税務総局の 通知』には、「販売した商品が品質不合格であるなどの理由から企業が販売価格を下げることは販売割引に該当する」と規定している。『発票管理方法実施細則』第 26 条と第 27 条の規定によると、書面領収書または電子領収書が発行された後に販売割引が 発生した場合、売り手は赤字の領収書を発行しなければならない。上述の規定は、製品及びサービスの品質問題に起因する違 約金が対象となる。売り手の納品遅延による違約金など他の違約行為による違約金の場合は、どうなるのか。このような状況に 対する領収書発行根拠はないため、一般的に買い手は受領書を発行する。

全体的に言えば、領収書の発行側は取引の受領側でなければならない。取引以外に発生した違約金については、取引発生前 に契約過失によって生じた違約金であっても、取引発生後に取引対象の品質と直接関係しない違約行為によって生じた違約金で あっても、領収書を発行する法的根拠はない。また、『発票管理方法』第 18 条には、「特別な状況の場合は、支払側が受領側に 領収書を発行する。」と規定している。「特別な状況」に、販売割引以外の事由で売り手が違約金を支払う必要があるという状況 が含まれるのかについては、まだ公式の説明がない。実務上、買い手は領収書を発行せず、受領書を発行するというのが主な税 務機関の観点である。              紙面に限りがあるため、破産手続における様々な特殊状況下での債権者が講じるべき措置については次回紹介する。

立法動向

『<会社法>の時間効力に関する最高人民法院の若干規定』が 2024 年 7 月 1 日より施行

改正『会社法』が 2024 年 7 月 1 日に施行されてから、改正条項の遡及効について、中国最高裁は『<会社法>時間効力の適用に 関する最高人民法院の若干規定』(以下『規定』という)を公布した。『規定』では、原則として旧法に準じるものとする一方、例外的 に 5 つの状況に対して新法を適用することを明確にしている。5 つの状況とは具体的に下記の通りである。

1. 新法の適用が立法目的の達成に有利である場合

会社法施行前に発生した以下の 7 つの状況は新規定の適用を受ける。

1会社の株主総会召集手続が不適切で、会議への参加を通知されていない株主が決議日から 1 年以内に人民法院に取消 を請求した場合
2人民法院の判断で株主総会決議、取締役会決議が成立しないと確認され、会社が当該決議に基づき善意の相手方と構築 した法律関係の効力について紛争が生じた場合
3株主が債権をもって出資し、出資方式によって紛争が生じた場合
4有限責任会社の株主が株主以外の人に持分を譲渡し、持分譲渡によって紛争が生じた場合
5会社が法令に違反して株主に利益を配当し、登録資本を減少させ会社に損失をもたらし、損害賠償責任について紛争が 生じた場合
6利益配当の決議を下し、利益配当の期限について紛争が生じた場合
7会社が登録資本を減少し、株主がそれに応じて出資額または株式数を減少することについて紛争が生じた場合

2. 新法の適用によれば有効と認定される場合

1
会社がその出資先企業の債務について連帯責任を負う旨を約定し、当該約定の効力について紛争が生じた場合
2資本積立金を使用して損失を補うという会社決議が下され、当該決議の効力について紛争が生じた場合
3会社がその株式の 90%以上を保有する他社と合併し、合併決議の効力について紛争が生じた場合

3. 会社に係る契約が履行期間を跨ぐ場合の処理
会社に関する契約が新法施行後まで継続されており、下記の 3 つに該当する場合は新法を適用する。

1上場会社の株式の保有を代行する契約である
2上場会社の持ち株子会社が当該上場会社の株式を取得する契約である
3他人が当社または親会社の株式を取得できるよう、株式会社が贈与、借金、担保及びその他の財務援助を提供する契 約である

4. 旧法に関連規定がない場合

1株主が払込未了の持分を譲渡し、譲受人が期限通りに払込をしない場合における譲渡人、譲受人の出資責任に対する 認定
2有限責任会社の支配株主が株主の権利を濫用し、会社またはその他の株主の利益を著しく害し、その他の株主が会社 に適正な価格での持分買収を要請した場合
3株式会社の株主総会決議に反対票を投じた株主が、会社に適正な価格での持分買収を要請した場合
4会社の取締役を務めていない支配株主、実際の支配者が会社の事務を執行した場合の民事責任に対する認定
5会社の支配株主、実際の支配者が取締役、高級管理職に指示し会社または株主の利益を損なう活動を行わせた場合の 民事責任の認定
6関係当事者の合理的な予想から明らかに外れないその他の状況

5. 旧法では原則的な規定しかなく、新法に詳細な規定がある場合

1株式会社の定款において株式譲渡に制限規定を設けており、この規定によって紛争が生じた場合
2会社の監査役が会社資金の流用などの禁止行為、違法な関連取引、会社のビジネス機会を奪う行為や経営制限を受け る同類業務を実施した場合の賠償責任の認定
3会社の取締役、高級管理職が会社のビジネス機会を不正に獲得し、経営制限を受ける同種の業務を実施した場合の賠 償責任の認定
4関連関係にある主体の範囲及び関連取引の性質に対する認定

6. 清算に関する特別規定

清算が必要となる法律事実が会社法施行前に発生し、清算責任について紛争が生じた場合は、当時の法律、司法解釈の規 定を適用する。清算が必要となる法律事実が会社法施行前に発生したが、その発生日時が会社法施行日まで 15 日未満である 場合は、新法を適用する。清算義務者が清算義務を履行する期限は会社法施行日から改めて起算される。

弁護士紹介

金燕娟 弁護士/パートナー

8年以上の日系企業での勤務経験を持ち、日系企業の文化、経営管理上の普遍的問題点などについて深い理解を持つ。業務執行においては、それぞれの会社の実情に合わせ、問題となる根本的な原因を見つけ、相応の解決策を導き出すことが得意で、顧客中心リーガルサービスの提供が出来る様、日々取り組んでいる。

その他にも、長年にわたるビジネス実務経験と弁護士業務経験を生かし複雑なビジネス交渉などにおいても特有の技能と優位性を示している。

学歴:華東政法大学出身、民商法学修士号取得。

使用言語:中国語、日本語

主な取扱分野:会社運営の日常業務。複数の業種の企業の法律顧問を長年に渡り、務め、人事、リスク管理などを含む総合的リーガルサービスを提供している。知的財産権分野。企業の法律顧問を長年務めるとともに、営業秘密、特許、商標などに関連する訴訟、非訴訟業務に従事し、特に営業秘密の管理体系及び個別案件の処理については幅広い知識と豊かな実務経験を持っている。
不正競争防止分野。主に「ブランドのタダ乗り」、虚偽宣伝を含む知的財産権に関連する不正競争案件、知的財産権侵害と不正競争との複合紛争案件を処理し、個別案件の実情に基づいた有効な解決策の提示を得意としている

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