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上海ハイウェイス法律相談事例

部下がミスを犯したら、上司も巻き添えを食うのか?

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上海ハイウェイス法律事務所の法律相談事例!連載 ~第42回~

法律物語

部下がミスを犯したら、上司も巻き添えを食うのか?

Cが虚偽の費用精算を行い、甲社に解雇された。その後、Cの上司だった H も「管理職としての職務を怠慢し、会社に損失を もたらした」という理由で首になった。H は「Cは故意に欺瞞していた。自分も騙され、無実の罪を着せられた。「連座制」による解雇処分は不公平である。」と主張した。

本件は前号の「解雇された会計主管」のケースと類似点があるものの、相違点もある。このケースにおいて、問題の根源は会計主管が伝票審査の職責を果たさなかったことにある。本件において、H は、「費用精算を審査する責任者は財務部署であり、 直属の上司ではない。自分は一定の審査義務を負うが、解雇のような厳しい処分を受けるべきではない」と主張する可能性もあ る。

従って、本件を分析するにあたり、『労働契約法』第 39 条第 3 項の「重大な損害」を除き、部下の著しい紀律違反行為に対す る上司の監督管理が「著しい職務上の怠慢」に該当するか否かを主に検討する必要がある。「重大な損害」の程度に達してお り、かつ上司が監督管理において「著しい職務怠慢」に該当する場合にのみ、解雇処分を考慮することができる。

実務において、企業は以下のポイントに注意すると良い。

まずは、多くの判決からみて、裁判所は審査にあたり、1管理職相応の管理職責の有無、及び2社内規定の適法性に重点 を置く。

①については、企業は管理職の管理職責を明文化するべきである。具体的には職責、承認権限、管理フロー、特定業務のマ ニュアル、就業規則などにおいて管理職の職責を定めることができる。

②については、企業は所定手続に従うべきである。従業員全員に適用する就業規則に対して民主的協議及び公示を行う必 要があることは周知のとおりだが、実は、それ以外に、職責、承認権限、管理フロー、特定業務のマニュアルなど、特定の部署 や職場に適用する規定に対して、一定の手続を行う必要もある。特定の文書に対して民主的協議を行う必要性は議論の余地 があるが、公示又は通知を行うことが不可欠であることは明らかだ。従業員はまず「関連規定の存在を知らない」ことを理由に 抗弁することが多い。この場合、企業が「公示済み又は通知済み」の証明ができなければ、間違いなく敗訴となる。従って、公示 又は通知を行わないことは企業敗訴の要因となると看做される。

次に、民事訴訟において基本的な立証原則は「主張する者がその証明責任を負う」である。部下の違法行為や不法行為に対 して、管理職が監督管理において重大な職務怠慢に該当すると認定するには、相応の証拠がなければならない。(2016)蘇 01 民 終字 1278 号案件において、裁判所は、「会社は、部下が金さんに対して、会議、医者訪問、講演費支給などで、医師に製品使 用を促し、販売量を増やす提案をメールで送ったことが判明した。しかし、『行為と道徳基準』違反の行為が確認されていない場 合、会社が労働契約を直接解除したことは違法になる。」と判定した。従って、会社が管理職に処分を下すには、部下が確実に ミスを犯したことの証拠など、全ての証拠が揃っていなければならない。

最後、複数の管理職がいる場合に、誰を処分するか、各管理職に対してどのような処分を行うかも注意しなければならない。 従業員が重大なミスを犯した場合、社長は怒りがこみ上げ、つい特定の管理職に怒りの矛先をむけることが多い。 (2019)閩 0203 民初 12581 号案件において、裁判所は、「中級管理職の L のみを解雇し、より大きな管理責任、相当の管理責任、直接責 任を負う者に対して軽微な処分を行い、又は処分を行わないことは、道理に合わない。」と判定した。従って、個別の案件におい て、事件の各要素を考慮し、管理職に対してその職責、職務怠慢の程度に相応しい処分を理性的かつ合理的に課すべきである。

実務検討

被告が株主、法定代表者を変更した場合は、原告は勝訴してもお手上げとなるのか?

Y社が借金を返済しないため、T社はやむを得ず Y 社を訴えた。Y社の株主である陳さんは出資金 30 万元の払込を引 き受けたが、実際に払い込んではいない。訴訟手続中に、陳さんはその保有するY社の持分を H 社に譲渡した。判決が 下された後、Y 社は履行を拒否したため、T社は強制執行を申し立てた。しかしその後、執行の対象となる Y 社名義の財 産がなく、かつ H 社も多額の負債を抱え、信用喪失人員となっていることに気づいた。T 社の勝訴判決は一枚の反故に 成り果てるしかないのか?

実はT社は手の施しようがないわけではない。

『民事執行における当事者の変更・追加の若干問題に関する最高人民法院の規定』第 19 条には、「執行債務者である 会社が債務超過により、財産をもって法律文書で確定された債務を弁済できず、その株主が法に従い出資義務を履行せ ずに持分を譲渡した場合、執行申立者が、元株主又は会社法の規定に従い出資に連帯責任を負う発起人を執行債務者と し、未出資の範囲内で責任を負わせるように変更・追加を申し立てる場合は、人民法院は当該請求を認める。」と規定し ている。当該規定により、本件において株主の陳さんが法の下で出資義務を履行せずに持分を譲渡したtあめ、T 社は 陳さんを執行債務者として追加することの申し立てができると言える。

しかし実務規則はそう簡単にはいかない。2 つの判例を挙げてみよう。(2021)京 02 民終 10256 号判決において、北京 第二中級法院は、「払込を満了日以前に、元株主は持分を譲渡した。会社株主の出資期間の利益は法により保護を受ける。 元株主が出資期限到来前に持分を譲渡することは、法に従い出資義務を履行しない状況に該当しないため、元株主を執 行債務者として追加することができない。」と認定した。(2022)蘇 02 執異 1 号案件において、無錫中級法院は、「執行 過程で第三者を執行債務者として追加することは、法律文書に対する既判力拡張に該当し、追加される者の実体的権利 に係わる。執行に関する法律、司法解釈の規定に従い、相応の法定要件を満たしているか否かを厳格に審査するべきで ある。元株主が持分を譲渡するときに、払込を受ける期限が到来しておらず、かつ債務も発生していないため、元株主 を執行債務者として追加することは法令に合致しない。」と指摘した。

以下の 2 つの状況では、元株主を執行債務者として直接追加する方法は認められない可能性がある。1、所定の出資払 込期限が到来していない場合、通常、株主が「法に従い出資義務を履行する」時期になっていないと看做される。2、元 株主が持分を譲渡するときに、債務が発生していない場合は、通常、債務は元株主と無関係だと看做される。

本件においては、結果T社の「元株主の陳さんを執行債務者として追加する」という請求は裁判所に認められた ( (2021)粤 01 民終 27553 号)。T社とY社の債務紛争は、陳さんの持分譲渡前に既に発生しており、訴訟にまで及んだ。

陳さんは、Y社が債務を弁済しておらず、かつ執行を別途申し立てられたことを知っている、又は知っているべきで あるにもかかわらず、出資を払い込んでいない状況下で、持分を弁済能力を有しない H 社に譲渡し、これによって、Y A社は債務を弁済できなくなった。裁判所は、「陳さんは持分譲渡前に払込を受けた出資を実際に払い込み、Y 社の債務に 対して未出資の責任を負うべきである。」と認定した。従って、執行申立者は、元株主が悪意をもって結託し、譲渡を行 い、故意に重要な事実を隠し、株主の出資期限を濫用し、不実の出資を行ったことなどを証明できる場合、元株主に対 して、持分譲渡前に払込を受けた出資を実際に払い込むよう要求することができる。また、元株主も相応の責任を負う べきである。

実務において、被告の法定代表者は敗訴になり高額消費制限対象者名簿に記載されないように、訴訟において法定代 表者を変更するケースも少なくない。

司法機関の観点は統一的である。最高人民法院(2017)最高法執复 73 号には、「被告会社は執行根拠が確定された後、 立件され執行される前に、法定代表者を変更した場合、裁判所の執行手続の推進を保証し、債権者の合法的な権益を保 護するために、元法定代表者を主要な責任者と認定し、依然として元法定代表者に対して高額消費制限などの措置を講 じることができる。」と指摘されている。一部の地方司法機関も明文化しており、例えば、江蘇高級裁判所 2018 年公布 の『会社を執行債務者とする案件にする財産調査の強化に関する通知』には、「本件債務が発生する時点での法定代表者 は裁判所にて財産調査を受けなければならない。」と規定されている。従って、通常、裁判所は、債務発生時点での法定 代表者の状況を厳格に審査し、法定代表者変更の正当性を判断する。言い換えると、被告にとって、訴訟において法定 代表者を変更する行為は、実際に役に立たない。

原告にとって、もう一つ考えられる予防措置がある。『民事訴訟法』第 103 条第 1 項には、「人民法院は、当事者の一 方の行為又はその他の事由によって、判決が執行困難となり、又は当事者に対してその他の損害をもたらす事件に対し て、相手方当事者の申立に基づいて、財産保全の裁定を下し、特定の行為を命令又は禁止することができる。...」と規 定している。従って、原告は訴訟において、必要に応じて被告による法定代表者の変更を禁止する旨の行為保全命令を 申し立てることができる。但し、この場合は、原告は必要かつ十分な証拠の提出を求められる。

立法動向

『〈中華人民共和国民事訴訟法〉の適用に関する最高人民法院の解釈』の改正に関する最高人民法院の決 定(2022)は 2022 年 4 月 10 日より施行

2021 年 12 月 24 日『中華人民共和国民事訴訟法』改正案について、最高人民法院は 2022 年 4 月 1 日に『〈中華人民共和国民 事訴訟法〉の適用に関する最高人民法院の解釈』(以下『民事訴訟法解釈 2022 版』という)を公布し、2022 年 4 月 10 日より施行す ることになった。、『民事訴訟法解釈 2022 版』では 2020 年版から 13 条項が改正され、2 つの条項が削除された。

企業に係わる条項を以下の通りまとめる。

1、簡易手続延長後、累計4か月を超えてはならない。

『民事訴訟法解釈 2022 版』第 258 条には、「簡易手続を適用して審理する案件は、......簡易手続延長後の審理期限は累計4か 月を超えてはならない。......」と規定している。2020 年版より、簡易手続の延長による累計審理期限が累計 6 か月から4か月に短 縮された。

2、簡易手続および少額訴訟手続に係る異議申立の審理結果に対して口頭で裁定を下すことができる。

2020 年版第 269 条と第 281 条の規定によると、当事者が簡易手続に対して異議申立を行い、又は少額訴訟当事者が審理手 続に対して異議申立を行うとき、異議申立が成立しない場合にのみ、口頭で裁定を下すことができ、調書に記録される。『民事訴 訟法解釈 2022 版』の規定では、口頭方式は、異議申立が成立し、一般手続に変更される裁定にも適用される。

3、民間調停について

(1)『民事訴訟法解釈 2022 版』第 61 条には、「当事者間の紛争が人民調停委員会又は法により設立したその他の調停組織 による調停を経て、合意に至って調停協議書を締結した後、一方の当事者が調停協議書を履行せず、相手の当事者が人民法 院に対して訴訟を提起した場合は、調停協議書を履行しない当事者を被告とする。」と規定している。2020 年版から『民事訴訟 法解釈 2022 版』では、調停主体において、人民調停委員会以外で法により設立したその他の調停組織を追加した。

(2)『民事訴訟法解釈 2022 版』第 354 条には、「調停組織が自ら行う調停において、2 つ以上の調停組織が関与し、民事訴訟 法第 201 条の規定に合致する場合は、各調停組織所在地の人民法院はいずれも管轄権を有する。双方当事者は、民事訴訟法 第 201 条に合致しかつ管轄権を有する人民法院に対して共同で申請することができる。双方当事者が 2 つ以上の管轄権を有す る人民法院に対して共同で申請する場合は、先行して立件した人民法院が管轄する。」と規定している。2020 年版と比べ、『民 事訴訟法解釈 2022 版』では、下部人民法院を人民法院に変更し、民間調停に対して管轄権を有する裁判所レベルを、普通の 民事・商事紛争に対して管轄権を有する裁判所レベルと一致させた。


弁護士紹介

金燕娟 弁護士/パートナー

8年以上の日系企業での勤務経験を持ち、日系企業の文化、経営管理上の普遍的問題点などについて深い理解を持つ。業務執行においては、それぞれの会社の実情に合わせ、問題となる根本的な原因を見つけ、相応の解決策を導き出すことが得意で、顧客中心リーガルサービスの提供が出来る様、日々取り組んでいる。

その他にも、長年にわたるビジネス実務経験と弁護士業務経験を生かし複雑なビジネス交渉などにおいても特有の技能と優位性を示している。

学歴:華東政法大学出身、民商法学修士号取得。

使用言語:中国語、日本語

主な取扱分野:会社運営の日常業務。複数の業種の企業の法律顧問を長年に渡り、務め、人事、リスク管理などを含む総合的リーガルサービスを提供している。知的財産権分野。企業の法律顧問を長年務めるとともに、営業秘密、特許、商標などに関連する訴訟、非訴訟業務に従事し、特に営業秘密の管理体系及び個別案件の処理については幅広い知識と豊かな実務経験を持っている。
不正競争防止分野。主に「ブランドのタダ乗り」、虚偽宣伝を含む知的財産権に関連する不正競争案件、知的財産権侵害と不正競争との複合紛争案件を処理し、個別案件の実情に基づいた有効な解決策の提示を得意としている

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