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上海ハイウェイス法律相談事例

【法律相談】医療期間満了後、従業員が元の業務に従事できない場合、先に配転しなければならないのか

上海ハイウェイス法律事務所の法律相談事例!連載 ~第68回~

法律物語

医療期間満了後、従業員が元の業務に従事できない場合、先に配転しなければならないのか

『労働契約法』第 40 条の規定によると、労働者が医療期間満了後に元の業務に従事できず、使用者が手配した別の業務にも 従事できない場合、使用者は一方的に労働契約を解除し、経済補償金を支払うことができる。この文面から、会社が一方的に労 働契約を解除するためには、下記の 2 つの前提条件を満たす必要であることが分かる。1、従業員が元の業務に従事できない。 2、従業員が使用者によって手配された別の業務に従事できない。

“元の業務に従事できない”というのは、通常、医療期間満了後も引き続き治療が必要で、復職できない状況を指す。『企業従 業員の病気或いは労災外の怪我の医療期間規定』第 7 条によると、医療期間満了後、労働能力の鑑定を行わなければならな い。鑑定により 1 級から 4 級までの判定を受けた労働者は、退職し、労働関係を解消するものとする。同条では、5 級から 10 級ま での判定を受けた労働者はどうするべきかについては定められていない。5 級から 10 級までに判定された労働者は、状況を見な がら、一般的に一定の労働に従事できるからである。そのため、医療期間満了後も引き続き治療が必要で、職場復帰ができない 場合は、“元の業務に従事できず、使用者が手配した別の業務にも従事できない”状況にある見做される。

このような状況を処理する場合、会社は従業員に労働能力鑑定を行うよう通知するとともに、職場復帰するよう通知する。また 通知を行った証拠及び従業員が職場復帰を拒否した、もしくは職場復帰を怠った証拠を残すよう留意しなければならない。

配置転換というと、多くの HR は、「法令で配置転換が定められている以上、手続きを行い、配置転換を行わなければならない」 と考える。実際、立法の目的は、労働者の健康を考慮し、職場復帰後の業務の強度、難易度をできるだけ軽減させることにある。 実務においては、主に関連疾患が再発する恐れのある職位を手配しない(例えば、腰の病気を患っていた従業員に対して腰をか がめる運搬業務を手配しないなど)、もしくは極力、心身ともにリラックスできる職位を手配する(例えば、うつ病から回復したクレ ーム対応部の従業員を他の部署に配置するなど)などの点を考慮すると良い。ほとんどの状況において、これらは必要かつ可能 な配置転換である。

しかし、特殊な状況もある。従業員が従事していた元の業務が会社で最も容易でかつ簡単なものだった場合は、配置転換する 適切な職位がない。このような場合はどうすればいいのか?

立法の目的から、機械的に配置転換を行わなければならないというわけではない。しかし、紛争が発生した場合、従業員が元 の業務が最も容易であるという事実を否定する可能性は高い。裁判所が「元の業務が最も容易だ」という会社の主張を認めるか 否かは不確実である。従って、会社はリスクを最小限に抑えるために、職位の具体的な状況について従業員と十分なコミュニケ ーションをとり、関連証拠を残し、会社は十分な努力を尽くしたという姿勢を示すことに尽力しなければならない。例えば、(2023) 遼 01 民終 10875 号事件において、安全管理員という職位は会社で最も簡単かつ容易な職位である。医療期間満了後、会社は安 全管理員を務める従業員のために業務内容を調整し、業務の強度を下げた。しかし従業員は依然として任務を果たせなかった。 会社は、安全管理員より業務の強度、難易度が低い職位はないと判断し、労働契約を解除した。しかし、一審裁判所、二審裁判所ともに「会社による違法解除」と認定した。注目すべき点は、裁判所は、「会社は従業員のために業務の強度を下げた。従 業員は安全管理員より業務の難易度と強度が低い職位があることを証明する証拠を提供しないことから、会社が別途手配でき、 かつ従業員の体調に合う職位はない。但し、会社は労働契約を解除する前に、職位の具体的な状況について従業員と十分に話 し合い、従業員の意見を十分に聴取した上で労働契約を解除しなければならない。会社が従業員とコミュニケーションを怠り、従 業員に労働契約の解除を通知したことは、病気に罹患した従業員など弱者を十分に保護するという労働契約法の立法本意に合 わない。」と指摘したことだ。「会社は従業員のために業務の強度を下げた。従業員は安全管理員より業務の難易度と強度が低 い職位があることを証明する証拠を提供しないことから、会社が別途手配でき、かつ従業員の体調に合う職位はない。但し、会 社は労働契約を解除する前に、職位の具体的な状況について従業員と十分に話し合い、従業員の意見を十分に聴取した上で 労働契約を解除しなければならない。会社が従業員とコミュニケーションを怠り、従業員に労働契約の解除を通知したことは、病 気に罹患した従業員など弱者を十分に保護するという労働契約法の立法本意に合わない。」と指摘したことだ。

実務検討

判決により取得した違約金に対して、領収書を発行すべきかる?

契約紛争事件において、裁判所が被告側を違約と認定した場合、被告に違約金の支払いを命じることが多い。被告が違約金を 支払った後、原告に領収書の発行を求めた場合、原告は応じなければならないのか?

第一に、当事者一方が契約過失による賠償責任の支払いを命じられた場合、双方間の契約は不成立、無効、または取り消しに なり、業務が実際に発生していないため、領収書の発行は行うべきではない。『発票管理方法実施細則』(2024 年版)第 29 条に は、「商品を購入・販売していない、サービスを提供していない、またはサービスを受けていない、その他の経営活動に従事してい ないにもかかわらず、領収書を発行する行為は実際の経営業務状況に一致しない虚偽の領収書発行行為にあたる」と規定してい る。実は、『発票管理方法実施細則』(2019 年版)第 26 条には、「経営業務が発生していない場合は、一律に領収書を発行しては ならない」と明確にしている。但し、支払者側の財務会計の観点から言えば、受領者側に受領書を発行させることはできる。

次に、被告が買い手である場合(通常、その一方的な契約解除により紛争が起こる)、2 つの状況が存在する。1、売り手が全部 又は一部を履行した場合、買い手が別途支払った違約金に対して、売り手が領収書を発行するものとする。『発票管理方法』第 18 条には、「商品を販売、サービスの提供およびその他の経営活動に従事する企業または個人は、対外的に発生した経営業務から 代金を受け取ったときは、受領者が支払者に領収書を発行しなければならない。特別な状況の場合は、支払者から受領者へ領収 書を発行する。」と規定している。『増値税暫定条例』第 5 条には、「納税者が課税販売行為を行った場合、売上高と本条例第 2 条 に規定する税率に基づき、徴収する増値税額を計算し、売上税額とする。......」と規定している。第 6 条には、「売上高は、納税者 による課税対象となる販売行為により購入者から受領した全ての対価と対価以外の費用とする。ただし受領した売上税額を含ま ない。」と規定している。『増値税暫定条例実施細則』第 12 条には、「条例第 6 条第 1 項にいう対価以外の費用とは、代価以外に購 入者から受領する......違約金、延滞金、延払金利、賠償金......を含む」と規定している。このため、違約金は税務処理において代 価以外の費用と定義され、受領者側は支払者側に領収書を発行しなければならない。2、売り手が不履行の場合、実際の経営業 務が発生しないため、契約過失の状況によっては領収書を発行してはいけないが、受領書は発行することができる。

また、被告が売り手であれば、状況に応じた対処が必要である。『企業所得税収入の認識の若干問題に関する国家税務総局の 通知』には、「販売した商品が品質不合格であるなどの理由から企業が販売価格を下げることは販売割引に該当する」と規定している。『発票管理方法実施細則』第 26 条と第 27 条の規定によると、書面領収書または電子領収書が発行された後に販売割引が 発生した場合、売り手は赤字の領収書を発行しなければならない。上述の規定は、製品及びサービスの品質問題に起因する違 約金が対象となる。売り手の納品遅延による違約金など他の違約行為による違約金の場合は、どうなるのか。このような状況に 対する領収書発行根拠はないため、一般的に買い手は受領書を発行する。

全体的に言えば、領収書の発行側は取引の受領側でなければならない。取引以外に発生した違約金については、取引発生前 に契約過失によって生じた違約金であっても、取引発生後に取引対象の品質と直接関係しない違約行為によって生じた違約金で あっても、領収書を発行する法的根拠はない。また、『発票管理方法』第 18 条には、「特別な状況の場合は、支払側が受領側に 領収書を発行する。」と規定している。「特別な状況」に、販売割引以外の事由で売り手が違約金を支払う必要があるという状況 が含まれるのかについては、まだ公式の説明がない。実務上、買い手は領収書を発行せず、受領書を発行するというのが主な税 務機関の観点である。

立法動向

『<中華人民共和国会社法>における登録資本登記管理制度の実施に関する国務院の規定』が2024年7月1 日より施行

2013 年に改正された『会社法』では、有限責任会社の登録資本金払込引受制度を定めている。但し、実施の過程で、登録資本 金が不当に高い会社が多数出現することになり、取引相手のビジネスリスクを増やしている。これに対し、2023 年 12 月 29 日に改 正された『会社法』では、「登録資本金の払込は会社設立後 5 年以内に完了させる。又、新法施行前に登記・設立した会社で、出 資期限が上述の所定期限を超えている場合、本法の所定期限内に逐次調整すること。具体的な実施方法は国務院が規定する。」 と定めている。

2024 年 7 月 1 日、国務院は『<中華人民共和国会社法>における登録資本登記管理制度の実施に関する国務院の規定』(以下 『規定』という)を公布し、具体的な規則を明確にした。

1、2024 年 6 月 30 日前に登記・設立した有限責任会社であれば、その最大払込引受期限は 2032 年 6 月 30 日までとする。具体 的には、定款に定められた払込引受期限が 2032 年 6 月 30 日以前であれば、定款に定められた払込引受期限に従う。定款に定 められた出資の納付期限が 2032 年 6 月 30 日以降の場合は、会社は定款を改正し、出資期限を 2032 年 6 月 3 日より前に調整す る。

2、2024 年 6 月 30 日前に登記・設立した株式会社は、その払込引受期限は 2027 年 6 月 30 日までとする。有限責任会社と比較 すると、別途 5 年の過渡期間が株式会社にはない。

3、特殊な業界、例えば会社の生産経営が国家利益又は重要な公共利益に係わり、かつ国務院の関係主管部門や省レベルの 人民政府が意見を述べた場合などにおいては、国務院市場監督管理部門は「元の出資期限通りに出資する」ことに同意すること ができる。

『規定』では、これら以外に、会社による払込引受日の変更、法執行検査員の無作為抽出検査、規定通りに出資期限を調整しな かった場合の処罰方式などについても定めている。

弁護士紹介

金燕娟 弁護士/パートナー

8年以上の日系企業での勤務経験を持ち、日系企業の文化、経営管理上の普遍的問題点などについて深い理解を持つ。業務執行においては、それぞれの会社の実情に合わせ、問題となる根本的な原因を見つけ、相応の解決策を導き出すことが得意で、顧客中心リーガルサービスの提供が出来る様、日々取り組んでいる。

その他にも、長年にわたるビジネス実務経験と弁護士業務経験を生かし複雑なビジネス交渉などにおいても特有の技能と優位性を示している。

学歴:華東政法大学出身、民商法学修士号取得。

使用言語:中国語、日本語

主な取扱分野:会社運営の日常業務。複数の業種の企業の法律顧問を長年に渡り、務め、人事、リスク管理などを含む総合的リーガルサービスを提供している。知的財産権分野。企業の法律顧問を長年務めるとともに、営業秘密、特許、商標などに関連する訴訟、非訴訟業務に従事し、特に営業秘密の管理体系及び個別案件の処理については幅広い知識と豊かな実務経験を持っている。
不正競争防止分野。主に「ブランドのタダ乗り」、虚偽宣伝を含む知的財産権に関連する不正競争案件、知的財産権侵害と不正競争との複合紛争案件を処理し、個別案件の実情に基づいた有効な解決策の提示を得意としている

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