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上海ハイウェイス法律相談事例

コロナウイルス感染防止に関連の会社規定に違反した従業員を解雇できる?

上海ハイウェイス法律事務所の法律相談事例!連載 ~第48回~

法律物語

コロナウイルス感染防止に関連の会社規定に違反した従業員を解雇できる?

第 100 期の『法律記事スクラップ』では、防疫のために従業員の春節帰省を禁止できるかについて検討した。その時の結論 は、地方政府が区域封鎖管理などの防疫措置を講じていない場合、企業は従業員の帰省を強制的に禁止することはできない が、休暇管理及び宣伝教育など柔軟な管理手段を通じて、従業員の決定に影響を与えることができるというものだった。

しかし、従業員が私用で他の地域を訪れ、コロナの流行に巻き込まれたら、少なくとも数日間の自宅隔離や 1 週間以上集中隔 離を命じられ、さらにその同僚らも濃厚接触者又は副次的な濃厚接触者となり、同時隔離を命じられることとなる可能性もある。3 年間にも亘りコロナの影響を受け、厳しい状況にある企業にとっては、間違いなく泣きっ面に蜂となる。コロナ禍において関連リス クを低減させるため、多くの企業が、法令に違反しない、確実で効果的な規定の制定を模索している。

まずは、一つの面白い判例を見てみよう。

2020 年 3 月 20 日、孫さんはスーツケースを持って出勤し、上司に「三亜へ旅行に行く」と伝えた。「この時期に他地域へ行くこと は(移動することは)自粛するべきだ」という上司の忠告を受け、孫さんは「周辺のドライブ旅行に変更する」と返事した。同日午 後、会社は社内チャットで、従業員全員に対して「疫病予防コントロール期間中に上海を離れるには届出を行う必要がある。出国 禁止、特殊な事由で出国する必要がある場合は許可を取得しなければならない。上記の規定に違反した場合一律に契約を解除 する。」と通知した。その後、会社は孫さんが結局三亜に行っていたことを発見し、一方的に労働契約を解除した。そして、孫さん は仲裁を申し立てた。労働仲裁委員会、裁判所は共に、会社による解雇の正当性を認めた(詳細は(2020)滬 0110 民初 12076 号 を参照)。

類似の裁判例は珍しくない。企業が防疫規定を制定すること自体は違法ではないのの、防疫規定の制定・実施においては下 記の 2 つの点に注意を払うべきである。

まずは、企業の防疫規定は「全て同一扱い」にしてはいけない。届出規則の設定方法に重点を置くべきである。企業は従業員 の生活とその自由を干渉する権利はないが、疫病予防・コントロール及び企業の経営管理の観点から、適時措置を講じるため、 従業員に対して、「都市間を移動する場合は、事前に報告する」こと等を要求することができる。そして従業員のスケジュールを把 握し、疫病の拡散を防止する。例えば、他市への移動について届け出を行った従業員が、目的地到着後にそこが「中高リスクエ リア」になった場合に、企業は当該状況を事前に把握することができるため、直ちに従業員に対して自宅隔離を行わせることがで きる。こうすることで、後日「中高リスクエリア」滞在履歴が判明した際に被る同僚への影響を避けることができる。又、届出規則 がある場合に、従業員の届出により、目的地が高リスクエリアに該当することを発見した際は、状況に応じて上司、人事部門が 従業員に都市間移動計画の放棄や調整を勧めることができる。

次に、私用による都市間移動に対しては自ら責任を負わせること。一部の企業は、「従業員が私用で都市間の移動を申請した 後、疫病が発生し、従業員が隔離命令を受け出勤できない場合、企業はリモートワークを手配する権利がある。リモートワークの 必要がない、又はそれを手配できない場合、企業は私用休暇として取り扱い、その期間の給料を支払う必要がない。」ことを定め

ている。上述の規定は一定の合理性がある。従業員は私用による都市間移動に対して選択権があり、「動的ゼロコロナ」政策下 で、隔離となる可能性も予想できるはずであるため、企業に従業員の自主的な選択に対して責任を負わせるべきではない。「当 地に留まっても疫病が発生する。なぜ都市間移動を差別化をするのか」と反論する人もいるかもしれない。しかし、答えは簡単で ある。当地に留まっている場合は、疫病により隔離命令は従業員の自主的な選択によるものではないからである。

最後に、企業が防疫規定を制定する根本的な目的は、従業員が規則を遵守するよう導き、これによってウィンウィンの関係を 実現することである。従って、規定実施後、宣伝教育を主とし、個別処分は副次的なものにすることを提案する。

実務検討

交通事故による車両価値下落の損失についての賠償請求はできるか?

李さんの車が追い越し時に 1 か月前に購入したばかりの王さんの新車に追突した。最終的に交通警察は「李さんに全責任が ある」と認定した。王さんの新車は 4S 店で修理されたが、重大な損傷を受けたため、車両の価値が大幅に下落した。保険会社 の賠償範囲は車両価値の下落による損失をカバーしていない。では、王さんは李さんに当該損失を賠償させることができるか?

現行の法律法規は、車両価値の下落による損失を財産損失の賠償範囲に入れていない。最高裁判所は 2016 年の『「交通事 故車両価値下落による損害賠償の提案」に対する返答」において、「原則として車両価値下落による損害賠償の請求を認める傾 向はない」という観点を示した。その主な理由は以下の通りである。一、損益が相殺されるか否かには疑問がある。例えば、修 理における部品交換により割増金が発生する可能性がある。2、中国道路交通の実況を踏まえて、車両価値の下落による損失 を賠償することは、道路交通関与者の負担を重くし、社会経済の発展にも不利利益をもたらす。3、車両価値の下落による損失 の確定が科学的でない場合は、公正を損なう。現時点で中国の鑑定市場はまだ規範化されていないため、鑑定機構は車両価 値の下落による損失の確定に利益を図るための大きな任意性がある。車両価値の下落による損失の確定が科学的でないこと により、実質的に不公正をもたらし、権利侵害者の負担を重くする可能性がある。4、裁判所の訴訟審理の負担を重くする。車両 価値の下落による損失で、本来訴訟にならない交通事故案件が裁判所に押し寄せる可能性があり、紛争の減少に不利となる。

どのような場合に、裁判所は例外として車両価値の下落による損失賠償請求を認めるか?下記の典型的な判例を見てみよ う。

『最高人民法院の権利侵害案例の指導と参考(第二版)』に記載される(2018)新民再 85 号の判例において、裁判所は、「案件 に係る車両は購入後わずか数日で道路交通事故により破損した。持ち主の A 氏は本件車両の破損に対して何の落ち度もなく、 交通管理部門の判断で全責任は B 氏にあると認定されている。車両の修理費用は 78878 元に達したが、修理後もなお「トランク リッドが安定しない、テールランプの隙間が大きすぎる、シフトポジションの切り替えが利かない」などの問題が残っている。これ らの事実は、本件車両が修理後に使用できるが、その安全性、運転性能が低下し、価値の明らかな減少を示している。従って、 A 氏による車両価値下落による損失賠償請求を認めた。」と指摘した。

北京第二中級人民法院は(2020)京 02 民終 2927 号判決において、「本件発生時に、案件に係る車両は購入後半年経たばかり で、走行距離は 6232.5 キロメートルだけで、車両は確かに比較的に新しい。今回の落下物による車両破損事件による車の塗装 及びガラスの交換が必要な面積は広く、エンジンカバー及び関連部品の交換も必要となる。ある会社が発行した評価報告書に よると、この車両価値の下落による損失は約 52000 元である。一審裁判所は車両購入から事故までの期間、走行距離、車両

損傷と修復程度を総合的に考慮し、評価報告書を参照した上で、今回の事件による当該車両の価値下落による損失は加害者 B が賠償すると認定した。当該認定は法において根拠がある。」と指摘した。

上海市奉賢区人民法院は、「財産損害は通常埋め合わせの原則を適用するが、本件において損傷を受けた車両は事件当日 に引き渡された新車であるが、当該車両の 2 カ所のフレームは損傷した。切断・溶接による修理で重大な損傷を受けたので、当 該車両の全体構造の信頼性に対して一定の影響を与えるに違いない。評価意見書を踏まえて、本件事故により、車番滬XXX の 車両は価値下落による損失が発生した。原告の当該損失は被告が賠償するべきである。」と指摘した((2019)滬 0120 民初 24441 号)。

以上のことから、車両価値の下落による損失賠償請求が裁判所に認められるためには、少なくとも「新車相当と見做される (購入から事故までの期間が短く、走行距離が少ない)、重大な損傷を受けた(修理後も全体的な性能への影響を免れない)」の 2 つの条件を満たす必要がある。通常、車両価値の下落による損失額を証明するための鑑定評価報告書を提出する必要もあ る。

立法動向

『製造業を重点として外資の投資増加・既存投資の安定・投資の質の向上を促進することに関する若干 政策措置』が 2022 年 10 月 13 日より施行

外資導入拡大、外商投資規模安定、外資利用の質向上のために、国務院は最高人民法院、最高人民検察院、公安部、国家 安全部、司法部、全国人民代表大会常務委員会法制業務委員会と共同で『製造業を重点として外資の投資増加・既存投資の 安定・投資の質の向上を促進することに関する若干政策措置』(以下『外資促進措置』という)を公布し、2022 年 10 月 13 日より施 行されることになった。以下は当該文書のポイント/傾向を説明する。

1. 含まれた優遇政策

『外資促進措置』第(十)項では、海外投資家が配当利益を用いて直接投資する場合、所得税の源泉徴収を暫定的に免除す るという政策の実行を強調する一方、各地方が外商企業による利益再投資に対して、新規外資と同様の支援政策を与えること を奨励している。また土地、エネルギーなどへの保障を強化し、特に外商投資企業が国内の製造業分野に再投資することを奨 励する。

2. 優遇政策に係る重点的な分野

『外資促進措置』第(十二)項によると、下記 4 項目の 10 分野を含む。

(1) 先端製造業・ハイテク分野において、ハイレベル設備、基礎部品、コア部品などの分野への外商投資を重点的に奨励 する。

  1. (2)  現代サービス業において、研究開発・設計、現代物流などの分野への外商投資を重点的に奨励する。
  2. (3)  省エネ・環境保護分野において、新エネルギー、グリーン・低炭素に関するコア技術イノベーション・模範応用などの分

野への外商投資を重点的に奨励する。

(4) 区域戦略において、中西部と東北部での基礎製造、適正技術、日常消費などの分野への政策的支援を与える。

3. 製造業の段階的移転による潜在的な利益

『外資促進措置』第(十五)項によると、今後、製造業分野の多国籍企業を、産業発展の基礎が比較的良い中西部と東北地区 まで優先的に誘致することを重点的に推進する。そのうち、中西部と東北部の国家レベルの新区と開発区、産業移転模範区、 加工貿易段階的移転の重点移転先、国家加工貿易産業園について特に言及している。段階的移転は必然的に多くの潜在的な 利益をもたらす。

4. 投資サービスにおける人員往来・物流サポート

『外資促進措置』第(七)項によると、各地で国内外人員往来の「ファストトラック」を十分に活用し、多国籍企業、外商投資企業 の重役、技術者及びその家族の出入国に便利を図る。第(八)項によると、外資企業の物流は、ケース毎に相応のサービスサポ ートを獲得することができる。

弁護士紹介

金燕娟 弁護士/パートナー

8年以上の日系企業での勤務経験を持ち、日系企業の文化、経営管理上の普遍的問題点などについて深い理解を持つ。業務執行においては、それぞれの会社の実情に合わせ、問題となる根本的な原因を見つけ、相応の解決策を導き出すことが得意で、顧客中心リーガルサービスの提供が出来る様、日々取り組んでいる。

その他にも、長年にわたるビジネス実務経験と弁護士業務経験を生かし複雑なビジネス交渉などにおいても特有の技能と優位性を示している。

学歴:華東政法大学出身、民商法学修士号取得。

使用言語:中国語、日本語

主な取扱分野:会社運営の日常業務。複数の業種の企業の法律顧問を長年に渡り、務め、人事、リスク管理などを含む総合的リーガルサービスを提供している。知的財産権分野。企業の法律顧問を長年務めるとともに、営業秘密、特許、商標などに関連する訴訟、非訴訟業務に従事し、特に営業秘密の管理体系及び個別案件の処理については幅広い知識と豊かな実務経験を持っている。
不正競争防止分野。主に「ブランドのタダ乗り」、虚偽宣伝を含む知的財産権に関連する不正競争案件、知的財産権侵害と不正競争との複合紛争案件を処理し、個別案件の実情に基づいた有効な解決策の提示を得意としている

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