Offcial SNS

上海ハイウェイス法律相談事例

仲間内でのサッカー賭博も違法になるのか?

上海ハイウェイス法律事務所の法律相談事例!連載 ~第50回~

法律物語

仲間内でのサッカー賭博も違法になるのか?

サッカーファンにとって待ちに待った祭典 2022 年カタールワールドカップが開催され、地下鉄、オフィス、レストラン......至ると ころワールドカップの話題で持ちきりとなった。同時にサッカー賭博の話もよく聞くようになった。どのチームが勝つかについて耳 を真っ赤にして言い争ったり、会社内で賭けを組織したりするケースもある。

しかし、スポーツくじを除き、個人で行う賭け、組織的に行う賭け、いずれの賭博行為も違法であり、情状が深刻な場合は、刑 事責任を追及される。

「大袈裟ではないか。賭博場にて正式に賭博をするわけではない。少しの賭け事は気分をよくするし、同僚や友人間の友情を 深めることもできる」と考える方もいるでしょう。

しかし、これは決して大袈裟な話ではなく、法的な根拠がある。

『治安管理処罰法』第 70 条には、「営利目的で賭博の条件を設定する場合、又は掛け金が大きい賭博に参加した場合は、5 日以下の拘留又は 500 元以下の過料に処する。情状が深刻な場合は、10 日以上 15 日以下の拘留に処し、500 元以上 3000 元以下の過料を併科する」と規定している。

「賭け金が大きい」については、省によって基準が異なるが、大部分の地区では「個人の賭け金が 400 元に達する場合は、行 政処分を行うことができる」と定められている。例えば、『一部の治安管理違反行為の処罰に関する上海市公安局の裁量基準』 の規定によると、個人の賭け金が 200 元以上の場合は、「賭け金が大きい賭博に関与した」という状況に該当する。『浙江省公 安機関行政処罰裁量基準』の規定によると、「個人の賭け金が 400 元、又は現場捜査の結果、一人当たりの賭け金が 500 元で ある」、或いは「個人の 1 回の賭博の勝利金や負け金が 20 元、又は 1 回で全体の勝利金や負け金が 200 元以上である」場合 は、「賭け金が大きい」という状況に該当する。従って、少しの賭け事でも、ちょっとしたミスで行政処分を受ける可能性がある。

金額又は関与者数が一定の規模に達した場合は、刑法に触れる可能性もある。『刑法』第 303 条には、「営利目的で、人を集 めて賭博をし、又は賭博を業とする場合は、3 年以下の懲役、拘留又は保護観察に処し、罰金を併科する。賭博場を開設する場 合は、5 年以下の懲役、拘留又は保護観察に処し、罰金を併科する。情状が深刻な場合、5 年以上 10 年以下の懲役に処し、罰 金を併科する。中華人民共和国の公民を募り、海外の賭博に参加させ、その賭金が莫大で、またはその他の深刻な情状がある 場合は、前項の規定に基づいて処罰する。」と規定している。実は「自分は賭博に関与しただけだから、賭博罪にならない」と考 える者は少なくない。しかし、賭博は人の僥倖の心理状態を引き起こし、だんだん収拾がつかなくなり、「負けから立ち直る」ため には、「賭博で賭け続ける」、「汚職で賭博を続ける」という道を選び、大衆を集めた賭博、職務横領、汚職、収賄へと発展してい く可能性がある。例えば、3 人以上を組織して賭博し、これによって獲得した利益が累計 5000 元以上に達し、又は賭け金が累計 5 万元以上に達し、或いは賭博関与者数が累計 20 人以上の場合は、「大衆を集めた賭博」の状況になる。

又、労働管理の角度からみて、サッカー賭博で収監された従業員が解雇されるのはもちろん、サッカー賭博で行政処分を受 け、又は行政拘留により欠勤し、企業の規則制度により「重大な規律違反」と見なされた場合も解雇となる可能性がある。

実務検討

請負契約と売買契約の違いは?

商業活動において、商品供給の契約を締結する際、請負契約に該当するか、それとも売買契約に該当するかについて、通常 当事者双方とも特に気にかけない。

しかし、双方間で紛争が発生し、当事者の一方が訴訟を起こし、訴訟の原因を明確にする必要があるとき、請負契約紛争を 選択するか、それとも売買契約紛争を選択するかによって、訴訟の最終的な処理結果に大きな違いをもたらす可能性がある。そ の理由は、この2つの契約類型は異なるため、当事者の権利義務、立証責任が違い、また契約類型によって管轄権の規定も異 なる(請負契約紛争は主に加工地の管轄を受け、売買契約紛争は主に納品地の管轄を受ける)からである。

当事者はできるだけ、自らの希望に沿った方向で契約条項を設定するために、請負契約と売買契約の区別を理解しておく必 要がある。

以下では最高裁判所の判例及び実務観点から、2 つの契約の区別を整理・分析する。

1.契約締結の目的、主要な義務の違い。『最高人民法院民事案件案由適用要点と請求権規範手引き』(2020)には、「請負 契約と売買契約の区別は、請負契約は一定の仕事の完成を目的とする契約であり、双方当事者の権利義務が指す対象は主に 一定の行為であることに対して、売買契約は所有権の移転を目的とする契約であり、双方当事者の権利義務が指す対象は一 定の物であることだ。」と指摘している。言い換えると、請負契約において、目的物の所有権を移転することは請負人の主要な義 務ではなく、ただ仕事の完成に伴う付随義務に過ぎない。例を挙げてみよう。(2018)最高法民申 3805 号判決書には、「案件に係 る『ビジネス契約』及びその『技術付属ファイル』では、A 社が資料の引渡し、人員の育成訓練、設備のトライ(ディバッグ OR 調 整)及び非生産用建物の設計、生産用建物の設計、生産ラインのすべての設備基礎の土建の設計などの義務を負うことを約定 しているが、A 社の主な給付義務は「技術付属ファイル」の供給範囲で約束された生産ラインの交付にである。当該、主要給付 義務は、『ビジネス契約』が性質上、売買契約に該当することを決定づける」と指摘した。最高裁判所は(2021)最高法民申 5751 号判決書には、「案件に係る契約では、目的物のリスク及び所有権は引渡し時点から甲へ移転される。即ち、約束した時間、約 束した場所で引き渡しが行われるまでの目的物のリスクは乙が負担し、引渡し後の目的物のリスクは甲が負担することを約定し た。双方の権利義務が指す対象は案件に係る設備であり、一定の行為ではない。」と指摘した。

2.目的物の特定性の有無。売買契約の目的物は通常、種類物で、共通性や国や業界の基準がある。請負契約の目的物は 発注者の特別な要求に従い、発注者の需要を満たすために作られたもので、特殊な用途及び特定性がある。通常、発注者にし か使用できず、市場で流通することはない。仮に市場で売買することが可能だとしても、そのあるべき価値を失うことになる。 (2019)最高法民再 383 号案件において、B 社の設備設計?製造の技術が成熟化しており、B 社から A へ販売した設備は、B 社か らその他の会社へ販売した設備の構造と類似性があるので、請負の性質に該当しない。

3. 発注者は製品の製造過程に対して一定の管理を行うことができる。

請負者は発注者の監督検査を受ける義務がある。売買契約の場合はこのような規定がなく、買主は、引き渡された目的物が 品質要求を満たしているか否かを検査するだけで、製品の製造過程で監督検査を行う権利がない。(2019)最高法民再 383 号案 件において、A 社は「案件に係る契約が請負契約である」ことを主張する一方、「A 社から B 社への指令はなく、全て B 社が技術 支援を行っている。A 社は B 社に対して監督義務を負わない。」ことを認めたので、A 社の主張は裁判所に却下された。類似のケ ースは他にもある。最高裁判所は(2021)最高法民申 5751 号及(2019)最高法民申 4300 号判決書において、「請負契約の発注者 は請負人の業務に対して監督、検査、一方的に請負人に仕事を停止させる権利があり、請負業務全体に対して管理を行うこと ができる。」と同様の観点を強調した。

2/4

4.契約代金の性質が異なる。売買契約で約定された代金は目的物自体の価値であり、請負契約で約定された代金は請負人 が特定の仕事成果を出した後に支払われる労働報酬である。(2016)最高法民申 3342 号判決書には、「当事者双方間で締結さ れた「砂利加工契約」という名称、門源砂利場が砂利の加工を行い、契約単価が加工賃であるなどの契約内容などに基づき、 発効判決は本案件を請負契約紛争と確定したことは不適切ではない。」と指摘した。

5.請負契約は「人的要素」がものを言う。請負契約の場合、発注者は請負人の資格能力、技術レベル、設備条件に非常に関 心を持つ。売買契約の場合は、このような要求がなく、買主は主に目的物所有権の取得に関心を持ち、目的物の製造者、製造 条件、製作過程には特に関心を持たない。

6.請負人は留置権と同時履行の抗弁権を有する。請負契約において、発注者が請負人に報酬や材料費などの代金を支払 わない場合、請負人は法に従い出来上がった仕事成果に対して留置権、もしくは引渡しの拒否権を有する。もちろん、この法定 権利は約定によって排除することができる。但し、売買契約において「入金後、納品する」などの約定がない限り、売主は留置権 と同時履行の抗弁権を有しない。

7.最後に、請負人は請け負った仕事に対して秘密保持義務を負う。売買契約の場合は、このような規定がない。

立法動向

『インターネット情報サービス深層合成管理規定』が 2023 年 1 月 10 日より施行

AI 顔交換、画像の切り抜き、アフレコなど、既存の作品をディープフェイクする行為は読者の興味をひくが、その一方で、権利侵 害のリスクを伴う。権利侵害リスクは主に、作品自体に対する著作権侵害、合成対象に対する名誉権侵害、ディープフェイク手段 を利用した詐欺などが含まれる。国家インターネット情報弁公室が工業・情報化部、公安部と共同で 2022 年 11 月 25 日に『インタ ーネット情報サービス深層合成管理規定』(以下『規定』という)を公布し、2023 年 1 月 10 日より施行されることとなった。以下は『規 定』の主要な内容について分析する。

・ディープフェイク技術などの関連用語の定義の明確化

1、ディープフェイク技術とは、ディープラーニング、仮想現実などを利用して合成係アルゴリズムを生成し、テキスト、画像、音

声、ビデオ、仮想シーンなどのネットワーク情報を作成する技術を指す。主に以下の技術を含む。

(1)文章生成、テキストスタイル変換、Q&A 対話などのテキストコンテンツを生成または編集する技術。

(2)テキストから音声への変換、音声変換、音声属性編集などの音声コンテンツを生成または編集する技術。

(3)音楽生成、シーンサウンド編集などの非音声コンテンツを生成または編集する技術。

(4)顔生成、顔置換、人物属性編集、顔操作、姿勢操作などの画像、ビデオコンテンツ中の生体特徴を生成または編集する技 術。

(5)画像生成、画像増強、画像修復など、画像や映像コンテンツにおける非生体特徴を生成または編集する技術。

(6)3次元再構成、デジタルシミュレーションなどのデジタル人物、仮想シーンを生成または編集する技術。

2、ディープフェイクサービスに係る 3 つの主体

(1)ディープフェイクサービスの提供者:ディープフェイクサービスを提供する組織、個人。

(2)ディープフェイクサービス技術の支援者:ディープフェイクサービスに対して技術支援を行う組織、個人。

(3)ディープフェイクサービスの利用者:ディープフェイクサービスを利用して情報を作成、複製、発表、伝播する組織、個人。

3、トレーニングデータ:機械学習モデルを訓練するために使用されるラベル付け又は基準データセットを指す。

4、没入型擬似シーン:ディープフェイク技術を応用して生成又は編集した参加者が体験またはインタラクティブすることができ る高度なリアリティを持つ仮想シーンを指す。

・ディープフェイクサービス提供者に対する明確な要求

『規定』におけるディープフェイクサービス提供者に対する各要求は、『ネットワークセキュリティ法』、『データセキュリティ法』、 『個人情報保護法』における関連サービス提供者に対する要求と一脈相通ずるものである。ディープフェイクサービスの大部分 の利用者は『規定』第六条における 2 つの禁止行為に特に注目すべきである。

(1)ディープフェイクサービスを利用して、法律、行政法規によって禁止された情報を作成、複製、発表、伝播してはならない。

(2)ディープフェイクサービスを利用し、国の安全と利益を害する、国のイメージを損なう、社会の公共利益を侵害する、経済と 社会秩序を乱し、他人の合法的な権益を侵害するなど、法律、行政法規によって禁止された活動に従事してはならない。

弁護士紹介

金燕娟 弁護士/パートナー

8年以上の日系企業での勤務経験を持ち、日系企業の文化、経営管理上の普遍的問題点などについて深い理解を持つ。業務執行においては、それぞれの会社の実情に合わせ、問題となる根本的な原因を見つけ、相応の解決策を導き出すことが得意で、顧客中心リーガルサービスの提供が出来る様、日々取り組んでいる。

その他にも、長年にわたるビジネス実務経験と弁護士業務経験を生かし複雑なビジネス交渉などにおいても特有の技能と優位性を示している。

学歴:華東政法大学出身、民商法学修士号取得。

使用言語:中国語、日本語

主な取扱分野:会社運営の日常業務。複数の業種の企業の法律顧問を長年に渡り、務め、人事、リスク管理などを含む総合的リーガルサービスを提供している。知的財産権分野。企業の法律顧問を長年務めるとともに、営業秘密、特許、商標などに関連する訴訟、非訴訟業務に従事し、特に営業秘密の管理体系及び個別案件の処理については幅広い知識と豊かな実務経験を持っている。
不正競争防止分野。主に「ブランドのタダ乗り」、虚偽宣伝を含む知的財産権に関連する不正競争案件、知的財産権侵害と不正競争との複合紛争案件を処理し、個別案件の実情に基づいた有効な解決策の提示を得意としている

-上海ハイウェイス法律相談事例
-,

  • この記事を書いた人
  • 記事一覧