Appleは去る2021年12月14日に、iOS 15.2(iPadOS 15.2)をリリースしました。このiOS 15.2のアップデートの内容は主にSharePlayの追加や、iPhone 13 ProシリーズでProResビデオの撮影ができるようになりましたが、正直小数点1桁アップデートほど大きいのかどうかについては見解が分かれるところだと思います。
そんな中、中国のメディアがこのiOS 15.2にアップデートすると、これまでiOS 11の時代から禁止されていた自前で交換したディスプレイやFace IDがまた使えるようになったと報告しています。これはかなり大きな変化ではないでしょうか、特にサードパーティの修理屋さんにとっては。。
時を遡ること3年半ほど前、iOS 11の時代に、当ブログ記事でもお知らせしていたとおり、iPhone 11.3.1アップデートでAppleはiPhone 8で非純正品のディスプレイが使えなくなる問題を修正しました。
iOS 11.3で、突然何の予告もなく当時最新のiPhone 8で交換したディスプレイがタッチ操作に反応しなくなり、Appleに苦情が集中したことから、慌ててiOS 11.3.1がリリースされた形になりました。Appleはバグだったと説明しており、iPhone 8用のディスプレイ認証チップファームウェア或いは書き換えプログラムにバグがあったとみるのが公式見解からの推測ですが、しかしAppleは以前からサードパーティによる修理や部品交換については否定的な意見を持っていたのは事実です。
そしてその後時は経ちiOS 13から、iOSのアップデートが来るたびに、Appleによってサードパーティ製の交換部品に対する規制措置が強化されていきました。例えばiOS 13では、バッテリーをサードパーティ製のものに交換すると「バッテリーの状態」が表示されなくなったり、ディスプレイを交換すると、「これは純正ディスプレイではない」という内容の警告が出たりするようになりました。
Appleは更にLightningケーブルなどLightning接続のチップの中に、MFi認証を入れていきます。これによって、サードパーティ製の部品を規制することができるからです。
Appleはこれらの挙動について、サードパーティ製の部品を使用するとiPhoneデバイスそのものやコネクタ部分が壊れたり、異常な発熱があったりすることで、デバイスを同期したり充電したりすることができなくなることもあり得るからだ、と警告しています。確かに、Appleの言うことには一理あります。公式のアクセサリの方が当然安全を確保できますし、Appleやサプライヤーの知財を守ることもでき、品質の低いアクセサリを駆逐することができるわけですから。
しかし問題は、Appleの公式修理代金がその製品価格と同様非常にお高いことです。特に保証期間外の修理代が異常に高く、修理のためだけに数万円費やさなければいけないこともあります。更に、すぐに修理してくれるわけでもなく、送ったり待ったりする必要があるのです。消費者にとっては公式修理の高い値段や不便さが重なり、様々なリスクを承知の上で、サードパーティ製を選ばざるを得ないのが現実ではあります。
Appleは特にディスプレイ・カメラ・バッテリーなどの根幹部品の認証を非常に厳格に行ってきました。これらの部品を交換するには、Appleのやり方に従う必要がありました。そうしないと、普通に使えない状態になることが起こり得たのです。
iOS 13がリリースされた直後に、交換されたディスプレイでFace IDが使えない問題が続々と報告されるようになりました。しかももし本物のAppleディスプレイ(組立委託先=サプライヤー調達品)を使用しても、Face IDが使えるようにならないという問題がありました。その問題はずっと今のiOS 15の時代になっても解消されませんでした。
しかし今回リリースされたiOS 15.2で、上記のように交換したディスプレイでもFace IDが使用できるようになったという報告がiFixItから出ているのです。ただし、完全に使えるようになったわけではなく、相変わらず「iPhoneがディスプレイが純正品であるかどうかの確認ができません」と表示され、ディスプレイのTrueToneが使えないのはこれまでと同様です。
というわけで、今回iOS 15.2で、Appleは本当にこっそりとサードパーティに対して修理の門戸を開き、消費者に対して修理の選択肢を広げたという言い方もできそうです。ただし、自前で交換した部品を使っている場合はAppleの保証が利かなくなるので、完全に自己責任で行わなければなりません。