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特集 上海ハイウェイス法律相談事例

マイカーを業務使用する際のリスク及び対策

上海ハイウェイス法律事務所の法律相談事例!連載 ~第53回~

法律物語

マイカーを業務使用する際のリスク及び対策

マイカーの業務使用は今やますます一般的になってきている。理由は様々で、コスト削減のために、会社から提案する場合も あれば、通勤と仕事の利便性を両立させるために従業員が自ら提案する場合もある。しかし、マイカーを業務使用する際のリス クに注意を払わなければ、事故が発生した際、会社が損失を被る可能性がある。

下記でははマイカーを業務使用する際の主なリスク及び相応の対策という2つの角度からアドバイスをする。

リスク 1:権利侵害

マイカーを業務に使用している最中に事故が発生し、かつマイカー運転手が責任を負うべき状況の場合、『民法典』第 1191 条 第 1 項の「使用者の従業員が業務上の任務を執行するために他人に損害を与えた場合」の条件に合致すれば、会社は相応の 権利侵害責任を負う。例えば、(2017)蘇 10 民終 2545 号案件において、揚州市中級裁判所は、「H が職務履行中に、マイカーで W に人身損害をもたらしたことは事実である可能性が高い」として、「会社が権利侵害責任を負う」と認定した。

対策:会社はマイカーの業務使用についての規則を制定し、又は従業員と協議書を締結し、「従業員は交通ルールを遵守し て安全に運転する義務がある。従業員がマイカーを業務に使用している際に規則違反に該当する運転操作によって、会社が権 利侵害責任を負う場合、従業員は会社の損失に対して責任を負う」ことを明確に規定/約定しておく。

リスク 2: 保険賠償

マイカー保険の保険料が少額の場合、重大事故が発生した際、保険により損失をカバーすることができない可能性がある。 また、一部の保険契約では賠償について厳しい要求が設定されている場合もある。マイカーの業務使用行為が保険契約の要 求を満たさない場合は、保険金を請求できないというリスクがある。そのため、従業員が責任を負う意思がない、或いは責任能 力がない場合は、会社が巻き込こまれてしまう可能性がある。

対策:会社は保険価額の下限を定める(保険価額の下限額及び会社の経営状況に基づき、必要に応じて保険料の一部を適 切に負担してもよい)。又、会社はマイカーの使用要求を規範化し、関係従業員に加入する保険の条件を遵守させる。例えば、 運転手を限定するか否かなど。

リスク 3:業務使用と個人使用のコストの混同

マイカーには業務使用と個人使用の 2 つの用途がある。業務使用分の会社が負担すべきコストと個人使用分のコストは如何 に区別すればよいのか。(2020)滬 01 民終 5560 号案件において、会社は「従業員の外出申請記録とそこに記載された車両走行 距離手当記録が一致しない箇所が多い」ことを理由に従業員を解雇した。裁判所は、「従業員は記録の不一致について合理的 な説明をすることができる。マイカーの業務使用に関する会社規定が存在せず、会社は領収書を全て審査した上で、走行距離 手当を実費精算している」として、会社を違法解雇と認定した。

対策:会社は規則制度や関連協議書において、業務使用に係るコストと個人使用に係るコストの区分基準を明確にしておく。

例えば、走行距離、用途、使用時間などを事前に登記することで、多方面からマイカーの業務使用を確定する。その上で、走行 距離に応じて手当の基準を確定する。区別することが難しい、又は管理に時間を費やしたくない場合は、月額固定料金を定め、 コストの限度額を明確にすることもできる。

実務検討

権利侵害行為の訴訟時効の計算

権利侵害行為は、侵害対象によって、物権を侵害するもの(例えば、他人の不動産を無断占有する)、商標権を侵害するも の、他人の生命健康権を侵害するものなどがある。継続的な権利侵害行為であるか否かによって、発生後に終了するもの(例 えば、車で人に衝突する)、継続的なもの(例えば、長年にわたって他人の特許権を侵害する商品を製造する)に分けられる。

権利侵害行為の通常訴訟時効はいずれも 3 年なのか?

必ずしもそうではない。

まず、主に以下の状況のような一部の権利侵害行為については訴訟時効が適用されない。つまり、3 年の訴訟時効の制限を 受けないということだ。

(1)『民法典』第 196 条の「(1)侵害の停止、妨害の排除、危険の除去を請求する場合。(2) 不動産物権及び登記された動産 物権の権利者が財産の返還を請求する場合。(3)養育費、扶養費又は扶助費の支払いを請求する場合。」

(2)『民法典』第 995 条の「人格権が侵害を受けた場合、被害者は行為者に民事責任を追求する権利がある。」。被害者は権 利侵害行為者に対して、侵害の停止、妨害の排除、危険の除去、影響の除去、名誉の回復、謝罪などを求める訴訟を起こすこ とができる。このような場合は、訴訟時効の制限を受けることなく、いつでも請求権を主張することができる。

上記以外の権利侵害行為には原則として 3 年の通常訴訟時効が適用される。法律に別途規定がある場合を除き、権利者が 権利の損害及び義務者を知ったか又は知ったと思われる日から計算する。つまり、中国では訴訟時効の起算日は、主観と客観 の結合という原則に従い、客観的に権利が侵害された、主観的に権利者が権利の損害及び具体的な侵害者を知ったか又はか 知ったとされる時からである。

権利が侵害されたことをどう考えるか?以下の角度から分析、判断することができる。

一、権利侵害行為の発生時点又は損害確定時点を権利損害の時点とするのだろうか?通常、権利侵害行為の発生時点は 客観的に権利が損害を受けた時点である。例えば違約行為が発生した場合、権利者は損害を受けたという要件を備えている。 しかし、損害賠償請求権については、損害が確定するまでは、損害賠償の内容が明らかではないため、通常、損害確定時点か ら起算する。(2017)北京 01 民初 94 号判決書において裁判官は、「人身損害事件の訴訟時効の起算点の認定について、被害者 の負傷時点を容易に訴訟時効の起算点とするべきではない。本件において、馮さんが負傷し、治療が一通り終了し、各損失状 況が明らかになってから訴訟時効の起算点を計算するべきである。従って、原告馮さんの提訴は訴訟時効を超えていない。」と 指摘した。

二、継続的な権利侵害行為の起算時点はどのように判断するのだろうか?継続的な権利侵害行為とは、同一の権利客体に 対して継続的に、途切れることなく侵害を行う行為を指す。実務においてよく見られる継続的権利侵害案件には、権利侵害者が 継続的に権利侵害製品を生産・販売すること、継続的に他人の動産又は不動産を不法占有すること、継続的にインターネットな どを通じて他人の人格権を侵害すること、継続的に汚染物質を排出することなどが含まれる。

継続的な権利侵害行為の起算時点については、法律上の明確な規定がないため、司法実務において、観点が異なる。

1 つ目の観点は、権利侵害行為の終了日から計算するというものである。(2019)滬 0115 民初 37458 号判決書において裁判 所は、「被告が長年をかけて天井内に作ったとしても、これは原告がこの期間中に自分の権利を一時的に譲渡したものであるた め、被告が天井内に作ったセメント屋根と換気窓を取り壊し、原状を回復するという原告の訴訟請求は、法的根拠がある。裁判 所は法に基づいて当該請求を認める。」とした。被告は、原告の主張は訴訟時効を超えていると弁解したが、これについて裁判 所は、「継続的権利侵害行為の損害請求権の訴訟時効期間は権利侵害行為の終了日から起算すべきであると考えている。本 件被告の上述の権利侵害行為は現在も継続しているため、原告が今となって提訴しても、訴訟時効を超えているとは言えな い。」と指摘した。(2019)豫 17 民申 138 号の判決書において、裁判官は、「張さんは被申請人の提訴が訴訟時効を超えたと主張 している。これについて、調査したところ、張さんは係争土地を占用しているので、継続的な権利侵害に該当する。訴訟時効はそ の権利侵害行為の終了日から計算するが、被申請人が提訴した時に、張さんは土地を返還していない状態にあるため、被申請 人の提訴が訴訟時効を超えているという張さんの主張は認められない。」と指摘した。

2 つ目の観点は、権利者が権利の損害及び義務者を知った日か又は知ったはずの日から計算するというものである。最高裁 判所は民法典の理解と適用において、「法律では、継続的権利侵害の債務の訴訟時効の起算について、特別な規定を加えて いないため、継続的権利侵害の債務の訴訟時効の起算は『民法典』第 188 条の規定に従うべきである。3 年の訴訟時効を超え た場合、損害賠償額は 3 年前までさかのぼって計算し、過去 3 年を超える損失分は賠償されない。」と指摘した。現時点で、著作 権、商標権、特許権紛争の司法解釈はすべてこの観点を適用している。

3 つ目の観点は、訴訟時効はそれぞれ計算するというもの。権利侵害者の毎日の支払義務が変わるため、段階によって相応 の訴訟時効の起算点を確定するというものである。(2021)粤 01 民終 10310 号の判決書において、本件は継続的な権利侵害行 為に該当し、訴訟時効は権利侵害者の権利侵害終了日から計算し、また『民法総則』第 189 条の規定を適用すべきである(注: 「当事者が同一の債務を分割して履行することを約束した場合、訴訟時効期間は最後の履行期限の到来日から計算する」)た め、その請求した占用料が訴訟時効を超えていないと原告の駿 X 会社の主張に対し、裁判所は、「一般賃貸借契約の取引慣行 によると、賃貸料又は占用料は月毎に支払われるため、徳 X 旅館が毎月支払うべき占用料は異なる債務に属し、それぞれ訴訟 時効を計算すべきである。本件において、駿 X 会社又は元の家屋財産権者と徳 X 旅館は占有費分割払いを約定していないた め、第 189 条の規定を適用し、そのすべての請求はいずれも訴訟時効を超えていないという駿 X 会社の主張は成り立たない」と 指摘した。

実務において、訴訟時効切れか否かの判断は、状況毎に複雑で、不確実性がある。そのため、「法律は権利の上に眠る者を 保護しない」ということわざの通り、権利者は訴訟時効期間の満了により勝訴権の得る機会を失わないように、積極的に早めに 権利を主張するべきである

立法動向

『広告絶対的用語法律執行ガイドラン』が 2023 年 2 月 25 日より施行

絶対的用語とは、通常、『広告法』第 9 条第 3 号に規定された状況を指し、「国家レベル」「最高級」、「最良」及びその意味と同一 又は類似の他の用語を含む。絶対的用語に係る具体的な範囲及び明確な判断基準はないため、行政法律執行において、各地の 市場監督部門によって、絶対的用語に対する認定と裁量は異なることが多い。これに対して、市場監督管理総局は 2023 年 2 月 24 日に『広告絶対的用語法律執行ガイドライン』(以下『ガイドライン』という)を公布した。

『ガイドライン』の第 4 条から第 6 条では、絶対的用語として規制しない状況を定めている。絶対的用語の「セーフティゾーン」と みなしてよい。具体的には 3 つに分類できる。

1. 商品経営者の「自己紹介」

『ガイドライン』第 4 条には、「商品経営者(サービス提供者を含む。以下同様。)がその経営場所、または自ら作成したウェブ サイト上や合法的な使用権を有するその他のメディアで、自分の名称(氏名)、略称、標識、設立日、経営範囲などの情報を公表 し、かつ商品(サービスを含む。以下同様。)を直接又は間接的に売り込んでいない場合は、通常、広告と見做されない。」と規定 している。

但し、同条第 2 項の規定によると、上記の状況下で、絶対的用語を使用しているが、商品経営者がその真実性を証明できず、 消費者の知る権利に影響を与えたり、その他の経営者の合法的権益を損なったりする可能性がある場合は、その他の法令に 基づいて調査・処分される。

2. 商品経営者の売り込む商品を指向していない。

『ガイドライン』第 5 条の規定によると、以下のいずれかの状況に該当し、広告に使用される絶対的用語が商品経営者の宣伝 商品に言及していない場合、『広告法』における絶対的用語の関連規定は適用されない。

①商品経営者のサービス態度又は経営理念、企業文化、主観的な願望のみを表す場合。

②商品経営者の目標と追求のみを表す場合。

③絶対的用語が言及する内容が、広告での宣伝商品の性能、品質と直接な関連性がなく、かつ消費者の誤解を招かないそ の他の状況。

3. 商品経営者の宣伝商品を指向する 6 つの特殊な状況

『ガイドライン』第 6 条の規定によると、以下のいずれかの状況に該当し、広告に使用される絶対的用語は商品経営者の宣伝 商品に言及しているが、消費者の誤解を招いたり、その他の経営者をけなしたりする客観的な結果をもたらさない場合は、『広 告法』における絶対的用語の関連規定を適用されない。

①同じブランド又は同じ企業の商品の自己比較にのみ用いられる場合。

②商品の使用方法、使用時間、保存期限などの注意事項を宣伝するためにのみ用いられる場合。

③国家基準、業界基準、地方基準などによって認定された商品格付け用語に絶対的用語が含まれ、かつ根拠を説明できる 場合。

④商品名称、規格型番、登録商標又は特許に絶対的用語が含まれ、広告では商品名称、規格型番、登録商標又は特許を用 いて商品を特定し、他の商品と区別するための場合。

⑤国家の関連規定によって評定された賞、称号に絶対的用語が含まれる場合。

⑥具体的な時間、地域など条件が限定された状況下で、時空順序の客観的な状況を説明し、または製品の販売量、売上高、 市場占有率などの事実情報を宣伝する場合。

弁護士紹介

金燕娟 弁護士/パートナー

8年以上の日系企業での勤務経験を持ち、日系企業の文化、経営管理上の普遍的問題点などについて深い理解を持つ。業務執行においては、それぞれの会社の実情に合わせ、問題となる根本的な原因を見つけ、相応の解決策を導き出すことが得意で、顧客中心リーガルサービスの提供が出来る様、日々取り組んでいる。

その他にも、長年にわたるビジネス実務経験と弁護士業務経験を生かし複雑なビジネス交渉などにおいても特有の技能と優位性を示している。

学歴:華東政法大学出身、民商法学修士号取得。

使用言語:中国語、日本語

主な取扱分野:会社運営の日常業務。複数の業種の企業の法律顧問を長年に渡り、務め、人事、リスク管理などを含む総合的リーガルサービスを提供している。知的財産権分野。企業の法律顧問を長年務めるとともに、営業秘密、特許、商標などに関連する訴訟、非訴訟業務に従事し、特に営業秘密の管理体系及び個別案件の処理については幅広い知識と豊かな実務経験を持っている。
不正競争防止分野。主に「ブランドのタダ乗り」、虚偽宣伝を含む知的財産権に関連する不正競争案件、知的財産権侵害と不正競争との複合紛争案件を処理し、個別案件の実情に基づいた有効な解決策の提示を得意としている

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